THE ONE -crash to create- / LUNA SEA | 安眠妨害水族館

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THE ONE - crash to create -(CD)/LUNA SEA
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1. THE ONE -crash to create-

LUNA SEAにとって、12年ぶりとなるCDシングル。
CD盤、HQCD盤、SACD盤、コンプリートボックスと、収録内容ではなく、音質の違いによっての複数売りというのは新鮮でした。

セルフカバーアルバムや、配信限定シングルなど、リブート後のリリース活動はあったものの、CDという形で新曲を発表、しかも、それが約23分の大作だっていうのだから、話題にならないわけがありません。
1曲のみの収録だというのに、収録時間だけで言えば、ちょっとしたミニアルバム並み。
さすが、スケールが違います。

ヴィジュアル系において、尺の長い曲と言えば、30分を超えるX JAPANの「ART OF LIFE」の知名度がダントツでしょう。
最近だと、メリーの「激声」も、15分を超えるシングルとして、大きなインパクトを与えました。
この手の楽曲に共通して言えることは、組曲的なアプローチであること。
パーツをそれぞれ再構築させたら、2、3曲に分離できるような構成であることが多いですよね。

しかし、この「THE ONE -crash to create-」は、それらの組曲たちとは異質。
基本的に存在しているベースのサウンド、メロディ、世界観が、常に一定に保たれているのです。
ダイジェスト的に、どの部分を切り取っても、ひとつの楽曲として確かに認識できる。
ひとつのアイディアから膨らませて、固定観念にとらわれない、自由なアレンジを試みた結果、必然的に23分になったといったところ。

また、これだけの長さがあっても、中だるみするどころか、最後まで緊張感を持って聴けるから凄い。
例えば、Dir en greyの「アクロの丘」なども、ひとつのイメージから膨らませての長編ではありますが、それでも10分未満。
これを倍の長さにしたら、と考えると、いくらDirでもダレてしまいそう。
こんなにゾクゾクしたまま、何度でも聴きたくなる23分は、ある意味、革命的。
まったく、長さを感じさせません。

音楽性としては、シリアスで壮大な、ミディアムバラード。
SUGIZOさんの空間を表現するギターや、INORANさんの繊細ながら深みのあるアルペジオ、淡々と芯のある低音を刻むJさんのベースも、すべてを包み込み、力強く支える真矢さんのドラムまで、すべてが、終幕前のLUNA SEAの延長線上の風景。
そして、伸びやかなRYUICHIさんのボーカルが、後半ドラマティックに盛り上がっていく場面に映えます。
わかりやすくキャッチーなサビがあるわけでもないのですが、聴いているうちに、大きな力に飲み込まれていくような、神秘的な空気を纏っている。
まるで、ゆりかごに揺られながら、宇宙を漂っているよう。

もっとも、巷に溢れているJ-POPと比べての難解さはあるため、初心者にとってのハードルは高いですが、彼らのカリスマ性を取り戻すきっかけとしては、十分すぎるくらいの衝撃があるのではないでしょうか。
ジャケットも、シンプルながら、音を聴いて感じるイメージとの乖離はなし。
12年ぶりだというのに、寸分の狂いもなく、5人で共通の絵を描いた渾身の1曲です。

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