A WILL / LUNA SEA | 安眠妨害水族館

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A WILL(初回限定盤B)(DVD付)/LUNA SEA
¥3,980
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1. Anthem of Light
2. Rouge
3. The End of the Dream
4. MARIA
5. Glowing
6. 乱
7. absorb
8. Metamorphosis
9. 銀ノ月
10. Thoughts
11. Grace

LUNA SEAにとって、実に13年ぶりとなるオリジナルアルバム。
既にセルフカバー作品やシングルのリリースはありましたが、新曲を含んだアルバムが出るとなると、その喜びもひとしお。

とにかく、レベルが違う。
聴けるだけでも嬉しい、というファンも多いと思うし、正直なところ、やっつけ仕事でも相応のセールスは見込めるだろう彼ら。
にも関わらず、妥協点を探るでも、肩慣らしなんかでもない、LUNA SEAとしての最高傑作を、ここで更新してしまうくらいの力の入った作品が出来上がってしまった。
ベテランらしい落ち着きはある一方、攻めの姿勢が貫かれているので、驚かされました。
配信限定のリリースだった「PROMISE」や、ボリューム満点の「THE ONE -crash to create-」を収録しなかったあたりも、こだわりを感じますよね。

希望に溢れた華やかさを持つ、「Anthem of Light」でのスタート。
この段階では、「SHINE」のような、ポップさ、キャッチーさを求めていくのでは、と想像したリスナーもいるでしょう。
しかし、「Rouge」、「The End of the Dream」と、シングル曲で畳み掛けていくと、いつの間にか、そんな甘い考えは消えてしまっている。
スリリングなサウンドのせめぎ合いには、高いスキルを持ちつつも、安定という言葉に腰を下ろさないプライドが宿っているのです。

それは、幻想的な「MARIA」や、ヘヴィネスなビートが効いた「Glowing」など、まったくタイプが違う楽曲でも同じことが言える。
いや、同じような楽曲がひとつもないからこそ、このシリアスなスリリングさを保つことで、LUNA SEAとしての横軸が通されているということなのかもしれません。
顕著に開花しているのが、「乱」。
シングルにはなかったイントロが追加されており、アルバムの中で、一気に存在感を増していった楽曲ですよね。
こんなにポテンシャルがあるナンバーだったのかと、流れで聴いて気付いた発見。

雰囲気モノと呼ぶには惜しい、確かな輝きを持った「absorb」を経て、「Metamorphosis」が、キラーチューン。
切り裂くように、インパクトあるフレーズを奏でるSUGIZOさんと、淡々とアルペジオを紡ぐINORANさんとのツインギターは、これぞ、LUNA SEAといったところ。
そこに、このスピード感でも、余裕のあるフレーズを織り込む真矢さんのドラム、メタル色を強めるJさんのベース、更には、RYUICHさんの艶やかなボーカルが重なって、「IMAGE」あたりの頃の初期衝動が、現在の彼らで蘇ったような衝撃がありました。

「銀ノ月」は、ミディアムバラード。
アクセントとして、こういうのが来て欲しいなというタイミングで、ばっちり求めるものが来るから、本当に計算し尽されています。
久々にSUGIZOさんのバイオリンを堪能できるのも、聴き逃せないポイントですな。
シングル「Thoughts」で終盤最後の盛り上がりを作ると、ラストは「Grace」で締めくくり。
全体的に、コンパクトにまとめた本作において、この楽曲も例外に漏れず、そこまで長いわけではない。
ただし、壮大なイメージだけは、はっきりと残る。
この無駄のなさは、若手バンドには出せない、熟成されたロックンロールに他ならないのでしょうね。

ここまで、ど真ん中の路線でLUNA SEAを再開させたのは意外。
でも、その意外性が、本当に嬉しかった。
現代のバンドのように、キラキラしているわけでも、重低音でゴリゴリと攻め立てるわけでもない彼らのサウンド。
それで、ここまでガシっと掴まれる格好良さを生み出せるのだから、もう、感心する以外、何もできません。
完璧だわ。
2013年が終わる間際に届けられた彼らの"遺言"は、間違いなく名盤でした。

<過去のLUNA SEAに関するレビュー>
THE ONE -crash to create-
PROMISE
LUNA SEA
EDEN
LUNA SEA(インディーズ)