琥珀の花 -alius fabula- / Călătorie-カラトリア-
琥珀の花 -alius fabula-
200円
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1. 琥珀の花 -alius fabula-
[kˈəʊmə] / Călătorie-カラトリア-
[kˈəʊmə]
200円
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1. [kˈəʊmə]
ヴィジュアル博士のるによる12ヵ月連続配信企画も、いよいよ終盤。
本作は、第10弾、第11弾となるデジタルシングルです。
第10弾となる「琥珀の花 -alius fabula-」のテーマは、"アート系"あるいは"ファンタジー系"。
これまでに手掛けてきたサブジャンルに比べて、明確な定義やアイコン的なバンドがいるわけではない分野ですが、確かにこういう楽曲の作り込みってヴィジュアル系特有のものだよな、という発見を与えてくれるセレクトとなったのではないかと。
逆に言えば、テーマに縛られずに制作された、博士のより根にある音楽ということなのかもしれません。
初音源となった「琥珀の花」のアナザーバージョンを持ってきたところにも、その意識が垣間見える。
もともと、異国情緒を醸し出しつつ疾走感を重視したメロディアスチューンだったことの曲ですが、テーマに沿って世界観を深めた形。
時計の針の音などを巧みに使ってメルヘン色を出すなど、ミディアム調の雰囲気モノに再構築して、幻想的な趣を強めています。
こちらのほうが原曲に近いようですが、歌詞も差し替えられていますね。
個人的には、連続リリースに既存曲の再録を使われると興ざめするタイプで、連作だから網羅的に持っておきたい気持ちと、ワクワク感が薄れてしまう気持ちとの折り合いをつけるのが苦手。
買っても買わなくてもモヤモヤが残るなんてことが多いのですが、本作については例外だったかな。
単なるバージョンアップ、スキルアップを見せつけようとするのではなく、別物、別解釈でのアナザーストーリーを聴かせてくれるような印象。
シングルカットされたMALICE MIZERの「Le ciel~空白の彼方へ~」を聴いたときの感覚、というと大袈裟かもしれませんが、どちらが良いか、という選択ではなく、どちらも良いよね、という納得があるのです。
第11弾は、名古屋系をテーマにした「[kˈəʊmə]」。
なるほど、こうきたか。
具体的にひとつのバンドのオマージュに絞り込むのではなく、名古屋系の美味しいところどり。
音数はそこまで多くないのだけれど、変拍子やテンポチェンジでマニアックさを演出しつつ、メロディは美しく繊細。
ドロドロと蠢くフレーズを応酬し、最後に高揚感を求めて畳みかけるという構成も、曲尺が長くなりやすいジャンルの影響を察知して、飽きさせないように工夫されています。
また、名古屋系の中でも、メロディアス性が強い部分からのオマージュ割合を高めているのもポイント。
もっとマニアックに、もっとドロドロした展開に、と欲を出せばキリがないのですが、強みである歌唱スキルを活かすべく、彼の得意分野に引きずり込んでしまっていたのが特徴的でした。
多少崩しても、しっかり名古屋系ブランドを感じられるのが、どっぷりシーンにのめり込んだからこそのバランス感覚となるのでしょう。
長く続いた "3×4プロジェクト" も、次回が最後というところまで来ましたか。
アレンジについても、リリースのたびにレベルアップしている気がしますし、最後はどのように締めくくるのか、どんなサブジャンルが控えているのか、純粋に楽しみです。
<過去のCălătorie-カラトリア-に関するレビュー>
「 AMNESIA ~鏡に映る偽りの愛の中で~ 」「 栃の葉ヱレジィ ~愛憎編~ 」
「Psycho Neuropathy」「the Bottom of Despair」