鬼 / DEVILOOF | 安眠妨害水族館

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鬼/DEVILOOF

鬼
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1. 拷訊惨獄

2. 「開花」~鬼の巻~

3. 孤独死~鬼の巻~

4. -妖-

5. アイシテクダサイ

6. Dusky-Vision

7. Murderous impulse

8. -惑-

9. 蜘蛛の糸

10. Creepy

11. 流転

 

DEVILOOFの2ndフルアルバム。

DANGER CRUE内のレーベル、9th Recordsからのリリースとなりました。

前作に引き続き、ミックスおよびマスタリングにはЯyo Trackmakerさん、ジャケットのアートワークには江川敏弘さんが起用されています。

 

デスコア、ブルデスといった暴虐性のあるサウンドが彼らの強み。

一方、本作は"和"の要素を取り入れたコンセプトアルバムということで、エクストリームサウンドとの相性が気になるところでした。

 

少なからずあった不安を払拭したのが、リードトラックとなる「拷訊惨獄」。

和のフレーズとのクロスオーバーで、ここまで凶悪性に特化できるセンスがとんでもないな、と。

これが先行して発表されたことで、半々だった期待と不安を、限りなく期待だけが高まるようにリスナーにアプローチできたと思われます。

 

また、もうひとつMVが公開されているのが「Dusky-Vision」というのも象徴的。

こちらは、クリーントーンの比率を高めて入り口を広げる役割を果たす楽曲で、Vo.桂佑さんとGt.Rayさんのツインボーカル体制を、次なる強みとして据えていこうという意図が感じられるのですよね。

ギタリストが、こんなにも高音域に達するメインのメロディを担当しているのか、という衝撃込みで、映像とともに送り込んだのは正解でしょう。

 

この2本の軸が、"和"というモチーフを加えることで、美しく凶悪という統一感に結びついているのが、本作の肝。

「-妖-」、「-惑-」というSEを挟みつつ、ヴィジュアル系バンドとしての矜持でもある世界観の演出も徹底されているのです。

それを「鬼」と表現したのも見事で、デスコアバンドがヴィジュアル系に参入してきた、という安易なイメージを捨て去り、ヴィジュアル系として活動している意義をしっかりアピールできたはず。

 

曲としてもインパクトの強い楽曲が揃っていて、その最たる例は「流転」でしょうな。

途中までの流れは、他の楽曲と同様にデスコアを和のフレーズで昇華するクロスオーバーを意識しているのだけれど、中盤で突如、演歌風のメロディを揚々と歌い上げるという驚きを超えて唖然としてしまった、前衛的なナンバー。

ズタズタなリズムとシャウトをバックに演歌が歌われると、こんなにも脳が混乱するのかと。

まとまりかけていたアルバムを、カオティックに掻きまわして終わらせるあたりが彼ららしいというか、戦略性の高さを伺わせます。

 

なお、本作においてもっとも膝を打ったのは、"これ、完全に世界に向けて制作しているよね"ということ。
世界基準のデスコアサウンドに、モチーフ的に和を落とし込んで、ヴィジュアル系という媒体から発信する。
これ以上ないぐらい、海外で受けそうなステータスを地で行っているのが興味深い。
どこまで狙っているのかわかりませんが、次に世界規模で活躍するV系バンドは、DEVILOOFなのかもしれません。

 

<過去のDEVILOOF( Deviloof )に関するレビュー>

Devil's Proof