千年ノ調べ / RAZOR | 安眠妨害水族館

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千年ノ調べ/RAZOR

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1. 調べ

2. DIMENSION

3. 千年ノ色彩

4. Administrator

5. LIQUID VAIN

6. INNOVATOR

7. uprising

8. DNA

9. 紅く散らばる華

10. DAYBREAK

11. ハイビスカス

12. Undo

13. 美醜

14. LOCUS

15. BRILLIANT

 

結成3年目に突入するRAZORの1stフルアルバム。

1形態のみでのリリースで、「千年ノ色彩」のMVが収録されたDVDが付属しています。

 

この作品を一言で表現するならば、"ヴィジュアル系"。

それに尽きるのかと。

90年代にジャンルとして確立し、ブレイクスルーとなった00年代を経て、10年代が終わろうとしている昨今。

リアルタイムでそれらシーンを見聞きしてきたVo.猟牙さんの見識が、スキルやノウハウとして、楽曲のひとつひとつに散りばめられているのですよ。

 

もともと、どんな楽曲であっても自分のスタイルに落とし込むのが得意だった猟牙さん。

本作では、更に一歩踏み込んで、歌い方ひとつでバラエティの広さを担保しているのですよね。

実のところ、サウンドはエレクトロとラウドを織り交ぜたモダンなもので、テンポ感によって変化はつけているものの、絞り込んだ感すらある統一性の高さを見せている。

それでも幅が広い、懐が深いと思わせる理由のひとつが、このヴォーカリゼーションの多様性なのかと。

 

たとえば、「Administrator」はゼロ年代のコテオサ系を彷彿とさせる声の潰し方をしているし、「uprising」で聴かせる透明感は、もっと時間を遡って中毒性に特化した雰囲気モノさながら。

「美醜」のような硬派なメタルコアでも、デスヴォイスを駆使してハードさに貢献しており、「ハイビスカス」でのラフさも案外ハマる。

ヴィジュアル系の歴史を、歌唱の観点から再現するようなアプローチが至るところで肝になっているのがわかります。

 

結果、15曲というボリュームを、飽きずに聴かせることに成功。

王道というほど王道的な楽曲はないのかもしれないが、この"雑多なんだけれど、音楽ジャンルとしても成立している"ヴィジュアル系を体現した作品に仕上がったと思うのです。

リードトラックとなる「千年ノ色彩」が、キラーチューンとして序盤にぐっと引き締めているのも効いていました。

 

シングル5枚の表題曲も、リミックスのうえで網羅的に収録。

現時点での彼らの総括的な1枚となっているのは間違いなく、なんなら衝動的であり、戦略的でもある。

RAZORのポテンシャルの高さを見せつけたフルアルバムと言えるでしょう。

 

<過去のRAZORに関するレビュー>

the CORE