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[gozen]/Kagrra

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1. 第一幕 「妖しの光」

2. 第二幕 「諷説」

3. 第三幕 「異邦境」

4. 第四幕 「鬼戦」

5. 第五幕 「秘慥」

6. 第六幕 「幻憶」

7. 第七幕 「骸の砦」

8. 第八幕 「悲恋鬼談」

9. 第九幕 「命」

10. 第十幕 「終焉の季節」

 

Kagrraの1stフルアルバム。

2002年に初回盤がリリースされ、2005年には、キングレコードから再発盤が発表されています。

 

シングル曲を含まない書き下ろしの全10曲。

伝説上の人物、鈴鹿御前をテーマに、Vo.一志さんが独自の解釈を加えてストーリー仕立てに構築されています。

初のフルアルバムが、綿密にプロットを練り込んだコンセプト作品というのが、なんともKagrraらしいですよね。

 

災いをもたらすとされた光を追って、坂之上田村麻呂は、鬼女と化した鈴鹿御前と出会う。

二人は敵同士として対峙するが、やがて、鈴鹿御前をこのような姿に変えた大嶽丸という鬼こそが真の敵であると認識し、その関係性は愛情へと変わっていく…

資料によって、鬼であったり、美しい姿であったり、諸説囁かれる鈴鹿御前の正体を、切ない物語とともに理由を紡ぎ出していく一志さんの構成力は、既にインディーズバンドの域を超えていたと言えるでしょう。
古文風の言い回しも多いので、ストレートにわかりやすいというわけではありませんが、解説サイトなどで概要だけでも頭に入れてから聴けば、より一層、味わい深くなること請け合いです。

サウンドとしても、既にKagrraのオリジナリティは確立されていて、和メロにV系的なハードさを混ぜ込むセンスが抜群。

女性としての鈴鹿御前を描く場面では、優美で儚いアルペジオと、歌うようなベースで白く儚いイメージに。

鬼としての鈴鹿御前を描く場面では、重さを重視した重低音を効かせて、ウネウネと禍々しいフレーズを多用。

ボーカルだけでなく、ギターチームも、リズムチームも、しっかり楽曲の心を表現しようと意識していて、世界観にどっぷり浸らせるには十分な演奏技術も持ち合わせていました。

 

内容を頭に入れたうえで、聴きながら目を閉じると、ひとつの舞台が頭の中で再生されるよう。

徐々に物語の本質を見せていく丁寧な導入があり、鈴鹿御前と対峙する「鬼戦」や、大嶽丸を討伐する「骸の砦」は、スリリングで激しいサウンドの応酬で、まさにバトルシーン。

鬼となってしまった境遇を嘆く「幻憶」や、大嶽丸という呪いの根源がなくなったことにより、自らが消え去ってしまうシーンである「悲恋鬼談」では、美しい旋律が涙を誘います。

ラストシーンに向かってクライマックスを煽る「命」、儚さを帯びつつ、ひとつの答えを得る「終焉の季節」と、締めかたも完璧ですよ。

 

便宜上トラック分けはされているが、単体の楽曲の集合体というよりは、通しで聴くことを前提とした組曲的な作品。

リードトラックをあえて明確にせず、楽曲の重要性を均等にしたのも奏功していたのではないかと。

さらっと聞き流すには向かないけれど、じっくり聴き込む前提であれば、まずはこれを、とお勧めしたい1枚です。

 

<過去のKagrra(Kagrra,)に関するレビュー>
百鬼絢爛
桜花爛漫
桜舞い散るあの丘で