煌 / Kagrra | 安眠妨害水族館

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煌/Kagrra

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1. 輪廻黙示録
2. ~夢イズル地~
3. 西遊記
4. 傀儡の躁鬱
5. 悲文
6. 罪ト罰

kagrraの4thミニアルバム。
2002年にリリースされ、2005年、2010年と再販されています。

いよいよメジャーが近づいてきたことがうかがい知れるサウンドワーク。
"和"というコンセプトはそのままに、より大衆に歩み寄るアプローチをさらっと混ぜ込んできたのが、この「煌」ではないかと。
実験作のようでもあり、インディーズ時代の集大成のようでもあるのですよね。

シングル「~夢イズル地~」を軸に、様々なkagrraの魅力を展開。
当時の彼らにとってはチャレンジとも言える楽曲も多々収録されていました。
その点では、それまでの純粋に和風サウンドを追及する音楽性と比較して、浅く広くに映ってしまった部分はあるのかもしれません。

しかしながら、それで表面的と切り捨ててしまうなら、その評価こそ表面的であるというもの。
ストレートな「輪廻黙示録」は、確かに当時のシーンではどのバンドもやっていた普遍的な楽曲構成ではあるのだが、彼らの手にかかれば、不思議と和風に聴こえてしまう。
シャッフルリズムの「西遊記」なんて、そのまま"お洒落系にかぶれた"なんて言葉が当てはまりそうなものなのに、まったくそうとは思わないほどkagrraの世界観に染まっているのだ。

また、どこまでも沈み込んでいくような「傀儡の躁鬱」もインパクトあり。
どちらかといえばファルセットを用いたハイトーンに強みを持つ一志さんが、ひたすら暗くダウナーに低音を響かせています。
この曲のあとに待っているのが、中性的な声色で歌い上げるバラード、「悲文」というのも上手い構成ですよ。
ギャップによってそれぞれが引き立つ。
単体でも名曲である「悲文」が、よりいっそう胸を締め付ける楽曲になったじゃないですか。

クライマックスに送り込まれる「罪ト罰」の王道感も、待ってましたといったところ。
幅を広げても、本質を見失ってしまったら意味がない。
チャレンジ的なナンバーも、しっかり和風に仕立て上げて彼らのフィールドに呼び込んでいたのだが、やはりど真ん中のkagrraも聴いておきたいというニーズに応えてくれたこの楽曲。
疾走感のあるサビからスタートし、浮遊感のあるメロディや雰囲気重視のアウトロなど、ドラマティックな構成となっており、余韻に浸ることができる長めのラストはエンディングとしてもぴったりでした。

最初はらしくないとも思ったものだが、改めて聴くと、彼ららしさの塊であった。
この進化がなければ、メジャーに進出して活躍する彼らもなかっただろうというターニングポイント。
徹底された世界観と、そのうえでマンネリになることない創意工夫が詰め込まれています。
リピートするほどに癖になる、とことん聴き続けることができそうな一枚。

<過去のKagrra(Kagrra,)に関するレビュー>
百鬼絢爛
桜花爛漫
桜舞い散るあの丘で