百鬼絢爛 / Kagrra, | 安眠妨害水族館

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百鬼絢爛【初回限定盤】/Kagrra
¥3,990
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1. 百鬼跳梁

2. 契

3. 隠恋慕

4. 白ゐ嘘

5. 鬼還

6. 月に斑雲 紫陽花に雨

7. 鬼咆

8. 魔夏の夜の夢

9. 四季


Kagrra,にとって、最後のオリジナルアルバムとなった作品。

初回盤は、「契」のPV等が収録されたDVDが付属されています。


シングル曲3曲を含む、全9曲。

フルアルバムとしては、少し控えめな曲数ではありますが、この辺の奥ゆかしさも、日本文化を大事にしたバンドの作品としては、ふさわしいと言えなくもありません。


とにかく、シングル曲のキラーチューンっぷりが半端じゃない。

ミディアムテンポで、切ない歌メロに、大陸的なコーラスを加えて壮大さを出した「白ゐ嘘」、疾走感があり、ヴィジュアル系的な要素を強く打ち出しながらも、和の雰囲気はしっかりと残す「月に斑雲 紫陽花に雨」、そして、ラストを飾る、これぞKagrra,!といった日本情緒を歌に変えて表現した「四季」。

それぞれ、役割や表情は違っていますが、大きなインパクトを残しています。


もちろん、アルバム曲も、クオリティはとても高い。

リードトラックとなる「契」は、和風のメロディと、ダンサブルなリズムというギャップを逆手にとった美しく、テンションも上がる1曲。

スピード感のある「隠恋慕」、「魔夏の夜の夢」の賑やかな雰囲気も印象的で、全編通してハズレがありません。

単体でのインパクトは、あまり大きくないかもしれませんが、しっかりと脇を固めており、全体の流れの中での抑揚がはっきりしている。

これぞ、日本の美徳である、ワビサビなのでしょう。


極端に激しい曲はないものの、しっかりとした歌モノを中心とする構成の中で、アプローチは豊富。

真っ白な切ない曲、闇を彷徨うような不気味な曲、とっつきやすいキャッチーな曲など、ともすればバラバラになってしまうような楽曲たちを、ネオ・ジャパネスクというキャッチコピーで表現される、和の一貫性でつなぎとめているのはさすがです。

一般的なバンドが、和風な曲をやろう!と思った時に、まさかこういう音は取り入れないな、という同期音や、フレーズを惜しげもなく注ぎ込んでいるのに、和風なんですよね。

これは、実際に耳にしてもらわないとイメージできない部分だと思いますので、まずは聴いてもらいたい。


一志さんの歌唱力にも、ここにきて、成長が見られます。

どちらかと言えば、すぐファルセットに頼りたがるボーカリストだったのですが、高音で声を張ることが増えた気がする。

これによって、表現の幅が格段に広がったのではないでしょうか。

女性的、男性的の歌い分けが可能になったほか、ドラマティックな楽曲におけるクライマックスシーンでの迫力を示すには、非常に効果的。

歌の面でも、ワビサビが効いています。


このバンドは、マンネリ化が進み、一旦はネオ・ジャパネスクには拘らないスタイルに傾く時期もありました。

しかし、オリエンタルなサウンドを取り込み、壮大なミディアムナンバーを強みとしてからは、見事に復活。

確固たる個性と、安定感を誇ったうえ、まだまだ成長を見せていた途上での終焉となってしまい、本当に残念としか言いようがない。

10年に渡りシーンを支えたバンドの散りざまは、とても鮮やかで、刹那的な、まるで桜のような美しさ。

この独特のサウンドが好きだった人は当然として、少しでもこの世界観に興味のある人にとっては、聴かなきゃいけないマストアルバムだと言っても、過言ではないはずの一枚です。


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桜花爛漫