安眠妨害水族館

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オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

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聖痕 -stigma-/Kαin

 

1. 聖痕 -stigma-

2. 聖痕 -stigma-(inst.)

 

"OFFICIAL LIVE CD SERIES"の第二弾となったKαinのシングル。

 

オリジナルは、2007年の1stフルアルバム「paradiselost」に収録されていたもの。

前作「あいのうた」同様に、 2023年11月12日 TOKYO TOP BEAT CLUB公演でのテイクが収録されています。

 

Vo.YUKIYAさんが語るように、現在のKαinを表現するのに、ライブ音源は最適なのかもしれません。

オーディエンスの声や、ライブだからこそのアドリブ、煽りのシャウトなど、すべてをひっくるめてのパフォーマンス。

メンバーが入れ替わったことによって、シンプルに再録しても別物にはなるのでしょうけれど、ひたすらに暗い楽曲である「聖痕 -stigma-」が、ライブではここまで熱量が上がるなんて、なかなか想像できるものではありませんもの。

 

こだわりとして面白いのは、ライブ同録の音をそのまま使っているのではなく、きちんとマルチ録音していることでしょう。

各パートごとに録音した素材をスタジオ録音同様にミックスして、CDで聴くのに適したバランスに再編集。

そこまでやるか、というのは、カップリングにカラオケVer.まで収録してあるのですよ。

ライブ音源なのに、その場にいたはずのYUKIYAさんの声が消えているという、通常では味わうことのできないサウンドがここにある。

マルチ録音したとはいえ、ここまで音が分離できているのか、と感動すらしますね。

 

パンフレットにCDが付いてくる、というイメージで企画されたトールサイズの豪華仕様。

本来はライブ会場のみでの販売されるパンフレットだと考えれば、収録されているのが1曲だけだとしても、2,000円という価格設定が高く感じないから不思議なものです。

 

<過去のKαinに関するレビュー>

あいのうた-2023-

残月

NOWHERE

ræcy

Instrumental#1

Hane/Again e.p.

NUMBER SIXXX.

葬 -so-

paradiselost

BANQUET/XANVALA

 

1. CULTURE

2. クロコダイル

3. MAGNIFICENT

4. ヘイトスピーチ

5. ジャバラ

6. 明日、虫になっても

7. ラブソング

8. 鱗粉

9. BANQUET

10. 本能

11. R.I.P

12. 東京

13. 残火

 

前作「NIX」から1年半ぶりにリリースされたXANVALAの3rdフルアルバム。

 

結成以来、コンスタントにフルアルバムを発表。

現在進行形で進化をしている彼らの最新作は、チャレンジ精神に溢れた1枚でした。

全体的には、硬派でスリリング。

ベースとなるハードでヘヴィーなサウンドに、サイバーなテイストを緻密に重ねて、緊張感を生み出しています。

また、ブックレットに記載された歌詞には、散文詩的な文章が添えられ、シリアスかつ濃厚な世界観を実現。

ヴィジュアル系バンドのアルバムに求められるものを、解像度高く理解していますよ。

 

変化としては、そこから展開するバラエティ性。

これまでもアルバムの流れとして意識されていた部分ではありますが、先行的に配信シングルを聴いてもわかるように、もっと思い切って変化を求めてきた印象です。

四つ打ちリズムとジャジーな雰囲気を取り込んで、アダルトなダンスロックとして昇華。

「ヘイトスピーチ」や「鱗粉」など、シリアスな精神性は踏襲されていることを前提に、音楽性としてはむしろ外しに行っていると言えるのでしょう。

表題曲の「BANQUET」については、途中まではシャウトを多用するハードチューンの様相なのですが、サビではポップに突き抜ける感じもあって、お祭り騒ぎのような掛け合いまで飛び出すのが面白い。

3枚目ということで、ある程度はマンネリ化を防ぐ必要はあるのだけれど、だったら一気に武器を増やしちゃえ、と踏み込めるのはバンドとしての強みですよね。

 

クローズに向けては、ロックバラード「東京」で、叙情的な一面も見せつけて、ノスタルジックなメロディと疾走感が気持ち良い「残火」で爆発。

この辺は構成としてセオリー通りなのかもしれないけれど、王道感で突っ走るタイプの楽曲が控えめになっていた分、バラードで溜めての「残火」のインパクトは相当に大きくなったのでは。

 

コンスタントにリリースできているからこそ、実験要素を取り込むことができた成功例。

ライブで育てることで更に楽曲の魅力が研ぎ澄まされることを踏まえれば、成長余力は過去最大です。

 

 

 

<過去のXANVALAに関するレビュー>

NIX

「ケ・セラ・セラ」「DAYS」

月と太陽

Bamby

我慾之幕

陸重奏

深閑と狂瀾(DEMO)/for severe addicts only

 

1. 甘い蜜(DEMO)

2. 花火(DEMO)

3. 婀娜(DEMO) 

 

2020年にデジタルリリースされたfor severe addicts onlyのデモシングル。

 

GIGASLAVEや空【ku:】で活躍したVo.進と、ex-アヲイのGt.慎、Ba.サキ、Dr.Ryoにて2015年に始動。

本作は、結成5周年を迎えて臨む東京・大阪での単独公演にて配布予定だった楽曲。

コロナ禍によって事実上の開催不能となったことを受け、デジタルリリースの形で発表されました。

DEMOヴァージョンという扱いにはなるものの、現時点では正式音源化されておらず。

結果として4年経った現在でも視聴できる状態になっているのは、リスナーとしてはありがたいと言えなくもありません。

 

「甘い蜜」は、複雑なリズムとザラリとしたリフによって、軽快さと重苦しさを両立したナンバー。

シングルとカップリングの融合といった趣があり、名古屋系の文脈を取り入れつつ、サビでは彼ららしい歌謡メロディが主体となっています。

マニアックだけど聴きやすい。

deadman直系すぎるフレーズをどう捉えるかではありますが、ギミックが多くコロコロ表情を変える楽曲において、表現を成立させる進さんのヴォーカリゼーションは、さすがのキャリアを感じさせますね。

 

昭和歌謡の要素を強めるのは「花火」。

スピード感のあるシャッフルリズムで、演奏だけに耳を傾けると相応に激しい楽曲に仕上がっています。

しかしながら、哀愁系バンドの王道と言えるメロディに、じめっとした歌詞に引き摺られ、メロディアスな印象に大きく傾くのが面白いなと。

ゆったりとした演歌節にしなかったことで、コード進行は王道なのに既視感を薄める効果もあり。

この系統が好きなら嫌いなリスナーはいないだろう、という1曲に昇華していました。

 

艶やかさを残して、ラウドなギターロックのスタイルに落とし込んだのが「婀娜」。

骨太ながら密度の高い演奏が特徴なのかな。

どっしりと構えてヘヴィネスで圧倒したり、性急なリズムで駆け抜けたりと、緩急のある展開。

それなのに強引さはあまりなく、スピード感を増したとしても音の厚みがずっしりと響いてきます。

3曲ともタイプは違えど、強みを存分に発揮した佳曲。

これが無料配布されようとしていたのであれば、なんという贅沢さでしょう。

 

これでもまだデモヴァージョン。

同期が入るのか、更にアレンジが緻密になるのか、正直、この先を想像するのが難しいものの、for severe addicts onlyの活動が継続している以上は、完成版を待ちたいところです。

もっとも、品質的には現時点で既に十分楽しめるクオリティ。

デモ=音質が極端に悪いということではないので、安心してお聴きくださいませ。

 

 

<過去のfor severe addicts onlyに関するレビュー>

唯、嫌悪を打ちつける雨|不実の果実|薄氷

茜|螺旋の罠|夕顔