アリージャンス/忠誠
2016年制作
あらすじ
第二次世界大戦の時にアメリカで起きた『日系アメリカ人強制収容所』と『日系アメリカ人部隊』等 日系アメリカ人の苦難の物語です。
具体的にはその出来事に翻弄される日系アメリカ人家族 キムラ家の物語です。
家族構成は4人 祖父のカイトキムラ 父 タツオキムラ 娘 ケイコキムラ(ケイ) 息子 イサムキムラ(サム)
母親はサムを出産した時に亡なり それ以降 娘のケイが母親代わりとなり生活を廻していました。
はじめは 農業で生計を立てながら息子を大学に送る普通の日系アメリカ人家族でした。
しかし 第二次世界大戦で日本が敵国となった事によりキムラ家は『家』『仕事』『銀行口座』『自由』をすべて失い
劣悪な環境の強制収容所に他の日系アメリカ人たちと一緒に移らないといけなくなります。
そこに行くことを拒まない事こそ『アメリカに忠誠を誓っている』という名目の下に。
そこでケイは同じような境遇の日系アメリカ人 フランクスズキ(フランキー)と
サムは収容所看護婦の ハンナキャンベル(白人)と恋に落ち 強制収容所での生活に順応していきます。
そんな時に強制収容所で危険分子を探す為の 思想テストが行われます。
注目すべき質問は二つ 『問い27 あなたはアメリカの為に武器を持って戦いますか?』 『問い28 あなたが忠誠を誓う国はアメリカですか』
(意訳しています。本当の文章はもっと長いです。)
サムは自分たち日系アメリカ人が戦争で活躍する事で『我々もアメリカに忠誠を誓ったアメリカ人である』と認めてもらいたいと日系アメリカ人のみで構成さてた もっとも過酷な部隊442部隊に志願し戦地へ向かいます。
一方 ケイと恋人フランキーはアメリカに酷い目に遭わされ強制収容所にいるのに何故兵役に出なければならないのかと考え自分たちの生活 生きる権利 日系アメリカ人の開放を求める抗議行動を行っていきます。
そして父 タツオキムラは 思想テスト問い27.28の質問にNOである。自分自身の心に誓った忠誠は 例えどんな事があっても嘘はつけないと考えます。
それぞれの思想と理念の基『忠誠』を勝ち取る為の戦いが家族に降りかかります。
この『アリージャンス/忠誠』はあらすじを書くのが凄く難しいです。理由は本当に色々な計算によって恐ろしく多弁な作品だからです。
ただ 暗く難しいだけではなく本当に素晴らしいダンスパーティーシーンがあったり ウキウキする恋愛のシーンがあったり それぞれの成長のシーンがあったり 当然 戦争のシーンがあったりします。
そして ミュージカルですから それぞれに本当に素晴らしい歌声と音楽がついてきます。
更に舞台としての演出も素晴らしく例えば 日系1世で齢のいっている方は英語が苦手で鈍重だけど日系2世の若者は母国語が英語なので流暢だったり 細かい日本語と英語の使い分けで ここは観客に意味が分からなくても日本語のみ ここは大切な話なので 会話の中で英語でも言葉の説明をするなどの配慮がされています。
映像化
もう一つ驚いたのがプロードウェイの舞台をカメラで撮ったモノではなく 舞台を映画として再構成していた事です。
具体的言うと カメラ2台で 二人の表情をアップにしたモノを切り替えたりシーンによっては少ないですがステージ上にカメラがあって背中から追って行ったり 真上からのカットがあったりもしました。
全部の試みが成功しているとは言いませんが ミュージカルの舞台を体感するのではなく ミュージカルの舞台を映画化するという感じになっていてとても見やすかったです。
歌とダンス
本当に凄いんです。自分の無知もあると思いますが・・・ブロードウェイに出演される人ってこんなに凄いんですねぇ。
歌声の繊細さ ダンスのキレキレな感じ 筋肉と体幹の強さ 歌声の伸び なのに何を言っているか語彙は分かるという。
楽曲も コロコロ転がる様なコメディー アメリカ的POPな曲 感涙のバラード 全てが詰まっています。
しかも 日本風の音色を少し入れたり 日本語で歌ったりされていて本当に素敵です。
一応 楽曲はiTunsにて全26曲 2000円で販売されています。
自分は事前に購入し聞き込んでいましたが 映画を見た後はより一層 好きになりました。
何故か最後の上映時だけ(なのかなぁ??)CDが売っていたのでそちらも購入してしまいました。
原爆と勝利
この作品の劇中に原爆を表現するシーンがあるのですがそこの演舞が素晴らしいです。
ブロードウェイに出演される人の身体表現ってこんなに凄いのかと思わされました。
からの アメリカの勝利を歌う歌と演出の軽薄な温度差がまた凄いんです。
歌の内容も本当に酷くて それを楽しく歌う感じが凄く日系人の心を傷つけて 凄い演出だなぁと関心しました。
アメリカ人向けのブロードウェイ作品でそんな当時のアメリカ批判をコミカルに表現しているのが凄いなぁと。
全国公開
舞台挨拶でジョージ・タケイさんは『2020年に向けて沖縄から北海道まで日本中で見れるようにしたい』と語っておられました。
『アリージャンス/忠誠』本当に素晴らしい作品なので 全国公開されたら良いのになぁと思います。
作品のテーマから表現 音楽から歌声 ダンスまで一見の価値がある作品です。
その時にはぜひ劇場へ。
自分は今回のジャパンプレミア上映で4回も見ましたが全く飽きの来ない作品でした。
もしくは ソフト化されて いつでも家で観れるようになったらいいのになぁと思います。