『アリージャンス/忠誠』の感想 その2(一部ネタバレあり) | Life is Like A Perfectgarden

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アリージャンス/忠誠(一部ネタバレあり)

始めにこちらの文章は一部ネタバレありで書いています。
全国公開があったとして その時に構成や感想はあまり知らずに『アリージャンス/忠誠』を見たいという方はご注意下さい。









ただ 何かそれを知った事で映画体験を台無しにするネタバレがあるとかそういった作品ではありません。

ブログのひとつ前の記事で作品の全体的な解説はしていますのでそちらを読んでからこちらの文章を読むとより分かりやすいと思います。


2016年制作

あらすじ


ジョージ・タケイさん演じる軍服姿の老人の前に 『あなたの姉の財産を管理している』という女性が現れます。
彼女は老人に「あなたの姉が亡くなった この封筒を預かっている」と告げます。
すると老人は「もう50年も会っていなのに何を今更」と言い放ちます。

そして舞台はその老人が若かった第二次世界大戦直前の頃に繋がっていきます。


という 不思議な構成ではじまる物語です。
着地点で『姉弟は50年会っていない』『姉弟は老人になるまで生きる』という事が確約されてから物語が始まるのです。

その結果 戦争で主人公が死ぬのではといった不安が無いため 観客はこの作品のテーマでタイトルでもある『アリージャンス/忠誠』を大きく深く堀り下げられて行く事になります。

会話の中ではロイヤルやロイヤリティーも忠誠の意味でよく使われますが個人的に日系アメリカ人に行った思想テストで使われている文章が『アリージャンス』だからこのタイトルなのかなぁと考えています。
ただテストの名前も『ロイヤリティーテスト』なんですけどねぇ。

そしてそれぞれが何に対しての『アリージャンス』なのか

サムはアメリカ国家 そして日系アメリカ人である事に『アリージャンス/忠誠』を誓い 軍人となり最も過酷な戦地で 最も過酷な玉砕部隊として
多くの日系アメリカ人が自分たちもアメリカ人であると認められる為に戦い 死んでいく姿を見続けます。
そして国家に『サムはこの国の英雄だ』と言われる存在になっていきます。

一方 ケイと恋人フランキーは 家族 日系人である事に『アリージャンス/忠誠』を誓い 環境の改善 そもそも 何故 強制収容所や過酷な自殺部隊へ参加しないといけないのかと考え 招へいを拒み戦い続けます。

父親は 自分の思想と日本人である事に『アリージャンス/忠誠』を誓い思想テスト問い27 問い28 にNO NOと答え家族とも離れたより過酷な施設へ送られます。
そこで自分の気持ちに嘘をつけば家族で一緒にいられるのに。

本当に良く出来た物語で サムとフランキー 二人同時に アメリカ的自由を演説する言葉が被ったりするシーンではそれぞれの『アリージャンス/忠誠』というテーマに深く感動しました。

少し気になった点なんかも書いてみますと

映像
映像で残念のなのは全体を見渡せる引きのショットが少ない事です。
全体的に顔のアップや 人を追う感じのショットが多いです。
舞台なので 主役以外も演技をしていたり 二人が同時にある行動をするという 演劇的シーンがあるのですが それを体感できません。
撮影の環境上なんでしょうが少しもったいない気がしました。
あと どうしても舞台上の情報を整理した映像になってしまうのも もったいなかったです。
(その分 一つの作品としてはとても見やすいのですが)

字幕
もっと勿体無いのが字幕です。
どうやら字幕をされたのが海外生活の長い上に若く 字幕のプロでもない方らしく 日本人に違和感のある表現や 我々にこそ必要と思ってしまう説明が無かったりしていました。
もっと字幕が『劇中の日本語を理解してしまう日本人の為の補助』になって欲しかったです。

分かりやい実例では作品の中で「我慢」という言葉が大切なワードとして登場します。
しかし 意味が我々の知っている「我慢」と少し違います。
「希望を持って未来み進むために今は耐える」という意味とのこと。
コレを劇中ではセリフで少し説明するのみでした。
日本人はやはり「我慢」はネガティブな感じがしてします。
だから 作中の「我慢」の使い方にどうしても違和感がありました。

もう一つ「石から石 山は移動できる やさしい小川は 谷間をおれる」という『ことわざ』が・・・・
そんなことわざ初めて聞くのですが・・・と日本人ほど感じてしまいます。

ここからは個人的解釈なのですが(だから当然違うかもしれないのですが)
『これって二つとも日系アメリカ人の言葉』なのではないでしょうか。

海外に海を渡り はじめは農業の労働従事者としていずれは自分の土地を持つという希望に溢れ「我慢」してお金を稼いで そのお金で 安く荒れた土地を購入し 耕し 豊かにし少しずつ開拓し「石から石 山は移動できる やさしい小川は 谷間をおれる」を繰り返しやっと築き上げた財産 地位 子供達に学位 そんな『家 銀行口座 仕事 自由』の生活の基盤が第二次大戦によって全て奪われた話なのでは!!と感じました。

ただ それが初見ではそれが分かりません。
特に日本人には。
そこが字幕で分かればもっともっと深く感動させられるはずなのに。
それ以外にも この表現はやめた方がという日本人感覚では無い表現があったりもしました。
後 漢字が日本字でない所も。まぁ 文字として分かるのでそれは別によいのですがノイズにはなりました。

『日系アメリカ人強制収容所』基本解説
もう一つ残念だったのが日系アメリカ人強制収容所の解説が無いのでどこまでが現実か分からい人が多そうだった所です。

1)劇中にあった ダンスパーティーですが事実です。実際の収容所でもダンスパーティーは行われたいたそうです。

2)歌の中にある『夜トイレに行くのにスポットライト』は脱走しないように 決められた一本道をスポットライトに当たりながら歩かなければならなった事からきています。

3)『日系アメリカ人強制収容所』からの解放時 日系アメリカ人には本当に切符と25ドルしか配られませんでした。
『家 銀行口座 仕事』を没収された日系アメリカ人達はそんな状況で一から生活を再建しなければなりませんでした。
そして だいぶ後にアメリカ政府は『日系アメリカ人強制収容所』の誤りを認め 賠償金を支払っています。

その他 舞台のセットでも知っているとなるほどと思うけど 知らないと分からない様な事も。
今回の『アリージャンス/忠誠』を鑑賞されて日系アメリカ人強制収容所に興味を持たれた方には『東洋宮武が覗いた時代』というドキュメンタリー映画が かなりおススメです。(DVDで出ています。)
当時の日系アメリカ人強制収容所の生活が詳しく分かります。
ダンスパーティーの写真なてそんな生活の中でも楽しもうとしている表情やおしゃれした姿が凄く素敵です。
東洋宮武さんは 日系アメリカ人強制収容所にいて 隠れて内部を写真撮影をしたカメラマンの名前です。
何故 自分はこの作品を見ているかというと この作品にもジョージ・タケイさんがインタビューで出演されているからです。


全国公開

舞台挨拶でジョージ・タケイさんは『2020年に向けて沖縄から北海道まで日本中で見れるようにしたい』と語っておられました。
しかし お台場の大きな劇場ではお客さんの入りは正直3分の1くらいでした。
チケットも値段が高く 宣伝の無さ 当日券の有無も直前まで分からない 舞台挨拶は上映の前か後かも分からない(キャストのスケジュールの都合でバラバラでした)
キャストの挨拶のみで宣伝されていたパフォーマンスは無い パンフレットの販売も無い等 苦戦の理由は色々とあると思います。 
(もちろん それにも色々と運営さん側の理由があったのだと思いますが)
クラウドファンディングもしているので 運営さんも今回のイベントの収支の事後報告と共い今後の展開発表は行うと思います。

正直 何故にもう上映できる状態の作品の公開目標が2020年なのだろうか??とも思います。
ここから何か別の公開への宣伝活動とかあるのかぁと。
せっかくの 今回のジャパンプレミア上映の宣伝効果がどんどん薄れていくのに。
やり方によっては もっと簡単に全国上映をクリアしている作品も沢山あるのに。

ただ『アリージャンス/忠誠』という作品は本当に素晴らしいので 全国公開されたら良いのになぁと思います。
作品のテーマから表現 音楽から歌声 ダンスまで一見の価値がある作品です。
その時にはぜひ劇場へ。
自分は今回のジャパンプレミア上映で4回も見ましたが全く飽きの来ない作品でした。

もしくは ソフト化されて いつでも家で観れるようになったらいいのになぁと思います。


後 なんだかんだ言っても今回のジャパンプレミア上映を企画し ジョージ・タケイさん達を日本に呼んで下さった運営さんには感謝の気持ちもあります。
本当にありがとうございました。