喉の調子がどうもおかしいと気付いた。
でもきっと大丈夫と高をくくって外に出た。
外に出ると、何だか会いたくないのに顔が見たくなって足は自然と駅へ向かっていた。
池袋まで電車に揺られる。
その中で咳が出始めた。
やっぱり風邪かと思ったけれど、帰る気は起こらずにそのまま池袋に入った。
足元がふらつくような気がするけれど、どうにか誤魔化して前に進む。
意識がしゃんとしていないのも分かっていた。
だから、気付けなかった。
静雄が叫びながらゴミ箱を投げつけてきたことに。
「・・・。」
ちょっと飛んで地面にバウンド。
そこで俺は烈しい嘔吐感を覚え、近くにあったコンビニにどうにか入ると、店員にトイレを借りるとも言わずにトイレに飛び込んだ。
飛んできたのがゴミ箱でよかったよ本当に。
あれが自販機だったら死んでたな。
どうにか落ち着いた俺はコンビニから出る。
すると目の前に見慣れたバーテン服が立っていた。
否、見慣れたバーテン服を着た男が立っていた。
「やぁ、シズちゃん。今日も烈しい歓迎ありがとう。」
にっこり笑って男の顔を見上げたが、正直表情は歪んでいてあまり見えない。
そのことがひどく残念に感じられた。
「おい、お前・・・熱でもあるんじゃないのか?」
「・・・・・・別に気にするほどじゃないよ。」
「いや、でもお前顔真っ赤だぞ。」
「うるさいよ!」
額に伸びてくる手を払いのけたところで俺の意識は真っ暗になった。
「おい、臨也!?」
なんて声が聞こえた気がしたけど、その真偽を確かめることは不可能だった。
「ただの風邪。しかもそうとうな熱が出てるから本人だって自覚してたはずだよ。」
「じゃあ、この馬鹿は倒れること承知で外ふらついてたってことか。」
「まぁ、そうなるかな。本人が倒れるって思っていたかは別として。」
うっすらと目を開くと見覚えはあるけれど、自分の部屋ではない場所にいた。
「・・・あれ、ここ・・・」
「あ、気付いたみたいだね。」
大丈夫かい?なんて言いながら顔をのぞかせてきたのは新羅だった。
「何で新羅?」
「静雄が臨也が倒れたって、僕のところまで運んできたんだよ。君、熱があるって分かってたのに休まずにここまで来たんだろ。」
新羅に体温計を渡されたので、それを脇に挟みながら俺は苦笑しながら頷いた。
「たいしたことないって思ってさ。」
「・・・やれやれ、風邪を侮ってもらったら困るんだけどなあ。」
新羅はちらりと壁際にいた静雄に視線を向けた。
「静雄はこれからどうするの?」
「今日はもう帰って飯食って寝るだけだ。」
「そっか、じゃぁ・・・臨也のこと送ってあげてくれない?」
いつまでもここに置いていく訳にはいかないしね。と言って、新羅は鳴った体温計を俺から受け取る。
新羅が言っていることの意味が分からずに俺は首をかしげた。
「何で?」
静雄は、仕方がないという顔をして頷いている。
「え?俺一人で帰れるから大丈夫だよ。別にシズちゃんに送ってもらわなくても・・・。」
「またどこで倒れるとも限らないし、用心棒代わりに送ってもらいな。」
ちゃんと静雄の顔を見るが、その表情はサングラスのせいでよく見えなかったが、普段よりずっと落ち着いた様子だった。
この空気では申し入れを受けなければ簀巻きにして担いででも連れて行かれそうだ。
「分かった、シズちゃんがいいならそれでいいよ。」
「あぁ。」
俺はシズちゃんの返事にとろりとした笑顔を出してしまっていた。
すぐそれに気付いて首を振ったら、また吐き気がこみ上げてきた。
「さ、遅くならないうちに帰りなよ。」
静雄は新羅が薬を準備している間に臨也を背負い、新羅から薬を受け取ると部屋をあとにした。
「シズちゃん、重いでしょ?自分で歩くよ?」
「自販機に比べりゃずっと軽い。」
「自販機と比べないでよ。」
「冷蔵庫に食い物は入ってんのか?」
「んー・・・ゼリー飲料?」
「・・・一回お前を部屋に送ったら買出しに行くからな。」
「えー、何で?」
「何でってお前・・・熱があるんだからしっかり食わないと治らないだろ。」
「シズちゃん作ってくれるの?」
「今日だけな。」
俺は腕を伸ばしてしっかりとシズちゃんにつかまった。
「シズちゃん・・・ありがと。」
「分かるかい?きっと君と静雄は赤い糸で繋がってるんだよ。」
新羅は自分の手を俺に見せながら言った。
僕とセルティが繋がっているようにね。
ともほざくので、思いっ切り頭にチョップを入れてやった。
「もしシズちゃんと俺がそんな風に繋がっているなら、その糸を全力で引きちぎってやるけどね。」
「無理だよ、それは無理。物理的な攻撃ではその糸を切ることはできないよ。」
「…………………まぁ、百歩譲って俺とシズちゃんが糸で繋がっているとしたら、赤じゃなくて鎖だろうなぁ。」
錆びたら切れる。
「じゃぁ、錆びて切れる前に鎖がもつれてがんじがらめになって、離れられなくなる。」
「………だから、どうしてそうなるの。」
新羅は笑いながら指を見つめるばかりだった。
「繋がってる…糸。」
呟いた途端、新羅がにやりと笑うので、俺は思いっ切り腹を蹴ってやった。
「げふっ!」
「………帰る。」
「はいはい、じゃぁね。」
あぁ、なんだかイラッとするなぁ。
糸とか別にどうでもいいし。
無理でもなんでも引きちぎるから。
それに、俺がちぎる前にシズちゃんがちぎってくれるでしょ。
新羅は自分の手を俺に見せながら言った。
僕とセルティが繋がっているようにね。
ともほざくので、思いっ切り頭にチョップを入れてやった。
「もしシズちゃんと俺がそんな風に繋がっているなら、その糸を全力で引きちぎってやるけどね。」
「無理だよ、それは無理。物理的な攻撃ではその糸を切ることはできないよ。」
「…………………まぁ、百歩譲って俺とシズちゃんが糸で繋がっているとしたら、赤じゃなくて鎖だろうなぁ。」
錆びたら切れる。
「じゃぁ、錆びて切れる前に鎖がもつれてがんじがらめになって、離れられなくなる。」
「………だから、どうしてそうなるの。」
新羅は笑いながら指を見つめるばかりだった。
「繋がってる…糸。」
呟いた途端、新羅がにやりと笑うので、俺は思いっ切り腹を蹴ってやった。
「げふっ!」
「………帰る。」
「はいはい、じゃぁね。」
あぁ、なんだかイラッとするなぁ。
糸とか別にどうでもいいし。
無理でもなんでも引きちぎるから。
それに、俺がちぎる前にシズちゃんがちぎってくれるでしょ。
今日こそ会いませんように!と思いながら池袋に来たのに会ってしまうのは最早お決まりで、コンビニの前にあるごみ箱や自販機が飛び交うのも池袋ではよくあること。
…………常識とかそういうことが通用しないシズちゃんは苦手、嫌い。
普通自販機を持ち上げて投げたりする?
まぁ、今日の自販機は自分に投げられた訳では無いが。
「ん、あれなら死んではいないかな。」
ちらと飛んで行った人に目を向ける。
が、すぐに神経を周りの人間に向け直した。
相手は突然現れたシズちゃんに気をとられている。
シズちゃんの顔には怒りが浮かんでいた。
非常に面倒臭い。
「奇遇だね。」
へらっと笑いながら言うと、シズちゃんはかかって来た男達をぶっ飛ばしながらこちらを睨みつけてきた。
「手前は今日も楽しそうじゃねぇか。」
「………どうやったらそうみえるの。」
もう少しでレ●●されるところだったんだけど。
と、小さくつぶやきながらシズちゃんを観察する。
そろそろシズちゃん無双とか出てもおかしくなさそう。
「あぁ、何で会っちゃったんだろ。」
「手前が池袋に来るからだろうよ。」
「……ま、今日は助かったかな。」
最後の一人が薙ぎ倒されるのを見届けて立ち上がる。
倒れている人を飛び越えてシズちゃんの隣にならぶ。
「今日は喧嘩ナシ…ね?」
シズちゃんは黙ってタバコをくわえた。
俺はそれを見て笑った。
その瞬間シズちゃんの頬が少し朱くなった顔は見なかったことにしよう。
…………常識とかそういうことが通用しないシズちゃんは苦手、嫌い。
普通自販機を持ち上げて投げたりする?
まぁ、今日の自販機は自分に投げられた訳では無いが。
「ん、あれなら死んではいないかな。」
ちらと飛んで行った人に目を向ける。
が、すぐに神経を周りの人間に向け直した。
相手は突然現れたシズちゃんに気をとられている。
シズちゃんの顔には怒りが浮かんでいた。
非常に面倒臭い。
「奇遇だね。」
へらっと笑いながら言うと、シズちゃんはかかって来た男達をぶっ飛ばしながらこちらを睨みつけてきた。
「手前は今日も楽しそうじゃねぇか。」
「………どうやったらそうみえるの。」
もう少しでレ●●されるところだったんだけど。
と、小さくつぶやきながらシズちゃんを観察する。
そろそろシズちゃん無双とか出てもおかしくなさそう。
「あぁ、何で会っちゃったんだろ。」
「手前が池袋に来るからだろうよ。」
「……ま、今日は助かったかな。」
最後の一人が薙ぎ倒されるのを見届けて立ち上がる。
倒れている人を飛び越えてシズちゃんの隣にならぶ。
「今日は喧嘩ナシ…ね?」
シズちゃんは黙ってタバコをくわえた。
俺はそれを見て笑った。
その瞬間シズちゃんの頬が少し朱くなった顔は見なかったことにしよう。
嫌いなら放っておいてくれればいいのに!
構わないでよ!
本当に・・・
馬鹿!!!
仕事のために、仕方なく。
今回は本当に来たくないのに仕方なく、池袋の駅にいた。
これから外へ出たら平和島静雄に会う確率はぐっと上がる。
今日だけは、今日だけは来たくなかった。
実の所、昨日静雄から電話があったのだが、苛立っていたためブチギリしたのだ。
絶対に機嫌悪いよシズちゃん・・・。
会いませんようにと呪文のように呟きながら外へ出た。
よかった・・・と思いながら仕事を終えた俺は池袋の駅へと向かっていた。
今日はシズちゃんに会わなかった。
よかったよかった。
俺はつい気を抜いて改札を通った。
それが失敗だった。
「臨也、こんなところにいたのか。」
・・・。
「え、シズちゃんが・・・何で駅にいるの?」
「ちょっと新宿に手前を殴りに行ったんだけど生憎の留守でなぁ。」
留守・・・あぁ、ドア破壊されてること間違いなし。
「・・・えー、帰ってもいい?」
「だれが帰らせるか!一発殴らせろ、むしろ死ねよ手前!!」
「!もう、いい加減にしてよ!」
「うっせぇ、手前殴らせろ!!」
もう、放っておいてよ!!
構わないでよ!
本当に・・・
馬鹿!!!
仕事のために、仕方なく。
今回は本当に来たくないのに仕方なく、池袋の駅にいた。
これから外へ出たら平和島静雄に会う確率はぐっと上がる。
今日だけは、今日だけは来たくなかった。
実の所、昨日静雄から電話があったのだが、苛立っていたためブチギリしたのだ。
絶対に機嫌悪いよシズちゃん・・・。
会いませんようにと呪文のように呟きながら外へ出た。
よかった・・・と思いながら仕事を終えた俺は池袋の駅へと向かっていた。
今日はシズちゃんに会わなかった。
よかったよかった。
俺はつい気を抜いて改札を通った。
それが失敗だった。
「臨也、こんなところにいたのか。」
・・・。
「え、シズちゃんが・・・何で駅にいるの?」
「ちょっと新宿に手前を殴りに行ったんだけど生憎の留守でなぁ。」
留守・・・あぁ、ドア破壊されてること間違いなし。
「・・・えー、帰ってもいい?」
「だれが帰らせるか!一発殴らせろ、むしろ死ねよ手前!!」
「!もう、いい加減にしてよ!」
「うっせぇ、手前殴らせろ!!」
もう、放っておいてよ!!
「まったくチョコレート会社の策略にはめられているとも気づかずにいい気なもんだと思わない?」
臨也は池袋でばったり出会った帝人にそう言った。
「・・・はぁ、そうなんですかね?」
臨也はニヤリと笑うと頷いた。
「まぁ、それも面白いんだけどね。」
これあげる、と言った臨也に渡されたのは新発売のチョコレートだった。
それが手のひらに落ちるとほぼ同時に目の前に赤い物が走った。
それをよけるのに飛びのいた臨也は苦笑しながら自動販売機が飛んできた方を見た。
「シズちゃん・・・自販機投げるのはよしたほうがいいと思うな。」
「うっせぇ、何で手前が池袋にいやがる。」
臨也は走り出しながら叫んだ。
「バレンタインデーだからかな?」
それを聞いた静雄は近くにあった標識をへし折った。
そして元標識を持って臨也の名前を叫びながら駈け出す。
その場には帝人と小さなチョコレートだけが残っていた。
臨也は池袋でばったり出会った帝人にそう言った。
「・・・はぁ、そうなんですかね?」
臨也はニヤリと笑うと頷いた。
「まぁ、それも面白いんだけどね。」
これあげる、と言った臨也に渡されたのは新発売のチョコレートだった。
それが手のひらに落ちるとほぼ同時に目の前に赤い物が走った。
それをよけるのに飛びのいた臨也は苦笑しながら自動販売機が飛んできた方を見た。
「シズちゃん・・・自販機投げるのはよしたほうがいいと思うな。」
「うっせぇ、何で手前が池袋にいやがる。」
臨也は走り出しながら叫んだ。
「バレンタインデーだからかな?」
それを聞いた静雄は近くにあった標識をへし折った。
そして元標識を持って臨也の名前を叫びながら駈け出す。
その場には帝人と小さなチョコレートだけが残っていた。
ディックとレイフォンは世間で言うと幼なじみという部類に入る関係でしたが、この二人の場合は少し捩曲がった様子を見せていました。
何が曲がっているかと言うと、世間一般が想像するような仲の良い関係ではないのです。
言い方を変えると、腐って切れるのを待つ関係。
ただの腐れ縁だったのです。
この腐れ縁というやつはくせ者で、どんなに逃れようとしても逃れられないものでした。
今回もこの腐れ縁は、その力を遺憾無く発揮したのであります。
「「………………。」」
二人は互いに睨み合ったまま微動だにしなかった。
二人の間に挟まれているバイト先の先輩——ニーナは戸惑いを隠せないでいた。
新人バイト二人が今にもキレそうな顔をしているのだから、その反応は至極当たり前だといえるだろう。
先に動いたのはレイフォンだった。
「何でディックが俺のバイト先のファミレスにいるのかなぁ?」
ディックはそれに怒りの顔から一変させ、笑顔で答えた。
「ここで俺も働くからって言えば満足か、レイフォン。」
どうやら二人は知り合いらしいと気づいたニーナは取り敢えず、今日の自分の仕事を片付けることにした。
「えー、私はニーナ、二人と同じホール担当だ、よろしく。これから簡単な仕事を教えるからちゃんと覚えるように。あと、ホールのことは先輩に聞いたり見たりして覚えてくれ。」
「「はい。」」
これがバイト初日のできごとで、今はバイトを始めてからもう半年が過ぎていた。
ニーナは休憩室で溜息をついていた。
半年前からバイトに入ったレイフォンとディックのことだ。
仕事はできるのだが、どうにも仲が悪い。
隙あらば足を踏みあったりしている。
見兼ねたニーナがレイフォンが料理が得意だと言うので、キッチンに担当を変えるようにすすめたのだが、丁重に断られた。
せめてシフトをずらそうとしても駄目だった。
シフトについては魔法でもかかって……………むしろ呪いがかかっているのではないかというほど都合が合わなかった。
他に何か手は無いかと思うのだが思い付かない。
おまけに自分のシフトと二人のシフトが被り続けるという不幸を味わっている。
「シフトをずらさせてもらおう。」
ニーナはまず自分の心労を回復させることを優先した。
机に伏せていると、同期のフェリが疲れた顔で休憩室に入ってきて言った。
「団体です…早く手伝ってください。」
ニーナはどうにか立ち上がると営業スマイルを貼付けてホールに繰り出した。
「最近ニーナとシフト合わねぇな…。」
ディックは社員のシフトが書かれた紙を眺めながら呟いた。
「一緒になりたくもないディックとは被り続けるのにね。」
レイフォンも隣に立ち、同じように紙を見ている。
にっこりと微笑んでいるレイフォンは腹の中で黒い笑みを浮かべていた。
つい先日、レイフォンは街中でニーナとばったり会ったのだ。
その時、普段は話さないようなことを喋り、ニーナに関する情報を得ることに成功していた。
ちゃっかりメールアドレスも交換した。
ディックよりは親しい関係を築けていることは、レイフォンに少しの優越感を与えた。
何が曲がっているかと言うと、世間一般が想像するような仲の良い関係ではないのです。
言い方を変えると、腐って切れるのを待つ関係。
ただの腐れ縁だったのです。
この腐れ縁というやつはくせ者で、どんなに逃れようとしても逃れられないものでした。
今回もこの腐れ縁は、その力を遺憾無く発揮したのであります。
「「………………。」」
二人は互いに睨み合ったまま微動だにしなかった。
二人の間に挟まれているバイト先の先輩——ニーナは戸惑いを隠せないでいた。
新人バイト二人が今にもキレそうな顔をしているのだから、その反応は至極当たり前だといえるだろう。
先に動いたのはレイフォンだった。
「何でディックが俺のバイト先のファミレスにいるのかなぁ?」
ディックはそれに怒りの顔から一変させ、笑顔で答えた。
「ここで俺も働くからって言えば満足か、レイフォン。」
どうやら二人は知り合いらしいと気づいたニーナは取り敢えず、今日の自分の仕事を片付けることにした。
「えー、私はニーナ、二人と同じホール担当だ、よろしく。これから簡単な仕事を教えるからちゃんと覚えるように。あと、ホールのことは先輩に聞いたり見たりして覚えてくれ。」
「「はい。」」
これがバイト初日のできごとで、今はバイトを始めてからもう半年が過ぎていた。
ニーナは休憩室で溜息をついていた。
半年前からバイトに入ったレイフォンとディックのことだ。
仕事はできるのだが、どうにも仲が悪い。
隙あらば足を踏みあったりしている。
見兼ねたニーナがレイフォンが料理が得意だと言うので、キッチンに担当を変えるようにすすめたのだが、丁重に断られた。
せめてシフトをずらそうとしても駄目だった。
シフトについては魔法でもかかって……………むしろ呪いがかかっているのではないかというほど都合が合わなかった。
他に何か手は無いかと思うのだが思い付かない。
おまけに自分のシフトと二人のシフトが被り続けるという不幸を味わっている。
「シフトをずらさせてもらおう。」
ニーナはまず自分の心労を回復させることを優先した。
机に伏せていると、同期のフェリが疲れた顔で休憩室に入ってきて言った。
「団体です…早く手伝ってください。」
ニーナはどうにか立ち上がると営業スマイルを貼付けてホールに繰り出した。
「最近ニーナとシフト合わねぇな…。」
ディックは社員のシフトが書かれた紙を眺めながら呟いた。
「一緒になりたくもないディックとは被り続けるのにね。」
レイフォンも隣に立ち、同じように紙を見ている。
にっこりと微笑んでいるレイフォンは腹の中で黒い笑みを浮かべていた。
つい先日、レイフォンは街中でニーナとばったり会ったのだ。
その時、普段は話さないようなことを喋り、ニーナに関する情報を得ることに成功していた。
ちゃっかりメールアドレスも交換した。
ディックよりは親しい関係を築けていることは、レイフォンに少しの優越感を与えた。
「へー。隊長、髪長かったんですね。」
部屋の整理をしていた時発見した昔のニーナとハーレイの写っている写真。
しばらく眺めてたら、訓練の時間になっていて、持ったまま部屋を飛び出していた。
それをレイフォンに発見され冒頭にいたる。
「あぁ、ツェルニに来る前にバッサリ切ってしまったがな。」
「可愛いですね。」
口元を緩めてレイフォンが言う。
どうせ今は可愛くないですよ…とニーナは少しへこんだ。
「ハーレイ先輩は変わりませんね。」
確か、この写真はレイフォン位の時に撮ったものだったか?
と思いながら、ちらりとレイフォンの手元にある写真を見る。
確かに変わってない。
「ほんとだな。」
クスッと笑っていると、急にレイフォンはニーナを真剣な顔で見た。
「どうした?」
「先輩は…ニーナ先輩は、綺麗になりましたよね。」
写真を持っていない方の手をニーナの頬に添えて、レイフォンが近づいてくる。
「……っ!」
ニーナは 恥ずかしさで頭が爆発しそうになった。
くそっ、こんな時に限って来ないあの三人…今度会ったらただじゃおかないからなー―――!!!!
部屋の整理をしていた時発見した昔のニーナとハーレイの写っている写真。
しばらく眺めてたら、訓練の時間になっていて、持ったまま部屋を飛び出していた。
それをレイフォンに発見され冒頭にいたる。
「あぁ、ツェルニに来る前にバッサリ切ってしまったがな。」
「可愛いですね。」
口元を緩めてレイフォンが言う。
どうせ今は可愛くないですよ…とニーナは少しへこんだ。
「ハーレイ先輩は変わりませんね。」
確か、この写真はレイフォン位の時に撮ったものだったか?
と思いながら、ちらりとレイフォンの手元にある写真を見る。
確かに変わってない。
「ほんとだな。」
クスッと笑っていると、急にレイフォンはニーナを真剣な顔で見た。
「どうした?」
「先輩は…ニーナ先輩は、綺麗になりましたよね。」
写真を持っていない方の手をニーナの頬に添えて、レイフォンが近づいてくる。
「……っ!」
ニーナは 恥ずかしさで頭が爆発しそうになった。
くそっ、こんな時に限って来ないあの三人…今度会ったらただじゃおかないからなー―――!!!!
「結局渡せなかったな…。」
ニーナはベンチに腰掛けると、持っていた包みを開き、チョコレートを一つ取り出し、口に放り込んだ。
甘すぎず、かといって苦くも無い味が口いっぱいに広がる。
「うん。なかなかだな。」
食べてみると、思っていたより美味しくて、ニーナは次から次へと口に入れた。
最後の一つを食べていると、不意に声をかけられた。
「隊長、何してるんですか?」
口にチョコが入っていたため、喋るに喋れず、急いで飲み込んだ。
「ん…レイフォンか。いや、今チョコレートを食べていたんだ。」
「へっ?誰かから貰ったんですか?」
頭の上に?を浮かべながら問いかけてくるレイフォンに。実はお前に渡す予定だったチョコなんだ、なんて言えなかった。
「いや、私が作ったんだが…。」
「…誰かにあげようと?」
「まぁ、そんな所だ。」
「へぇ…誰にあげようと思っていたのか聞いてもいいですか?」
ここにきて、ニーナは自分がレイフォンにまずいことを言ったのに気がついた。
レイフォンがこう問い詰めて来る時は、ろくな事になったためしがない。
黒いオーラを出しながら訓練されたり…まぁ、色々と。
「いや…その…。」
「隊長?」
「あの…は…は…ハーレイだ!」
とっさに出てきた幼馴染の名前。
言ったあとにニーナはひどく後悔した。
レイフォンが「そうか、ハーレイ…ハーレイ先輩ね…。」と言いながら顔に黒い笑みを作ったから。
これはもしかしなくても大変なことを言ってしまったのか?
「あ…あの…、レイフォン?落ち着いて聞いてくれないか。」
「何をですか?」
「その、ハーレイには毎年あげてるんだが、今日は会わなかったし、それに、さっきのはレイフォンに、と思っていたやつなんだ。
うぅ…と唸りながらニーナはレイフォンに説明した。
「僕にと思っていたの、食べちゃったんですか?」
「今日はもう会わないと思ったから、まぁいいかと思って。」
「…。」
じっとニーナの顔を見ていたレイフォンは、何か思いついたように笑った。
「じゃあ、これを貰います。」
ニーナの顎を持ち上げる。
一瞬のうちに視界が塞がれ、唇にはやわらかいものが当たり、ぬるりとした感覚が襲ってきた。
「んぅ!?」
キスされていると理解したときには、もう離れていた。
「ごちそうさまでした。ホワイトデー、期待してて下さいね。」
ニーナはベンチに腰掛けると、持っていた包みを開き、チョコレートを一つ取り出し、口に放り込んだ。
甘すぎず、かといって苦くも無い味が口いっぱいに広がる。
「うん。なかなかだな。」
食べてみると、思っていたより美味しくて、ニーナは次から次へと口に入れた。
最後の一つを食べていると、不意に声をかけられた。
「隊長、何してるんですか?」
口にチョコが入っていたため、喋るに喋れず、急いで飲み込んだ。
「ん…レイフォンか。いや、今チョコレートを食べていたんだ。」
「へっ?誰かから貰ったんですか?」
頭の上に?を浮かべながら問いかけてくるレイフォンに。実はお前に渡す予定だったチョコなんだ、なんて言えなかった。
「いや、私が作ったんだが…。」
「…誰かにあげようと?」
「まぁ、そんな所だ。」
「へぇ…誰にあげようと思っていたのか聞いてもいいですか?」
ここにきて、ニーナは自分がレイフォンにまずいことを言ったのに気がついた。
レイフォンがこう問い詰めて来る時は、ろくな事になったためしがない。
黒いオーラを出しながら訓練されたり…まぁ、色々と。
「いや…その…。」
「隊長?」
「あの…は…は…ハーレイだ!」
とっさに出てきた幼馴染の名前。
言ったあとにニーナはひどく後悔した。
レイフォンが「そうか、ハーレイ…ハーレイ先輩ね…。」と言いながら顔に黒い笑みを作ったから。
これはもしかしなくても大変なことを言ってしまったのか?
「あ…あの…、レイフォン?落ち着いて聞いてくれないか。」
「何をですか?」
「その、ハーレイには毎年あげてるんだが、今日は会わなかったし、それに、さっきのはレイフォンに、と思っていたやつなんだ。
うぅ…と唸りながらニーナはレイフォンに説明した。
「僕にと思っていたの、食べちゃったんですか?」
「今日はもう会わないと思ったから、まぁいいかと思って。」
「…。」
じっとニーナの顔を見ていたレイフォンは、何か思いついたように笑った。
「じゃあ、これを貰います。」
ニーナの顎を持ち上げる。
一瞬のうちに視界が塞がれ、唇にはやわらかいものが当たり、ぬるりとした感覚が襲ってきた。
「んぅ!?」
キスされていると理解したときには、もう離れていた。
「ごちそうさまでした。ホワイトデー、期待してて下さいね。」
日の光が心地好い温度に大気を保ち、良い風が吹く絶好の日向ぼっこ日和。
ニーナは校舎に向かう途中で木陰で眠るレイフォンを見つけた。
そっと歩み寄り隣に腰掛ける。
起きてしまうかと思ったが、そんな懸念とは裏腹に一向に起きだす様子は無い。
そよそよと風と共にそよぐ茶の髪にニーナは手を伸ばし、優しくすいた。
髪を撫でながら目を閉じる。
あまりにも今日というこの時が気持ちよいので、つられてニーナも眠ってしまった。
昼休みの終わりを告げる鐘が鳴って、二人が慌てて飛び起きるまであと少し。
ニーナは校舎に向かう途中で木陰で眠るレイフォンを見つけた。
そっと歩み寄り隣に腰掛ける。
起きてしまうかと思ったが、そんな懸念とは裏腹に一向に起きだす様子は無い。
そよそよと風と共にそよぐ茶の髪にニーナは手を伸ばし、優しくすいた。
髪を撫でながら目を閉じる。
あまりにも今日というこの時が気持ちよいので、つられてニーナも眠ってしまった。
昼休みの終わりを告げる鐘が鳴って、二人が慌てて飛び起きるまであと少し。
日の光を受けて輝く金髪、凛とした姿。
それを見かけたレイフォンは思わず立ち止まってその後姿に声をかけた。
「隊長。」
さらりと流れる金髪、くるりとニーナが声のした方を振り返った。
「レイフォンか。」
ニーナの瞳がレイフォンを映す。
「よかったら一緒に練武館へ行きませんか?」
それを聞いたニーナの顔が緩んだ。
やさしい笑顔。
「いいぞ。」
紡がれる言葉。
その返事を聞いたレイフォンは、ニーナの隣に並んで歩き始めた。
それを見かけたレイフォンは思わず立ち止まってその後姿に声をかけた。
「隊長。」
さらりと流れる金髪、くるりとニーナが声のした方を振り返った。
「レイフォンか。」
ニーナの瞳がレイフォンを映す。
「よかったら一緒に練武館へ行きませんか?」
それを聞いたニーナの顔が緩んだ。
やさしい笑顔。
「いいぞ。」
紡がれる言葉。
その返事を聞いたレイフォンは、ニーナの隣に並んで歩き始めた。