レチノール系製品はすべて朝使用は控えて!『レチノール誘導体は朝OK』説の真相と経緯 | かずのすけの化粧品評論と美容化学についてのぼやき

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今日は↓の情報について、少し難しめのお話をしていきます…!!👀
 

 

 

 

肌の生理活性を促して、若々しい肌を維持する成分として

 

【レチノール】という成分が長らく注目されています。

 

 

レチノールには「純粋レチノール」「レチノール誘導体」の2種類がありまして

 

【純粋レチノール】

→「レチノール」そのもの

 

【レチノール誘導体】

・パルミチン酸レチノール

・酢酸レチノール

・リノール酸レチノール

 

などのことを指します。

 

 

純粋レチノール(レチノール)は医薬部外品の有効成分としてシワ改善作用が公的に認可されている数少ない成分です。

 

敏感肌への刺激が強いデメリットがありますが、最も美肌効果のエビデンスが確立されている美容成分と言われています。

 

 

レチノール誘導体というのは、レチノールの安定化成分とされており、

 

レチノールで刺激が発生しやすい構造部位に、別の構造をくっつけてレチノール特有の刺激性を緩和しています。

 

レチノールに比べて肌への生理作用が弱くなりますが、

 

その分低刺激に使用できるため「守りのレチノール」などと呼ばれることもしばしばあります。

 

(医薬部外品には肌荒れ防止効果が認可されていますが、シワ改善効果は未承認です)

 

 

 

◎「レチノール誘導体」は朝使用OK?

 

 

このレチノール誘導体…特に「パルミチン酸レチノール」という成分について

 

以前から以下のような情報を耳にする機会が多いです。

 

 

「パルミチン酸レチノールにはSPF20相当の日焼け止め効果があるので、朝使用してもOK!」

 

というもの。

 

そもそもレチノールという成分は紫外線に非常に弱い成分でして、

 

日光下では使用しないことが基本とされています。

 

レチノールが光によって分解されると、分解生成物が肌にとって良くない働きをしてしまうためです。

 

そのため、基本は朝使用NGで、夜の使用が推奨されるものです。

 

 

一方で、パルミチン酸レチノールはなぜかSPF20の日焼け止め効果がある、ということになっており、「朝使用OK」とする説が散見されます。

 

 

これは事実なのでしょうか?

 

とても気になったので文献等を調査してみました。

 

 

 

 

まず結論を先に述べておくと、

 

「パルミチン酸レチノール」含め全てのレチノール誘導体が

 

純粋レチノール同様日光下での使用は推奨できない

(朝使用は控えるべき)

 

というのが最も信憑性の高い情報でした。

 

 

 

 

それではなぜこのような説が囁かれるようになったのかなども含め、詳しく説明していきます。

 

 

 

◎レチノールはなぜ日光に当てるべきではないのか?

 

 

まずどうして「レチノール」という成分は紫外線に弱いのでしょうか。

 

これはレチノールの化学構造を見れば、有機化学を学んだ人ならばすぐにそのように直感することができます。

 

 

これが↓「レチノール」の化学構造で、

↓の赤丸の箇所が注目ポイントです。

↓みたいに棒が1本、棒が2本の箇所が交互に連なっているのがわかると思います

-=-=-=-

 

これを専門的に「共役二重結合」というのですが、

 

 

この構造はめちゃめちゃに不安定で、紫外線を当てると直ぐに壊れるのがありありと予想できるんです😇

 

 

しかも共役二重結合がとても長く、複数の分解生成物が発生することが予想されます。

 

 

まさに「どこからでも切れます」という感じ。

 

 

 

こういった構造は不安定=活性が強いということを表しているわけでもありますが、

 

化学に馴染みあれば紫外線に当てようとは一瞬も思えません。

 

 

事実、レチノールは紫外線に当てることで活性酸素種と呼ばれる悪影響物質を多数生成することが実証されており、「朝使用NG」が共通理解となっていると思います。

 

 

 

 

◎「パルミチン酸レチノール」も構造的には紫外線を当ててはいけない!?

 

 

それで、なぜ僕が当初の「パルミチン酸レチノールは朝OK」みたいな情報に疑問を抱いたか?なのですが、

 

これはパルミチン酸レチノールの構造が理由です。

 

↓がパルミチン酸レチノールの構造で、ご覧の通り先程指摘した紫外線に弱い構造は全く同じなんですね。

 

通常、誘導体というのはこういった弱点部位に別の構造をくっつけて安定化していたりするのですが、

 

レチノール誘導体の場合はレチノールの活性を生かすために全ての成分がこの部位はそのままになっているので

 

 

誘導体だからといって紫外線への耐性が向上しているとは考えにくいのです。

 

 

 

なので、「パルミチン酸レチノールだからってなぜ紫外線耐性が上がるの?」と疑問に思いました。

 

 

 

◎「パルミチン酸レチノールに紫外線防止効果あり」説の大元は2003年に公開された医学論文

 

 

まず当初の「パルミチン酸レチノールに紫外線防止効果あり」という説がはじめて提唱されたのは、

 

2003年に以下の文献が発表されたことがきっかけだったようです。

 

Vitamin A Exerts a Photoprotective Action in Skin by Absorbing Ultraviolet B Radiation

(ビタミンAはUVBを吸収することにより皮膚に光防護作用を発揮します)

 

 

有名な学会誌に掲載されており、かつ内容も実際に人の皮膚を使用したもので、

 

とてもエビデンスレベルの高い論文と思われます。

 

その中でUVBの照射に対して2%のパルミチン酸レチノール(RP)溶液がSPF20の日焼け止めと同等近い紫外線への紅斑抑制効果が認められたと報告されました。

 

 

 

この文献から、一時は多くの海外のサンスクリーンメーカーがパルミチン酸レチノールを日焼け止めに配合しようと開発を進めていたという時期もあったそう。

 

(ただ、日本ではパルミチン酸レチノールは0.1%くらいしか入れないので、いずれにせよ2%は現実的ではない濃度です)

 

 

なので、「このパルミチン酸レチノールにSPF20同等の紫外線防止効果がある」という情報は、全く根拠なしというわけではありませんでした。

 

 

実際にそのような論文が過去に発表されていたのです。

 

 

噂によるとこの説を提唱する皮膚科医の先生も居るそうですが、

 

この論文を基にしていたとしたら納得です。

 

 

 

ちなみに日本にこの「パルミチン酸レチノールSPF20」説を伝えたのは、

 

恐らくレチノール化粧品の2大巨塔である【エンビロン】ではないか?と僕は踏んでいます。

 

 

エンビロンの公式サイトでは別にそういうことは書いていないのですが、

 

どうやらネットの情報を見ていると、エンビロンの取り扱いクリニックやエステサロンなどのブログに書いてあることが非常に多いのです。

 

そして、友人伝いで見せてもらったのですが、エンビロンの創設者と言われている「ドクターフェルナンデス」氏の著書(既に絶版しています)にこの内容の記述が見られたとのことです。

 

 

エンビロンではこれを理由にレチノール誘導体配合化粧品も日中利用OKとしているそう。

 

 

※ちなみにゼオスキンでも同様のことを言われているそうです。

 

 

 

◎しかし、その後アメリカ食品医薬品局(FDA)等の検証によりパルミチン酸レチノールのUV防護性は事実上否定されていた…!

 

 

しかしその後、様々な研究機関がこの論文に反論するかのような論文を立て続けに発表しています。

 

 

こちらは2005年、アメリカ食品医薬品局(FDA)の研究者が執筆しているレビュー論文です。

 

 

これまでの様々な研究結果から、パルミチン酸レチノールなどのレチノイドの光安定性や光毒性等について総括しています。

 

 

最後のまとめのGoogle日本語訳をそのまま貼るとこんな感じです。

(Googleすごい笑)

人間の毒性に関しては、パルミチン酸レチノール(RP)を含む化粧品を使用した場合の長期的な影響は現在不明です。RPの光照射は、有毒な光分解生成物を形成し、ROSを生成し、脂質過酸化を誘発し、DNA損傷を引き起こす可能性があることが実証されています。また、局所的に適用されたRPは、RA(酢酸レチノール)を含む医薬品の使用に関連する皮膚の変化の多くを生み出し、場合によっては光発癌を促進する可能性があります。したがって、化粧品におけるRPの使用に関連する条件下でのRPの光発癌の研究は、タイムリーかつ重要です。その結果、RPは最近、米国FDAによってノミネートされ、国家毒性プログラム(NTP)によって、光毒性および光発癌性研究の優先度の高い化合物として選択されました。

 

一言でまとめると

 

「パルミチン酸レチノールは光で分解して有害な物質を生成し、DNA損傷を引き起こす可能性がある。」

 

というものです。

 

多分どなたでも全文読めますし、英語ではありますがGoogle日本語訳などをすると大抵の内容は理解できると思います。

 

 

FDAではその後、かなり長期間を費やしてパルミチン酸レチノール等の光毒性等を試験しているのですが、

 

↓これが「国家毒性プログラム(NTP)」で試験されたパルミチン酸レチノール等の光安定性の試験結果をまとめた資料です。

 

一年かけてマウスにパルミチン酸レチノールを塗って色んな種類の光を照射したという研究で、

 

結果としては、パルミチン酸レチノールはマウスを使った結果では、SSL(様々なスペクトルを混ぜた紫外線)に対して多くの皮膚病変や光発がん性を増加させたという結果になっていますね。

 

 

 

また以下の論文が2005年、2007年、2010年に立て続けに発表されています。

 

 

 

 

いずれも簡単に要約すると、

 

「パルミチン酸レチノールにUVAを照射すると、マウスの細胞に対して細胞毒性や変異原性を示した」というものです。

※変異原性…DNA損傷や染色体異常を誘発する性質。細胞の癌化を誘発する性質のひとつ。


これらはハッキリ言って氷山の一角で、

 

実際に同じテーマで研究論文を調べるともっとたくさん文献がHITしますが、そのほぼ全ての内容が

 

「パルミチン酸レチノールを紫外線に当ててはいけない」というものです。

 

逆に、UV耐性を肯定する文献は最初のもの以外僕は入手できませんでした。



◎結論:パルミチン酸レチノールもレチノール同様に紫外線に当てるべきではない!


そんなわけで、2003年に「紫外線耐性があるかも!」と発表された後

 

2005年~2010年にかけて多くの研究機関でこの内容に反論する研究論文が発表されたため、

 

その後「パルミチン酸レチノールにはUV防護作用がある!」という説は事実上なかったことになりました😅



そのため、現在でパルミチン酸レチノールをUV防御成分として使用している化粧品メーカーはありませんし、もちろん紫外線防止成分として公的な認可も受けていません。

 

 

 

これだけの研究内容を見れば、

 

パルミチン酸レチノールを紫外線に当たるような環境で使うことを推奨することは僕にはできません。

 

 

確かに、その後の幾つかの研究で、日焼け止めやビタミンC誘導体などと併用することで

 

パルミチン酸レチノールの光分解や活性酸素の発生をある程度抑えることができるという内容は見られましたが、

 

これは100%抑えられるわけではありませんし、

 

 

そもそも日本のスキンケアで使用するパルミチン酸レチノールの配合量は0.1%以下が一般的ですから、

 

そのくらいの量の成分は日光下ではたちまちに分解されてしまい、効果を失ってしまいます。

 

 

百歩譲って何も悪い影響がなかったとしても、

 

効果が失われてしまうものをわざわざ付ける必要はあるのでしょうか。

 

パルミチン酸レチノールが0.1%ってかなり高濃度なので、安くはないですよ。

 

 

壊れてしまうものをわざわざ朝に使用推奨する意味って、

 

僕には販売側の都合以外考えられません。

 

夜だけ使えば成分は壊れないし、単純に2倍の期間使えますよ🙂

 

(僕的には高濃度のレチノールなんて夜に一回使えば十分すぎると思うのですが、上記のようなリスクを冒してまで朝・夜使わせたい理由がちょっといまいちわかりません…)

 



◎なぜパルミチン酸レチノールにSPF20同等の効果が観察されたのか?かずのすけ的考察


ここはどうでもいいと思う方は飛ばして欲しいのですが、

 

なぜ最初の論文ではパルミチン酸レチノールにSPF20相当の効果が実際に人皮膚試験で得られたのかを軽く考察します。

 

 

まずパルミチン酸レチノール…というかレチノール系統成分に紫外線吸収効果があるのは間違いありません。

 

なぜかというと、そもそも先程説明した「共役二重結合」は元々紫外線を吸収する働きがあるのです。

 

この紫外線吸収作用によって、UVB照射に対して一時的な日焼け止め効果を及ぼしたと考えられます。

 

 

しかし、様々な文献で指摘されているように、パルミチン酸レチノールは「UVA」に対して変異原性等を示してしまう性質があったため、

 

UVBの照射だけで紫外線防止効果ありの判断はやや性急過ぎたということでしょう。

 

 

このようにいっときの紫外線吸収効果があっても、紫外線防止剤としてはふさわしくない化合物というのは我々の身の回りには沢山あります。

 

昔解説した植物油脂などもその一種です。

 

 

植物油脂も試験だけをすればSPFを出すことができますが、同じく酸化によって肌に負担を与える可能性があるため、日焼け止めとしてふさわしくありません。

 

レチノール類も、紫外線を吸収するとそのエネルギーを使って分解して、様々な活性酸素等を生み出してしまいます。

 

一方私達が日焼け止めに普段用いている「紫外線防止剤」は、紫外線を吸収してもほとんど分解せず、それを別のエネルギーに変換したり、構造が変わってもまた元に戻るなどの特殊な性質を持っているのです。


そういった厳しい基準をクリアした特別な成分のみが【紫外線吸収剤】として厚生労働省などに認可されているものであり、SPFが出たからと言って簡単に紫外線防止効果あり、と判断することはできないわけです。

 

 

◎レチノール系はすべてにおいて夜のみの使用が推奨!(極低濃度の製品についてはこの限りではない)


というわけで物凄く長くなりましたが、最終結論としてはタイトルに書いている通り

 

パルミチン酸レチノールなどの誘導体も含め、

 

レチノール製品は夜のみの使用が推奨で、朝使用は控えるべきです。


日中でもほとんど紫外線を浴びない場合は、日焼け止めとビタミンC誘導体などをしっかり塗っておけば多分問題ありませんが、個人的には積極的にはこれを推奨するものではありません。

 

(メーカーによっては大丈夫っていうと思いますが)

 

 

あと、↓の動画中でも言っているのですが

 

 

 

実質的にレチノールの配合量がほぼ無いと思われるものは、

 

日中に使っても問題ないと思います😅




僕自身この説についてはとても長く悶々としていたので、

 

今回じっくり調べてみて僕の中で確固とした結論を導けたのはとても良かったと思います😎

 

 

今後はもう迷わず「レチノール系は全部夜のみ推奨!」と僕は言いますので、

 

みなさんも是非覚えておいて欲しいと思います😉

 



というわけで、とても長くなりましたが、本日は以上です!💡


 

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