高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。


私は、高齢になり介護を受けるようになった親を、きょうだいの一人が囲い込み、他のきょうだいに会わせない――いわゆる「高齢親の囲い込み」でお困りの方をサポートしています。

 

 

 

 

48.施設長と対話して面会が実現した話

 

こんにちは。
高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。

 

私のところには日々、こんな相談が寄せられます。

「母が施設に入ったと聞いたけれど、兄が住所も施設名も教えてくれません。電話をかけても“もう関わらないでほしい”と一方的に切られ、母にも会えないんです……。」

 

これは決して珍しい話ではありません。

高齢になった親をきょうだいの一人が囲い込み、他のきょうだいに会わせないという問題。これがいわゆる「高齢親の囲い込み」です。

 

今回ご紹介するのは、そんな状況に置かれたご相談者が、施設長との対話を通じて親との面会を実現したケースです。
このお話が、同じ悩みを抱える方の希望になれば幸いです。

 


きっかけは一本の電話

 

ご相談者であるAさん(50代女性)は、ある日突然、実家近くに住む兄から電話でこう告げられました。

 

「母は施設に入居したから。もう俺が全部面倒を見るから、お前は関わるな。」

それだけ言って一方的に電話を切られてしまいました。
 

母の入居先を尋ねても答えてもらえず、手紙を送っても返事はありません。

 

それまで母とAさんは週に一度は電話で話し、月に数回は顔を合わせていたといいます。
 

突然、連絡が途絶えた不安と寂しさ……。
 

Aさんは居ても立ってもいられず、母の行方を必死に探しました。

数週間後、ようやく母が入所したと思われる施設を突き止めます。
 

しかし、電話をしても受付の方からはこう言われました。

 

「ご家族のご面会については、基本的にご本人やキーパーソン(主に契約者である長男様)のご意向に従っております。」

つまり、兄が「面会させない」と伝えていれば、施設側はそれに従わざるを得ないということです。

 

Aさんは心が折れそうになりました。


 

法的手段を検討する前に

 

Aさんは悩んだ末、私のところに相談に来られました。

「もう、裁判するしかないんでしょうか……?」

 

たしかに、法的には面会交流請求成年後見制度を通じて解決を図ることも可能です。
 

しかし、法的手続きは時間も費用もかかります。なにより、親にとっても負担になりかねません。

 

私はまず、「話し合いによる解決」を提案しました。
そしてこうお伝えしました。

 

「施設はあくまで中立の立場です。
直接のきょうだい同士だと感情がぶつかりやすいですが、施設長という第三者が入ると冷静に話しやすくなります。
まずは施設長さんと面談して、こちらの想いを伝えてみましょう。」

 

Aさんは不安そうにうなずきながらも、勇気を出して面談の約束を取り付けました。

 


 

施設長との対話

 

面談当日、Aさんは心臓がバクバクしていたといいます。
 

兄から「関わるな」と言われているため、施設に行くこと自体が怖かったのです。

 

しかし、施設長は落ち着いた表情でAさんを迎えてくれました。
 

静かな応接室で、対話が始まります。

まずAさんは、これまでの経緯と自分の想いを伝えました。

 

「母とはこれまでとても仲良く過ごしてきました。
週に一度は一緒に買い物に行き、母が私の孫たちに会えるのを楽しみにしていたんです。
それが突然、会えなくなりました。母がどうしているか心配で……。
私は母に会いたいだけなんです。」

 

涙ながらに語るAさんを、施設長は真剣な眼差しで聞いていました。

 

次に施設長からは、施設の立場や事情が説明されました。

 

「当施設では、ご家族の関係が複雑な場合、まず契約者様のご意向を確認する決まりになっています。
しかし、ご本人様が本当に会いたいかどうかを確認することも大切です。」

 

ここでAさんは深くうなずき、こうお願いしました。

 

「もし母が“会いたくない”と自分で言っているなら、それは仕方がありません。
でも、もし会いたい気持ちがあるのなら、その声を聞いてほしいのです。」


 

施設長が示した提案

 

施設長は少し考えた後、こう言いました。

 

「わかりました。まずは私が直接、お母様に確認してみましょう。
そのうえで、本人が会いたいと希望されるなら、短時間から面会を試みてみましょう。」

 

この提案に、Aさんは胸が熱くなりました。
それは、母の意思を尊重しながら前に進める道筋だったからです。

 


 

面会の日

 

数日後、施設長から連絡がありました。

 

「お母様は“娘に会いたい”とおっしゃいました。
面会をセッティングしますので、〇月〇日にお越しください。」

 

その知らせを受けたAさんは、涙が止まらなかったそうです。

 

面会当日。

母は少し痩せてはいたものの、穏やかな表情でAさんを迎えました。

 

「来てくれてありがとう……。」

 

その一言で、Aさんは胸がいっぱいになりました。

面会は15分ほどでしたが、二人にとってはかけがえのない時間となりました。
 

帰り際、施設長が静かにこう伝えてくれました。

 

「これからも、少しずつ時間を増やしていきましょう。
ご家族の関係も、少しずつ整えていけるといいですね。」


 

感情を超えて進む一歩

 

Aさんは今回の経験を通じて、こう語ってくれました。

 

「最初は兄への怒りや憤りばかりで、話し合う気持ちになれませんでした。
でも、施設長が間に入ってくださったおかげで、母に会うという一番大切な目的を果たせました。」

 

「囲い込み」問題では、きょうだい間の感情が複雑に絡み合います。

 

その結果、親の意思が置き去りにされがちです。

だからこそ、第三者の視点が重要になります。
 

施設長やケアマネジャー、弁護士など、感情的な対立から一歩引いた立場の人が関わることで、解決への道が開けることがあります。


 

まとめ

 

今回のケースでは、施設長との対話を通じてAさんと母の面会が実現しました。
ここで大切なのは次の3つです。

  1. 親の意思を尊重すること
    面会は「親がどうしたいか」が最も重要な基準です。
  2. 第三者を介して冷静に伝えること
    直接きょうだいに訴えるよりも、施設長やケアマネジャーを通じることで話が進みやすくなります。
  3. 感情よりも目的を優先すること
    「会わせてほしい」という純粋な想いを伝えることが、解決への近道です。

 

もし今、同じような状況で悩んでいる方がいたら――。
ぜひ、勇気を出して施設長やケアマネジャーに相談してみてください。

 

法的手段を取る前にできることは、まだたくさんあります。
そして、そこには親と再会できる希望があります。

 

「会えない日々はつらいですが、あきらめなければ道は開けます。」

Aさんの言葉が、多くの方に届くことを願っています。

 

 

 

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