みなさんは、「アニミズム」と呼ばれる信仰を知っていますか❓
アニミズムとは、人間や動植物のほか、様々な事物や事象・現象になんらかの霊的存在が宿るとする信仰のことです。
霊魂を意味するラテン語の「アニマ」に由来する用語です☻
以前、ある大学の入試問題でこのアニミズムと縄文時代の人々を関連させた問題が出題されたことがあります。
今回は、縄文時代におけるアニミズムについて考えてみたいと思います😊
縄文時代において、アニミズムに深く関係した遺物(いぶつ:先人がのこしたもの)として土偶(どぐう)と石棒(せきぼう)があります。
「佐々木高明 日本の歴史①『日本史誕生』集英社 1991年」
「今村啓爾 日本史リブレット2『縄文の豊かさと限界』山川出版社 2002年」
などを参考に、土偶と石棒についての歴史を深めてみます。
みなさんは、上に掲げた写真の土偶を知っていますか❓
ふくらんだ腹部と大きく作られた下半身は、妊婦を思わせますが、その優美な姿からこの土偶は「縄文のヴィーナス」と呼ばれ、国宝に指定されています。
長野県の棚畑(たなばたけ)遺跡から出土したものです。
「縄文のヴィーナス」は欠損なく完全な形で出土しているのですが、実は土偶のほとんど全てに共通する特徴として、それが完全な形ではなく、首や手や足や胴体が欠けていたり、五体バラバラの壊された状態で発見されているのです。
岩手県の立石(たていし)遺跡で発見された土偶についてみてみると、欠損部分が相互に接合できるものがほとんどなく、これらの土偶は他の場所で壊されたのちに、その一部分がここに捨てられたのではないか、と考えられています😲
つまり、土偶は壊すことを目的として作られたとの説が有力なのです。
しかしここで大きな疑問が生まれてきます。
土偶は女性を表現していて、確実に男性を表現したものは現在知られていません。
妊娠している女性を表現した「縄文のヴィーナス」に代表されるように、土偶は新たな命を誕生させる女性であるはずなのに、なぜ壊して土中に埋めてしまうのでしょうか❓
この疑問に関して、次のような学説が存在しています。
母なる女性の土偶を壊すことは、母に死を与えることである。
その母の死によって新しい生命の誕生を期待したのである、と。
縄文時代の人々の平均寿命は、30歳ほどであった、とする学説があります。
当時の過酷な環境を容易に想像することができるように、縄文人にとって「死」という存在は、現代人と比べはるかに身近であったと考えられます。
ですから縄文人は、新しい生命を生む女性の人形を作り、これを壊して埋めることで新しい生命の誕生を願ったのではないでしょうか。
みなさんは、上に掲げた写真の石製品を知っていますか❓
これは「石棒」と呼ばれ、男性の生殖器を表現したものとされています。
土偶が女性を表現し、石棒が男性を表現していることからわかるように、縄文人の信仰の核心は「子孫の繁栄」であると言えます。
そして生きていくためには、食べていかなければなりません。
狩猟・漁労・採取・栽培など、様々な食料獲得方法を有していたとはいえ、これらは自然環境の変化を直接受けるため、常に豊富な食料を獲得し続けるには相当な困難があったと推測できます。
ですから、土偶と石棒には「子孫の繁栄」のほかに「安定した食料の獲得」との願いも込められていたのだとされています。
氷河時代が終わり、少しずつ温暖化する地球環境の中で、旧石器時代の人々に比べ、はるかに生きていくのに適した時代を生きた縄文人。
しかし、「土偶」・「石棒」という遺物から推測できるように、縄文人にとっての大きな課題が、「生命の誕生」と「食料の獲得」だったわけです。
今までみてきたのは縄文時代の出来事ですが、現代においても「生命の誕生」と「食べ物」は大きな関心事であることは間違いありません☻
時代は違えども、動物である人間にとって「生」と「食」は、これからも日々の生活の中心にあり続けるのではないでしょうか。
みなさんは、どのように感じますか❓