狼川隧道(廃)【前篇】 (滋賀県草津市南笠東) | 穴と橋とあれやらこれやら

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初めまして。ヤフーブログ出身、隧道や橋といった土木構造物などを訪ねた記録を、時系列無視で記事にしています。古い情報にご注意を。その他、雑多なネタを展開中。

 

STAY HOMETOWN@滋賀シリーズ第十六弾、そして最終回。最後はこれまで長らく記事にしそびれていた、ガチな我がホームタウン・草津市の誇る、空前絶後な物件をご紹介。その名を狼川隧道という。

 

 

かつて滋賀県内の東海道本線には天井川の下を抜ける隧道が三本存在したが、昭和31年の電化に際して断面が狭小なこれらの隧道は廃棄され、築堤と橋梁で越えるように改修された結果、現存するのは以前記事にした草津川のみとなっている。

消滅した二本のうち篠原~野洲間の家棟川隧道は完全撤去されて跡片もないのだが、本日のお題である狼川隧道に関しては、南草津~瀬田間の現在線東側に今も残り、自由に見学することができる…つうか、放置されている。これが、なかなかなのである。

 

 

 

一度見たら忘れられない、その強烈な姿をご覧あれ。

 

 

 

 

 

 

何の変哲もない、東海道本線のアンダーパス。

抜けた先に、ごくさりげなく擁壁の切れ目がある。

 

 

 

 

 

 

そんな場所にひっそりと、かつ赤裸々に

狼川隧道はある。場所コチラ

 

書き忘れていたが、本記事は2016年4月17日訪問時の写真をメインにお送りする。

 

 

 

 

 

で、これは初訪問した2009年7月28日の写真。

季節の違いによる変化と街灯柱看板の有無を除けば、特に変化はない。先述のように、完全放置されている。

 

写真右上はもうすぐに現在線(下り線)。そんな現在線にめり込むような位置に隧道は開口している。今見えているのも下り線の隧道だが、上り線の隧道は現在線の築堤で潰されてしまい、現存しない。

わたくし日々これを見ながら出勤してるわけだが、他の乗客が興味を示してるのを見たことがない。気づいてないんだろうか?気にしてないだけか。

 

 

我が国でたったひとつしかない珍品だというのに。

 

 

 

 

 

 

総煉瓦製のポータル。1889(明治22)年の開業当時に建造された隧道であり、土木学会選近代土木遺産Cランク物件。

しかし、そんな「記号」では計れないのだ、この隧道は。

 

 

 

 

 

 

まず触れておかねばならないのは、

この隧道が「ねじりまんぽ」であること。

 

拙ブログでこれまで記事にしてきたねじりまんぽ物件は、第272号橋梁六把野井水拱橋車場川橋梁円妙寺橋梁といったところ。ねじりまんぽとは何ぞや?的なことは最初の二つの記事を参照いただきたい。

 

ねじりまんぽは、国内でおよそ30ヶ所ほど確認されている。十分にレアではあるが、オンリーワンではない。よって、わたくしが先ほど述べた「我が国でたったひとつしかない珍品」というのは、ねじりまんぽそれ自体ではない。

 

 

 

 

このカットなど、

最高じゃない?

 

 

 

 

 

 

なかなかの斜角…しかし、お気づきだろうか。

斜めだった積み方が、

奥に進むに従ってなめらかに変化し、まっすぐになっている。

 

 

 

 

 

 

 

第272号橋梁や(記事にはしてないが)穿屋川橋梁、浅川橋梁のように、斜めと真っすぐが混在する物件はまれにあるが、

こういうスムーズに変化するような、こんなねじりまんぽは見たことがない。

 

 

 

間違いなく我が国でたったひとつしかない珍品だと思われる。

 

 

 

 

 

 

対して、反対側の積み方は

最初からまっすぐに近いような。

 

正直、どうしてこうなってるのか、技術的にどういう状態なのか、わたくしにはさっぱりわからない。ただただ魅了され、幻惑されるのみ。

 

 

 

 

 

 

狼川は改修されて川床も下げられているので、

当然隧道内部も潰されて閉塞している。

 

 

 

 

 

 

内部からの変則的な鉄板の構図。

ここでまた指摘しておきたい。

 

 

 

 

 

お気づきになってたかもだが、

この「たわみ」はなんだ?

 

これが謎すぎるんだなあ。組み煉瓦の状態を見る限り、この隧道のような圧壊寸前の孕みによるものではなさそうなんだが…。でもそうなんだろうか?

 

 

 

 

 

 

不可解。

不可解だらけの隧道だ。

 

 

 

 

 

 

このような変態的土木遺産が、

我が家から歩いて行ける距離にある幸せ。これは得難い(笑)。

 

 

 

 

さて、この狼川隧道、実は反対側の坑口も残っているのだ。

 

 

なので当然、【後篇】に続く。