なんだかんだの石集めと与太話 -2ページ目

なんだかんだの石集めと与太話

鉱物を初めて手にしたのは、小学生の時。それからずっと中断。
2011年頃より、やっと暇になったので、また石の世界へと羽ばたき始めたけど。

0.はじめに

 石油も鉱物と言えるのかどうかわかりませんが。

 日本には、産出量は使用量の1%にも満たない量ですが、石油を産出しています。新潟、秋田が有名です。中でも八橋油田は私が小学生の頃には社会科の教科書に掲載されていました。

 もう10年以上前には私は秋田県の南西部にあるにかほ市住んでいました。にかほも実は昔は石油の産出が知られていましたが、私が秋田に赴任したときには、もう既に産出はなく、赴任以前には駅の隣には石油の集積場(?)があり、駅からレールが敷かれて運んでいたのですが、それもなくなっていました。残念に思いながら、いつか見に行きたいと思って秋田市内に出掛けたのでした。(2010、2011年頃)

 

1.秋田市内の油井の位置

 石油を掘っている、あの機械、なんて言うんでしょうか。もう10年以上前になりますが、秋田市内の住宅地と郊外近くへ出掛けてみてきました。

 秋田市内の油田地帯は、住宅の密集した地域の八橋(やばせ)地区と北秋田ICから秋田市内に向かう道路の両側の外旭川地区にあります。外旭川では、地図を見ながら田んぼ中を歩いて探してみると油井の跡があって、油の臭いが漂う場所を確認することができました。

 八橋(やばせ)、外旭川(そとあさひかわ)には、草生津川(そうづがわ)が流れていて、この川沿いに油田が発達しています。

 草生津は、「くそづ」とも読むらしく、また草水、臭水とも書き、石油がにじみ出てくる事による地名のようです。秋田以外でも草生、臭津などと付く地名が知られていますが、いずれも油田が発達しています。

 石油を採る会社は、今は統合されたらしく、国際石油開発帝石(株)(現在は、(株)INPEX)の産出する場所を巡ってきたのです。もう10年以上前なので、少し状況は変わっていると思いますが、産出は今もしているので、見に行こうと思えば行けるでしょう。

 秋田市内の産出地は、住宅地に本当に近いのでビックリします。当時は、国土地理院の地図に書かれた「」マークを見ながら、秋田市内をウロウロしながら探して油井を見て歩きました。懐かしい思い出です。

 

図1a 秋田市内(外旭川地区)の油井の位置   

   (国土地理院の地図に手を加えた。)

 秋田北インター(地図の北方にある)から市内に入る道路の両側にある油井の位置。外旭川油田。

 赤が2010年当時確認できたところ。橙は未確認の所。田んぼ中の緑は油井の跡の所。石油臭かった。

 

図1b 秋田市内(八橋地区)の油井の位置

   (国土地理院の地図に手を加えた。)

 八橋油田地帯。中央を南北に流れる川は草生津川。この川は外旭川まで続いている。この川沿いが油田地帯。
 赤は、確認できたところ。橙は確認できなかったところ。
 地図の一番下の途中で途切れている、八橋運動公園南側に(東西に走る)通りが県庁通り。運動公園の右隣の役所マークは秋田市役所。道路斜め向かい、運動公園の南側に県庁がある。

 油井は秋田市内の他の場所にもありますが、回り切れていませんで、未確認です。秋田県には他にも採油している場所がありますが、写真がなかったり、写真が行方不明なので表示できません。

 

2.油井の様子

写真の説明はありません。

写真1 八橋地区の住宅地にある国際石油開発帝石の油井

 帝国石油工業所の傍、赤の卵形の所。

 住宅が近いのでビックリした。
 ここでは3つ、この機械が動いていた。

 

写真2 秋田市八橋地区を流れる草生津川

   水の表面に油が浮いているように感じた。

 

3.油井の動画

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 図1aの田んぼ中の緑の地点です。今もあるかどうかですが。

 

 

1.白丸ダムの放流
 白丸ダムの放流がなされているという話を聞いたのはいつのことだったか。早速ネットで調べてみると以下のところにそれが書かれていました。放流は3月初めまでのようです。
 → こちら

 これを見るとダムの上も、鳩ノ巣峡の遊歩道も通行禁止になっていますね。


2.白丸鉱山の赤岩へ

 白丸の産地は書籍に紹介されています(参考2,3)。白丸ダムの放流がなされているということで白丸鉱山の岩場が水面上に露出。これは行ってみないといけない、少なくとも石を採取しておきたいということで早速行ってきました。

 ここの岩はかなり緻密で硬くて、鏨(たがね)を使って叩いても小さい破片が飛び散り、あまり大きい岩片は採ることができません。とにかく固い。防塵メガネは必須ですね。採取した石には目で見えるようなきれいな結晶など当然見当たりません。緻密な岩からたたいたとしてもぜいぜい4㎝程度の薄い訳の分からない小さい破片を剥ぎ取ることができる程度です。
 そしてまた、この岩では採取の最中は陽が当たらないのでとても寒いのです。防寒対策はきちんとしないと寒すぎます。ちなみに奥多摩では、この時期の気温(1月下旬)は最高気温で5℃程度で、最低気温は‐10℃にも達します。防寒対策は必須です。
 

写真1 数馬峡橋を渡って先にある遊歩道案内板

   (ダムへはこの表示板の右方へ進み回り込む。)

 

 さらに現地には行く際には、道を間違えないように。白丸ダムの上は工事のために通行禁止です。なので白丸駅から数馬(かずま)峡橋を渡っていく必要がありますが、渡ってからは右に回り込んで数馬峡橋の下の遊歩道を行くのが楽のようです(参考3)。左の道を取ると通行禁止になっており、それを無視して進むと、どこかで必ず遊歩道に行くために斜面を降りなくてはいけなくなります。左に道は危険を伴うので、行く時には案内板の右方の道を取り、回り込んで進むようにしてください。

 

写真2 数馬峡橋の上から見た白丸ダム湖上流

    (放流されて水がない状態)


 遊歩道を歩くこと20分ほどでダムを間近に見る傍の橋に来るとその下に左側に赤い岸壁が見えます。この岸壁が通称で「赤岩」と呼ばれている目的の産地です。
 

写真3 赤岩が見える橋の上から見る。

 

 この橋の手前の右側から柵を乗り越えて橋の下を通り、急な崖に近い所を滑るので気をつけながら降ります。ダムの放水は寒い時期だけなので、現地の地面は凍りついていますし、急斜面なので気を付けて降りる必要がありました。

 

写真4 下側から見た赤岩

 

3.白丸鉱山の石たち
 白丸鉱山の石には以下のようなものがあります。

 

 ブラウン鉱                  MnMn3+6(SiO4)O8

 多摩石                        

      (Ca,K,Ba,Na)3-4Mn24(Si,Al)40(O,OH)・21H2O

 東京石                          Ba2Mn3+(VO4)2(OH)

 重土十字沸石

             Ba2(Na,K,Ca0.5)(Al5Si11O32)・12H2O

 マースチュー石          NaCaMn3Si3O14(OH)

 曹長石                      NaAlSi3O8

 重晶石                      BaSO4

 キュムリ石                BaAl2Si2O8・nH2O(n=0.5-1.0)

 ストロンチアン石       SrCO3

 ダトー石                    CaBSiO4(OH)

 自然銅                       Cu

 ストロンチアン紅簾石   

                 CaSr(Al,Fe3+)2Mn3+(Si2O7)(SiO4)O(OH)

 ガノフィル石

                  (K,Na,Ca)6Mn24(Si,Al)40O96(OH)16・21H2O

 方解石                        CaCO3

 ベニト石       BaTiSi3O9

などその他たくさんある。

 白丸ダム赤岩の石の特徴としてBa,Srを含む石を多く産出する。そして東京石、多摩石の原産地であることでしょうか。

 で、自分で採集できた石はというと、目視ではさっぱりわからず。友人が紫外線で蛍光する箇所を見つけた(ベニト石かな?)ということだが、私はというと見た目さっぱりわからないので、いまだ整理もしておらずです。

 参考に、東大の電子顕微鏡室(参考4)には種々の鉱物写真が解説と共にあるのでそちらを見てくださいv(^^;;;。

4.おまけ

 寒い中でも硬い石を一生懸命叩いたので、帰りは気分はスカッとしていました。あまり採集の成果があったとは言えなかったけれど。

 帰りがけは、同行の人がダムカードがもらえるよと教えてくれ、松原先生も自慢していたとのことで、白丸ダムの60周年のラメの入ったダムカードをダムの下流にある旅館「鳩ノ巣荘」でもらってきました。ダムカードをもらったのは初めてですが、これからもらうかというと怪しい感じです。

 

5.参考
1.白丸ダムの放水については以下のところへ
 → こちら

2.草下英明,鉱物採集フィールド・ガイド,p87-90,草思社(1982)
3.松原聰,鉱物ウォーキングガイド,p86-91,丸善(2005)
 松原聰,鉱物ウォーキングガイド関東甲信越版,p98-103,丸善(2012)

4.浜根先生の東大顕微鏡室のサイト
 白丸鉱山の石については → こちら

 

 

 

0.はじめに

 東北採集旅行の最後の紹介(其の参)がすっかり忘れる気味で、もう2か月が経過していますが、一応書いておかねばと思います。

 

 東北採集旅行で最後に訪ねたのは、田野畑鉱山です。田野畑鉱山では、1抗から4抗まであったようですが、1抗と4抗は小規模で坑道は崩落し不明(参考3)で、現在は2抗と3抗のズリが残っています。2抗がコイコロベ沢3抗が松前沢に該当します。松前沢は東日本大地震の前後で訪ねたことがありますが、今回は2抗の方でした。

 

 田野畑村もそうですが、三陸では大地震後の被害がひどく、その後に復興事業で特に道路が様変わりしています。田野畑村で目立つ思惟大橋や道の駅辺りは印象が随分変わった感じでした。

 

1.田野畑鉱山の位置

 田野畑鉱山の位置は、参考1,2,3などに示されています。参考に鉱山付近の航空写真を掲示しておきます。正確な位置は全然わからないでしょうけど。

 ちなみに道の駅の辺り、思惟大橋の付近の雰囲気は10年前と変わりました。道の駅は立派になったし、駐車場も広いし、って昔の姿をよく覚えていませんが、変わったなと。島越駅方面の道への取り付けも変わったような。

 

写真1a.田野畑鉱山付近の地図1(Google Mapから引用)

 海側の島越の家々が海岸すぐのところから内陸に移動したのがわかる。

 

写真1b.鉱山付近拡大(Google Mapから引用)

 

 松前沢の3抗の方は、上の写真の松前沢と書かれた辺りから

入っていきますが、Google Mapで見てみると入り口がよくわかりません(^^;;;。コイコロベ沢(2抗)の方は、その入り口近くには道路の上に道の駅の案内板があるのですぐわかります。

 3抗の方は、東日本大地震の前後で訪ねたことがあります。2抗の方も以前に訪ねようと探しましたが、地図が不正確でよくわからずじまい、また時間もなかったので、この辺だろうと思ってましたが、今回の訪問によって確認でき、当時の推測した入り口は間違っていませんでした。

 車は下の写真2を撮っている後ろの空き地に駐めて、ここを入る。目的地は、私が思った以上に深い谷になっていて木々がよく繁っているので、なんとなく湿っぽく薄暗い感じの所でした。

 

写真2 田野畑鉱山2抗への入口(Google Mapから)

  入ってすぐ左に下る。

 

2.田野畑鉱山で採集できる石

 田野畑鉱山はマンガンを目的とした鉱山ですから、マンガン鉱物が主体です。当然ながら黒くて堅い石がたくさんある。硬い石を叩き割っての採集となる。鉱物としては、ピンク色のバラ輝石、オレンジ色のソーダ南部石、黒褐色の神津閃石、黄褐色で雲母のような吉村石、緑鮮やかな鈴木石も採集できるというが、それらは難しいだろう。他にカリフェリリーク閃石(赤褐色)、わたつみ石(小さな粒状で黄緑色)、田野畑石なども見つかっている。

 神津閃石は、最近分類が変わったようで、Mangano-ferri-ekermanniteとなりましたが、和名は維持されるようで。

 

 以下に田野畑鉱山の代表的産出鉱物を一部書いておきます。

  ブラウン鉱        MnMn3+6(SiO4)O8

  バラ輝石           CaMnMn3Si5O15

  ソーダ南部石      (Na,Li)(Mn,Ca)4Si5O14(OH)

  神津閃石           NaNa2(Mn4Fe3+)Si8O22(OH)2

  カリフェリリーキ閃石

           (K,Na)Na2Mg2Fe3+2LiSi8O22(OH)2

  わたつみ石         KNa2LiMn2V4+2Si8O24

  鈴木石               Ba2V4+2O2Si4O12

  田野畑石            LiMn2Si3O8(OH)

  セラン石    NaMn2Si3O8(OH)

  吉村石       Ba4Mn4Ti2(Si2O7)2(PO4)2O2(OH)2

 

     cf.(こちらは、田野畑石、セラン石の参考に)

   バスタム石  (Mn,Ca)3Si3O9

   ペクトライト NaCa2Si3O8(OH)

   珪灰石    Ca3Si3O9

 

 一覧を見てくると、バラ輝石と南部石神津閃石~フェリリーキ閃石田野畑石とセラン石と類似鉱物が多いので、採集、判定はかなり難しいなと感じます。殊に田野畑石とセラン石なんて、珪灰石の仲間で、繊維状でcfに書いた鉱物にあまりに類似している。当然私のような素人に区別は難しいわね。

 ちなみに田野畑石の発見の経緯が参考7に示されています。鉱物同志会の創設者、故堀秀道氏の石を見る目、洞察力が新鉱物の発見の契機となっていったようです。その違いを見分ける能力を身に着けたいものだね。

 

 で、あなたは何を採集できたかと尋ねられると、答えに困窮してしまいます。なんとか、バラ輝石、吉村石は採集できたかと思いますが、他ははっきりしません。この間から何回も見ていますが、採集途中で腹が痛くなって、車に戻ったのでたくさんの石は採集しませんでしたので、角閃石の類はあまり期待できません。褐色の石は見られるけれど、なんだろうなあというレベルでお手上げです。柘榴石なのかもしれませんが、形がはっきりしていませんから断定はできません。

 

3.田野畑鉱山の採集確認できた石

 以下、石の写真です。緑色の石が欲しかったなあと。

 

写真3 吉村石かな

  雲母っぽく板状に黄褐色見える部分がそうかと。

 

写真4 柘榴石

 粒状の部分。石を割ると時折、このようにコロっとしたものが出てくる。かなり綺麗だ。矢印の方向がずれてますが。

 

写真5 下側のピンク部がバラ輝石で、上側の橙色は南部石ではないかと。

 

写真6 黒色粒状の部分はブラウン鉱かな。中央の黄褐色は柘榴石と思う。

 

写真7 セラン石であるといいな。

  セラン石、田野畑石は珪灰石の仲間だ。

 

写真8  セラン石であると思う。

  写真5と同様な感じだ。

 

写真9 フェリリーク閃石かな

 ピンク色の中に赤っぽい針状のものがたくさん見える。濃黒緑色の部分に神津閃石があるかもしれない。

 

写真8 フェリリーク閃石かな

 写真7と同様。ピンク色の中に赤っぽい針状のものがたくさん見える。濃黒緑色の部分に神津閃石があるかもしれない。

 

写真10 フェリリーク閃石かな。カリリーク閃石も産出しているので、もしかしたらそれかもしれないが。産出状況は同じだろうと思う。

 

4.おまけ

 田野畑鉱山での採集には、東日本大地震の前後で行ったことがあります。いずれも松前沢での採集で、採集後は島越駅の方に出て、海岸沿いを走り帰ってきました。
 最初の大地震の前の採集後に、島越の駅のそばに来ても運転する車から島越の駅は見えず、もう駅だよなあと思いながら、狭い道を走って駅前に着いた覚えがあります。
 次に訪ねたのはその約1年後くらいで、島越の駅前に来ると家がすっかりなくなり、駅のそばに立つと高い位置にある家が2,3軒残っていただけで、その変わり果てた様に驚いたと同時に悲しい思いになったのを思い出します。

 今はだいぶ復興が進んだようですが、心の中までは復興が進んでいないのではないかと思います。内陸と海岸沿いでも大きな違いがあるような感じがしました。

 

 今回は、自分の車を使って鉱物情報の観察会に参加しました。が、私の車のナビは、既に2年以上前に完成した三陸沿岸道路を全然表示しないものでした。ナビはネットに繋がってデータなどのバージョンアップはしてくれるはずなんですが。そんなで道案内は助手席に乗った人がスマホを使って案内してもらいました。おかげで助かりました。ただ、私の車は自分のスマホと接続できて、車のナビにgoogleのナビが表示でき使えるが、そのことをすっかり忘れてました。が、ケーブルをそのときはなかったのでそれもできませんでしたが。これはちょっと余計なお話でした。こ

 

 話変わって、「コイコロベ」って地名変わってますね。コイ・コロ・ベは(うねり・ある・場所)という意味で、アイヌ語からきているようです(参考8)。この辺りにも昔はアイヌの人たちが住んでいたんでしょうね。

 

5.参考

1.松原聰,日本の鉱物,p248,学習研究社(2003)

2.日本鉱物倶楽部,地球の宝探し-全国鉱物採集ガイド,p28-29,海越出版(1995)

3.高橋維一郎、南部松夫,新岩手鉱山誌,p178-181 東北大学出版会(2003)

4.松原聰,日本産鉱物種 第8版,鉱物情報(2023)

5.H.Strunz、E.H.Nickel,Strunz Mineralogical Tables 9th ed.,Schweizerwart(2001)

6.M.E.Back,Fleischer's Gllosary of Mineral Species 12th ed.,The Mineralogical Record Inc.(20018)

7.長瀬敏郎,岩石鉱物科学,v43.p37-39(2014)  

  → こちらからいけます

8.田野畑の地学関連は以下を参考に

  → こちら

 

 

 

 

 

1.はじめに

 ポクロフスキー石孔雀石は類似した結晶構造を持っています。それは化学組成からも推定できます。

 

孔雀石 Cu2CO3(OH)2

ポクロフスキー石 Mg2(CO3)(OH)2

 

 孔雀石はあちこちで産出が報告されているのに対して、ポクロフスキー石は国内の産地は福岡県の古屋敷が知られているだけです。また、これはアルチニ石など組成的に類似した鉱物がありますが。ちなみにポクロフスキー石に似た組成のものに以下のものなどがあります。

  アルチニ石 Mg2(CO3)(OH)2・3H2O

  水苦土石、Mg5(CO3)4OH)2・4H2O

  ダイピング石  Mg5(CO3)4 (OH)2・5H2O

 

2.孔雀石の結晶は

 で、孔雀石は誰もが知っている鉱物です。緑色の結晶が樹枝状に、また葡萄状に集合した結晶は美しくよく知られています。特に層状になった塊はその縞模様が魅力で装飾品として、また、綺麗な緑色は岩絵の具などの顔料として用いられています。結晶は、柱状、針状、繊維状、放射状、皮膜状、球状、腎臓状などが知られているが、単結晶がはっきりわかる物は非常に珍しく、ほとんどみかけません。

 

 孔雀石は、銅鉱床の酸化帯で見られ、珪孔雀石、ブロシャン銅鉱、藍銅鉱、赤銅鉱、方解石などと共存して一緒に観察される事が多い。特にブロシャン銅鉱や擬孔雀石などとは色が同色でなかなか区別が難しい。しかし、孔雀石は10%の塩酸で発泡して溶解する点で、これらの鉱物と区別できる。ブロシャン銅鉱と擬孔雀石では、色が消失して溶けてなくなるだけで泡は発生しない点で孔雀石と異なる。

 

 孔雀石は、よく銅が錆びた成分と同じなどと言いますが、正確には違うでしょう。一部には含まれているというのが正確で、錆は銅の腐食したいくつかの化合物の混合物と見るのが正しいでしょう。

 

 錆びのことは置いておいて、孔雀石は、炭酸銅CuCO3と水酸化銅Cu(OH)2が結合してできた物質と見ることができます。孔雀石としばしば共析し、銅の鉱物で有名な物に藍銅鉱があります。こちらは炭酸銅CuCO3の2分子と水酸化銅Cu(OH)2の1分子が結合してできた物質とみることができます。

 孔雀石は藍銅鉱から生成すると書かれています。地球環境には水がたくさんあるので、水酸化銅ができやすく、それが藍銅鉱と反応して、孔雀石になるのかな。どなたか孔雀石は藍銅鉱から生成する理由が書かれた文献やそれがうまく説明できるデータがあったら教えてください。

 

 ところでよく知られた孔雀石ですが、いったいどんな結晶構造で原子の結合はどうなっているのかなと思い調べてみると、以下の本に掲載されていました(参考1)。

 これを見ても図が平面で書かれ、また構造がかなり複雑で私には構造がどうなっているのかよくわかりません。もうちょっとわかりやすいものはないかと、孔雀石の結晶構造をネットで調べてみるとありました。産総研のHPの結晶構造ギャラリーで。

 

 よく知られた孔雀石ですが、かなり複雑な結晶構造になっています。化学組成を考えると、繰り返しになっているのが見えて来るはず。図は、上下で点対称になっているのはわかります。それから、う~ん、私にはすぐにはなかなか見えてきません。Cu(1)では、異なったCO3のOが4つとOHが2つが八面体の配位し、Cu(2)では異なったCO3のOが2つとOHが4つがこちらも八面体の配位して、2つの八面体がCO3のOとOHを共有しているようで。けど、うーん、化学組成式での原子の数がなかなか合いません。三次元で考えないといけないのかな、当たり前ですが。

 頭がこんがらがってしまったので諦めて。で、やっぱりこんな複雑な構造だから、はっきりした結晶の物がなかなか見かけないのもわかるような気がする。それに結晶構造と石として見える外見もちょっと違うからなあ。(結晶構造がわかっても、結晶の形が見えにくいってことです。)

 

 孔雀石の三次元の結晶のパソコンでの表示は、産総研のホームページを見ると分かりますが、CIFデータを利用し、泉富士夫氏や門馬綱一氏によって開発されたソフトウェアVESTA(参考6)を利用すると表示が可能で回転などもできます。結構面倒で専門知識が必要です。やった方はご教示ください(^^;;;。ちなみに門馬綱一氏は千葉石などを発見された方です。

 

 結晶の形を見るのはmindatがいいかな、回転も自在ですから。孔雀石の例を下に挙げておきます。結晶構造と結晶の形がわかりやすいです。

 (→ こちら、下の方にあります。)

 結晶構造の表示と結晶の形の表示の違いに驚きますね。

 

 話変わって、化学組成成分が似ている藍銅鉱では、“共立全書”(参考1)の同じページに結晶構造図も。こちらは比較的簡単でわかりやすい。が、容易に結晶の形態までが見えてこない。困ったと思いながら、あちこち本を眺めていたら、次の本(参考4)で見つかった。

 

 孔雀石とよく似ていて、初心者には区別が難しいブロシャン銅鉱の結晶の図は、こちらは意外と簡単な構造のようで、“共立全書”(参考1)のp130には説明があり、“結晶形態”(参考4)のp108には図が掲載されている。実際、ブロシャン銅鉱の結晶は顕微鏡で綺麗な結晶を見ることができる。

 

 これを書いてきて、三川鉱山で採集した綺麗な孔雀石をまた観察しようと思ったら、すぐに見つからない。整理が悪いのでどこか箱の隅に行ってしまったようで。片割れは誰かと交換してしまったしなあ。よく似た写真が写真集(参考3)にあります。採集したときには、足元にあった石ころをハンマーで強くたたいたら、二つに割れて、水晶の晶洞の中に褐鉄鉱の茶と孔雀石の緑が対照的で非常に綺麗です。是非本を探して見てください。(^^;

 

 結局、孔雀石、藍銅鉱、ブロシャン銅鉱、いずれも単斜系の結晶構造を持つが、一番複雑なのは孔雀石で、藍銅鉱、ブロシャン銅鉱は孔雀石より簡単。なので、結晶した物も見られやすいのだろうということかな。

 

 孔雀石の結晶がなかなか頭の中で描けないことは既に書きました。が、softwareの「デジタル鉱物図鑑」(参考5)を使うと簡単に表示できました。今は入手ができませんが。結晶の表示は「結晶プログラム」でもできます(→ こちら)

 ただ、原子の位置がいったいどうなっているのかが、いまだよくわからずですが。なにかまとまらん文章になってしまったな。

 

3.孔雀石の写真

 で、仕方がないので、最後に荒川鉱山などでで採集した孔雀石の写真を。

 

写真1a 孔雀石(Cu2CO3(OH)2、秋田県亀山盛鉱山産)

 

 

写真1b 写真1aの一部拡大

 

写真1c 写真1aの一部拡大

 

 

写真2a 孔雀石(Cu2CO3(OH)2、秋田県荒川鉱山産)

 

写真2b 写真2aの一部拡大

 

写真2c 写真2aの一部拡大

 

 

写真3a 孔雀石(Cu2CO3(OH)2、新潟県三川鉱山産)

 

写真3b 写真3aの一部拡大

 

写真3c 写真3aの一部拡大

 

 

写真4a 孔雀石(Cu2CO3(OH)2、秋田県亀山盛鉱山産)

 

写真4b 写真4aの一部拡大

 

4.参考

1)桐山良一,構造無機化学 Ⅲ,p111,共立出版(1978)

2)産総研のHP、結晶構造ギャラリーで孔雀石の結晶表示ができます。以下のところです。→ こちら

3)関東と周辺の鉱物 -創立30周年記念写真集-,鉱物同志会, p239,(2017)

4)高田雅介,国産産鉱物の結晶形態-高田鉱物標本・結晶図集-,p86,(2010)

5)softwareの「デジタル鉱物図鑑」は以下のサイトへ。

    → こちら

 最新バージョンは5.12です。今は公開を停止し、入手できません。デジタル鉱物検索が検索のためにあります。「デジタル鉱物検索」は以下の所から。最新はver4.38です。

 → こちら

6)VESTAのダウンロードなどは以下のサイトに

 → こちら

 ちなみに泉富士夫先生は、日本でのX線回折などのリートベルト解析の第一人者です。以下にサイトがありますので、興味ある人はご覧ください。

 → こちら

7)孔雀石の結晶の形を確認しましょう。それにはmindatのサイトへ → こちら (双晶の表示しかありませんけど。)

 結晶の表示は「結晶プログラム」でもできます。

   → こちら

 

 

 この本は、いつの間にか高価な本になってしまいました。

 

(この記事は、facebookに書いた記事に加筆したものです。)

 

1.前書き

 先日は、夜になって面白いテレビ番組もないし、ってことで石の整理を寝る前に始めてそのまま夢中になってしまって朝近くまで石を眺めてました。普段ボーッとしているのは体調が悪いこともありますが眠いせいでもあります。

 整理していた中に、購入した石で、「あれ?化学組成が書いてない!」というものがあって、自分でもよくわからない石で、購入した割に値段が高い物がありました。セグニット石!栃木県の野門鉱山産のものです。

写真 セグニット石(野門鉱山産、購入品)

 

2.セグニット石って

 「何じゃこりゃあ」と叫びはしませんが、心の中で叫び、手元にある松原先生の書いた「日本産鉱物種」(参考1)で調べると「あれれっ、ないない!どうして?」と思い、ネットで調べるとちゃんとありました。しかも日本で最初の報告(参考2)は、松原先生が遠ヶ根鉱山産のもので。そちらは「セグニット石」と書いてありますが、鉱物種の方では「シグニット石」でありました。松原先生は読み方を変えられたんでしょうか。外国で最初に発見された鉱物では、和名表記がしっかり統一されていないようなことがしばしばありますけどね。

 

 そして化学組成では、鉱物種の6版では、PbFe3H(AsO4)2(OH)6のように書いてありますが、7版の方では、PbFe3[(AsO3.5(OH)0.5]2(OH)6となっています。「ん?何が変わってそうなったの」と疑問が。暫く疑問は置いておくとして。

 じーっと化学組成を眺めているとセグニット石は、

PbFe3(AsO4)2(OH)5・H2Oとか

PbFe3(AsO4)2(OH,H2O)6

書いても良さそうな感じ。後で文献2を読むと前者のようにも表記されると書いてありました。

 

3.文献を見ての面白い事

 文献2を読んでいて面白いのは、1990年にやはり遠ヶ根鉱山産のフィリップボーン石(PbAl3(AsO4)2(OH,H2O)6)を松原先生らが報告していること。そして、セグニット石の世界最初の報告が1992年であり、同じ遠ヶ根鉱山産のセグニット石の報告を1997年に松原先生らがしていること。

 その文献(参考2)を見ると、電子顕微鏡を用いた後方散乱電子像(参考4)があって、フィリップスボーン石を覆うようにセグニット石が析出している。その二つの鉱物は固溶体を形成する可能性があるが、累帯構造をしているけれど、連続に組成が変化しているわけでなく、その境界ははっきりしているから、初期にフィリップボーン石が出来て後からセグニット石が出来たと判断できるとある。

 1990年の文献3を見ると、フィリップボーン石の断面のBEI(これについては参考4で)の写真が示され、「外側が鉄が多い」とまで示されている。なにそれえ!1990年の時に既にセグニット石の存在が暗示されていたんですね。と言うことは、松原先生は世界最初のセグニット石の報告をし損じてしまったってことなのかな。あれまあ。まあいくつも新鉱物の発見をしている先生だから一つくらい見逃してもたいしたことでもないのかな。

 

 文献2や3には遠ヶ根鉱山で産出される鉱物が多く書かれている。「砒鉄鉱、硫砒鉄鉱、鉄重石が、磁鉄鉱、錫石などを伴って産出。トパーズ、針鉄鉱、黄鉄鉱、黄銅鉱、閃亜鉛鉱、方鉛鉱の他、二次鉱物としてスコロド石が優勢で、銅藍、ブロシャン銅鉱、毒鉄鉱、ビューダン石、フィリップスボーン石などが見つけられている」とある。

 

4.鉱物組成を考えると

 さて、鉱物組成に話を戻して、実は、セグニット石とフィリップボーン石の関係は、セグニット石中のFeをAlの置き換えるとフィリップスボーン石になる。フィリップスボーン石のAsO4がSO4に一つ置き換わるとビューダン石になってしまう。さらにビューダン石のAlがFeに置き換わるとイダルゴ石になる。

 

 まとめると次のようになる。

セグニット石 (PbFe3(AsO4)2(OH)5・H2O)

 (FeAl)に置換すると

  → フィリップボーン石 (PbAl3(AsO4)2(OH)5・H2O)

さらに(AsO4SO4)に一部置換すると

  →イダルゴ石(PbAl3(AsO4)(SO4)(OH)5・H2O)

またさらに(AlFe)置換すると

  →ビューダン石 (PbFe3(AsO4)(SO4)(OH)5・H2O)

 ふう、ちょっと類似の鉱物がたくさん出てきて、ゲップが出てきてしまうわあ!

 

5.まとめ

 さてまとめておくと

 ①セグニット石はシグニット石とも言う

 ②松原先生は、セグニット石の最初の報告を逃したらしい

 ③遠ヶ根鉱山では、砒鉄鉱、硫砒鉄鉱、スゴロド石など砒素を含む鉱物を多く産出

 ④セグニット石と類似の鉱物を覚えたわい

 

 写真は、遠ヶ根鉱山のものではなくて、栃木県野門鉱山産のもの。XRD測定によってコニカルコ石(CaCu(AsO4)(OH)が混在しているらしいことがラベルに書かれている。肝心のセグニット石は中央部の黄緑色から黄色の箇所。

 

6.参考

1)松原聰,日本産鉱物種 第7版,鉱物情報(2018)

2)松原,松山,鉱物学雑誌,26,181-184(1997)

3)松原,加藤,神谷.地学研究,39(2),101-105(1990)

4)時には反射電子像とも言うことがある、BEIと表記する。

 通常、プローブとして試料に電子を当てた場合、後方散乱電子は原子番号が大きい元素ほど多く(強く)検出される。すなわち原子番号が大きい(正確には電子の数が多くなる)元素のあるところほど白く、原子番号が小さい(軽い)元素ほど検出されにくくなるので、黒に近い像となって写真に表現される。

 今回は、元素分析でAl,Feが検出されているので、走査電子顕微鏡(SEM)でBEI像を観察した場合、軽いAlの部分が重いFeに比し電子の数が少ないから反射が少ないので黒っぽく写る。なので、中側が黒っぽく外側が白く写ったので、中側にAlが外側にFeが存在していると判断できる。

 微小領域の分析を行った時にAlとFeのように原子番号が異なる元素が同時に検出された場合がしばしばありうる。そんな場合にSEMでのBEI像の観察は、部分的にさらに組成に違いがないかを調べる方法として用いられている。

0.長い前書き

 昨年は家にいるとぼーっとすることが多くて、大晦日になって、あれ今日って大晦日だわと慌てる始末。その前に何気に適度に掃除したからいいけど、年賀状を作るなどをいくつか忘れてしまう始末で。まあいいかって過ごせてしまうものばかりだからいいけど。

 

 年末の夜には例年のように近所の神社に出かけて2年参り。その後、除夜の鐘が鳴る中、以前に行ったちょっと遠い神社も行ってみるかと思って暗い夜道を歩いて行ったけど、どこにあるかわからなかった。以前には甘酒をふるまってくれる人もいたから灯が付いていて簡単にわかったのだけれど、この角を曲がればと思ったら、そこには何もなく暗い林があっただけ。以前は狐か狸に化かされてしまったのだろうかと思いながら帰ってきた。2時間ほど歩き回って帰ってきたので、腹減ったわと思いながら、きな粉餅を用意して炬燵にあたりながら食べたら、炬燵に潜り込むように疲れて眠ってしまった。

 

 という新年早々の行いだったけれど、こんなで今年もマイペースで行きたいと思います。今年もよろしくお願いします。

 

 元旦の昼を過ぎた頃にいつもながらにぼーっとして起きたら、あれもう昼過ぎてるわと慌てて着替え、部屋の隅にある箱が気になって開けたら、湯ノ沢鉱山の石たちが。久しぶりに気が付いてくれよと言ってきたような。で、早速箱を開いて、お節も食べずに新年早々に石を眺める。

 石を見ていて2時間ほど経っていたから疲れてめまいがしてきたのかと思ったら、北陸、能登で大地震があ。新年早々とんだ災難が。皆さん無事でいられますように。

 

1.眺めた湯ノ沢鉱山の石たち

 湯ノ沢鉱山の位置については以前に書きました。参考に。

→ 青森県、湯ノ沢鉱山での採集 

 

 まあ、行っても不毛な産地になってしまっていますし、坑道に入るのは水が滴り落ちていたりしており、崩れやすいので危険です。絶対入らないでください。

 

 湯ノ沢鉱山の鉱物と言えば、津軽鉱ヨルダン鉱グラトン鉱、ウルツ鉱が有名です。いずれもレアな鉱物で所有している人も少ないはず。けれど今回はそれらでなく、普通に採れるもので。また今回の石たちの採集場所は、坑道やズリでの採集ではなく、ここから少し離れた場所で、硬い岩盤を叩いて採集したものです。

 


写真1 方鉛鉱(PbS、青森・湯ノ沢鉱山産、2012年11月採集)

 ちょっと腐食気味で汚いけれど、八面体がわかる。

 

写真2 方鉛鉱(PbS、青森・湯ノ沢鉱山産、2012年11月採集)

 八面体の方鉛鉱がいくつも見える。普通立方体の場合が多いのに。

 

写真3a 方鉛鉱(PbS、青森・湯ノ沢鉱山産、2012/11採集)

 八面体の結晶が少し埋もれて見える。

 

写真3b 写真3aの試料を別角度で撮影

 写真では黒くなってしまったが、八面体がわかる。

 

写真4 黄鉄鉱(FeS2、青森・湯ノ沢鉱山産、2012/11採集)

 黄鉄鉱の八面体が集まってる。

 

写真5a つまらない石(実はウルツ鉱)、青森・湯ノ沢鉱山産

    2012/11採集)

 

写真5b 写真5aの石

 つまらない石だなあと思って、紫外線ライトを照らしてみると、橙色に光るわ。なんだろうなあ。少し水色に光る所も。あとで調べてウルツ鉱という結論に。

 

写真6a 写真5のつまらない石を裏返してとってみた。

 

 

写真6b 写真6aの石に紫外線ライトを照らしてみると水色に光る。よく見てみると玉滴石があった。

 

2.おまけ

 で、紫外線ライトで橙色のところを拡大してみるとなにかコケライトのように見えるし、さらに別の試料をいくつも見ると紫外線ライトで橙色に光る石が他もある。いろいろ眺めてみると新しい断面も光るところがある。湯ノ沢鉱山で紫外線ライトを当てたら光るという話、そんな話聞いたことがない。また玉滴石があるなんて聞いたこともないよなあ。

 とにかく方鉛鉱がどの石にもついているね。それにしても六面体の方鉛鉱が少なくて、八面体の方鉛鉱が多いし、黄鉄鉱まで八面体でびっくり。

 と、新年早々に驚きの観察でした。

 

 ほんとは、湯ノ沢鉱山の石として、津軽鉱ヨルダン鉱グラトン鉱を示したかったのですが、そちらは別の機会に。どこかでアップした写真があったような気がするけど、忘れてしまったので。

 

 で、東北遠征(参)はまだ書きかけ。いつアップできるかなあ。

 

(追補記 2024/1/4)

 あの紫外線ライトで光るものは何だろうと思いながら、今日は 残りの湯ノ沢鉱山の石を眺めていると、ウーム、これはもしかしたらウルツ鉱ではないかと思い始めて、ネットで調べたら出てきました。

 Wurtzite(ウルツ鉱) (fc2.com)

 このサイトには、最後に湯ノ沢鉱山のウルツ鉱が橙色に光るとありました。なので、ウルツ鉱に変更しました。閃亜鉛鉱もも同様に紫外線ライトで光るらしいですが、紫外線を当てないときの色が大概の場合、あんな色していないはずで、ウルツ鉱の方が近いので。

 

 

 この石は、2012年の夏に採集したものです。秋田は、特に阿仁では熊が多いので有名なところで、熊牧場なんて言うのもあります。数年前に人がなくなる事故がありましたが。そんな地域でなので、怖いけれど採集は一人でした。

 

 小沢抗付近にはいくつかの坑道があって、それぞれ名前が付いています。小沢坑は総称なのかな、いくつか坑口があったらしいです。精錬所に行くには途中で左の道を通る必要があります。小沢精錬所の道に入らず、その先に進み、さらにずっと奥には阿仁スキー場もありますが、私が行ったときは夏で閑散としていました。

 

図1 秋田県・旧阿仁鉱山小沢抗付近の現在の地図

   (国土地理院の地図から)

 

写真1.阿仁小沢鉱山付近の航空写真(Google Mapから)

 この写真では、小沢鉱山の精錬所跡の位置が違ってます。

 国道と表示の中間付近にその遺跡はあります。

 

 写真の阿仁小沢鉱山と表示がある沢沿いにある道を北上すると沢を渡った所に坑口らしきものがあり、その前で採集したことがありますが、1年後くらいに訪ねた時には、沢が氾濫したのか工事がなされてその辺の石は全くなくなってしまっていました。

 小沢精錬所跡がそばにありましたが、一度だけ見に行きました。精錬所跡の周りをうろつくことなく、前の広場で写真を撮っただけでした。(写真を撮ったはずが見つからないので見つけ次第掲載します。)

 

 石の採集はそこから少し離れたところで、ボヤっとしていると見逃してしまうような場所で、そこはズリじゃないだろうけれど、1m四方くらいのところに腐りかけた石がたくさん転がっていたのでそこで採集しました。

 

 以前にブログで阿仁鉱山の閃亜鉛鉱を2回紹介しましたが、それらも同じところでの採集です。

 

 閃亜鉛鉱(阿仁鉱山)、再び | なんだかんだの石集めと与太話 

 

 閃亜鉛鉱(ZnS,阿仁鉱山産) | なんだかんだの石集めと与太話 

 

 今回は黄銅鉱です。採集場所では腐りかけた閃亜鉛鉱が目立ちました。閃亜鉛鉱、黄銅鉱、黄鉄鉱が混じった石が転がっており、時折方鉛鉱が見られるくらいでした。今回の黄銅鉱は、閃亜鉛鉱が主体でそれに黄銅鉱も付いてるもので、黄銅鉱結晶が晶洞中に三角になって見えています。

 

写真2 黄銅鉱(CuFeS2、秋田県阿仁鉱山産、2012年採集)

 

写真3 写真2の一部拡大

 写真2とは上下反対ですが。大きい三角っぽく見えるものの辺が約3㎜です。その左にも三角形が。さらにその左にもあります。ちょうど三角錐の頭の方から写っているので判りにくいかもですね

 10月末に鉱物情報の観察会があってそれに参加した。マンガン鉱山を回ったが、フェリリーク閃石やら、神津閃石の産地であり、角閃石の仲間を見ることになった。が、黒っぽいものばかりでよくわからないわというのが本音。

 で、よくわからないけれど、「なんちゃら閃石」ってどんなものがあるのかということで、FleischerやStrunzを開いて聞いた覚えがある角閃石類のリストを拾い出してみた。備忘録として。

 

1.直閃石                   □Mg2Mg5Si8O22(OH)2  直方

2.カミントン閃石       □Mg2Mg5Si8O22(OH)2  単斜

3a.鉄緑閃石              □Ca2(Mg,Fe)5 Si8O22(OH)2  

             (ただしMg/(Mg+Fe)<0.5)   

3b.緑閃石                 □Ca2(Mg,Fe)5 Si8O22(OH)2  

             (ただしMg/(Mg+Fe)=0.5-0.9)

3c.透閃石                 □Ca2(Mg,Fe)5Si8O22(OH)2   

             (ただしMg/(Mg+Fe)=0.9-1.0)

4.エカーマン閃石       NaNa2(Mg4Al)Si8O22(OH)2

5.アベルゾン閃石      NaNa2(Fe2+4Fe3+)Si8O22(OH)2

6.リーベック閃石        □Na2(Fe2+3Fe3+2)Si8O22(OH)2

7.藍閃石         □Na2(Mg,Fe2+)3(Al,Fe3+)2Si8O22(OH)2

8.エデン閃石             NaCa2Mg5(Si7Al)O22(OH)2

9.普通角閃石            □Ca2(Mg,Fe2+)4Al(Si7Al)O22(OH)2

10.パーガス閃石       NaCa2(Mg4Al)(Si6Al2)O22(OH)2

11.タラマ閃石            Na(NaCa)(Mg3Al2)(Si6Al2)O22(OH)2

12.定永閃石              NaCa2(Mg3Al2)(Si5Al3)O22(OH)2

13.リヒター閃石         Na(NaCa)Mg5Si8O22(OH)2

14.へスティング閃石  NaCa2(Fe2+4Fe3+)(Si6Al2)O22(OH)2
15.フェリリーク閃石 NaNa2(Mg2Fe3+2Li)Si8O22(OH)2

16.プロト直閃石   □Mg2Mg5Si8O22(OH)2

 

 角閃石の仲間にはまだ他にもたくさんあります。Fleischerを開くとたくさんの角閃石が出てきてビックリします。その中にはまだ見つかっていないものもたくさんあります。見つかっているのは100弱個であるようです。

 最近、田野畑鉱山からまた新たに日本新産の角閃石類(amphibole)、ウンガレッティ閃石(NaNa2(Mn2Mn3+3)Si8O22O2)が見つかっています(参考4)。

 で、上の一覧を見ると直閃石とプロト直閃石の違いは何でしょうか。両方とも結晶系は直方晶なのですが、a軸の長さが直閃石は、プロト直閃石の倍程度であるので、繰り返しの単位が異なっているのかな。

 って、よくわからない、まとまらないので、角閃石の一般式を書いておきます。

 

角閃石類の一般式

  AB2C5T8O22W2

    A = □,Na,K,Ca,Pb,Li

    B = Na,Ca,Mn2+,Fe2+,Mg,Li

    C = Mg,Fe2+,Mn2+,Al,Fe3+,Mn3+,Ti4+,Li

    T = Si,Al,Ti4+,Be   

 W = OH,F,Cl,O2-

 (価数が限定される元素では価数を書かないのが、鉱物の世界では普通のようで。Si4+,Al3+→Si,Alなど。)

 

 角閃石類は、A,B,Cの元素のところでトータルの価数が+15~17になる構成なんだね。TがSiだけ(Alが入ってこない場合) だと16が本来なのかなあ。

 

写真 フェリリーク閃石

       (NaNa2(Mg2Fe3+2Li)Si8O22(OH)2,岩手県舟子沢鉱山産)

  赤黒い針状のもの

  リチウム(Li)が含まれるのがリーク閃石の特徴かな

  (フェリ → Fe3+、フェロ → Fe2+)

 

参考

1.松原聰,日本産鉱物種 第8版,鉱物情報(2023)

2.H.Strunz、E.H.Nickel,Strunz Mineralogical Tables 9th ed.,Schweizerwart(2001)

3.M.E.Back,Fleischer's Gllosary of Mineral Species 12th ed.,The Mineralogical Record Inc.(20018)

4.浜根他,鉱要,R1P-11(2022)

 えっ!桜、今の時期に何言っているの!って人も多いと思いますが、私の家の庭では、毎年9月から12月ころまで桜が咲いていました。

 今年は先月に見たような気がするが、玄関でチラッと見ただけで写真も今年は取らなかったので、あまりはっきり覚えていません。12月の頭にじっくり見た時には全然咲いてませんでした。今年は異常気象のせいか、この冬も昨日は夏日に近い気温で。私は頭痛がひどくて横になったり、本を読んだり、パソコンの中身のファイルの整理をしていたりで、家の中に籠っていましたので、あまり暑さは感じませんでしたが、暖房が入れる必要がなかったのは感じてました。今年はまだしっかりこの冬に桜を見ていないのでちょっと寂しい感じです。

 

 今の時期に桜が咲いているといえば、群馬県藤岡市鬼石(おにし)町三波川(さんばがわ)にある桜山公園の桜でしょうか。ここの桜は、冬桜で「三波川冬桜」と呼ばれている種類です。

 以下のところを参考に 

【あなたを癒しつくす冬桜】~絶景の桜山公園~/藤岡市 (city.fujioka.gunma.jp)

 

 我が家の庭に咲くのは、「十月桜」と呼ばれる桜で9月から12月までちらほらと咲き続けます。「染井吉野」のようにパッと咲いてパッと散る桜と違い、長く咲き続けるところが好きです。

 

 で、以下は、昨年に撮影したその桜の写真です。

 

 

 

 

0.はじめに
 またまた部屋の片づけを行っているとその陰からビニール袋が。何だろうなと思って手に取ってみるときちんとラベルがつけられるように覚書のようなものも入っている。うーん、確かに見た覚えがあるが、すっかり忘れていたものだった。いつ採集したものだったか、6年ほど前だったと思うが。

 それは、福島県古殿町仙石字叶神(かなかみ)産の鉄礬柘榴石。花崗岩質の石の中にポツンポツンと見つけることができる。後で示す写真の石には、1㎜ほどから5㎜ほどのものがあり、代表として3つの石での例を写真に示す。
 
1.叶神の位置
 叶神は昔にコランダムの産地として知られていた。しかし、そこには砂防ダムができてその場所は消滅してしまったらしい。
 福島県石川町はいろいろなベグマタイト鉱物の産地として有名なところだが、古殿町は変成岩の産地として有名なところだ。簡単な説明は、古殿町役場のサイトにあるので読んでもらいたい(参考1)。古殿町は変成岩で知られたところでよく調べられている(参考3)。変成岩はけい質片麻岩・角閃石片岩・黒雲母片岩などで、特に古殿町に分布する変成岩は、竹貫変成岩と呼ばれている。その中に、十字石、コランダム、角閃石、珪線石、藍晶石、柘榴石などが見つけられている(参考2,3,4)。

 叶神は、いわき市と石川町を結ぶ街道の途中にある。地図上では古殿町で大きく道が曲がるが、車に乗っているとわからないかもしれない。古殿町の大きく曲がる三差路角(下図左端中央付近)に道の駅がある。


図1 古殿町の石の産地の例(参考2から)

   採集地の叶神は、左上の十字マーク(十)のところです。


写真1 採集地の沢の入口(Google Mapから)

    右側は霊水の出た所であるようで。

 

2.叶神で採集できる石

 写真1で示す入口からしばらく登っていくと左手には畑、右手は林で、道はS字様になるが気にせず登る。そのうちに左手に砂防ダムがある所に来るが、そこが昔コランダムが採れた場所であるらしい。ちょっと厳しそうで川に降りる気にならなかった。

 採集地はその更に奥で、分岐がある周辺。そばに黒っぽい変成岩の露頭がある。黒い塊がキラキラしているが、さっぱりわからなかった。黒緑色をしているので、黒雲母か角閃石が主の変成岩と思われるが、コランダムらしいものは見つけられなかった。そんな感じの石の中に十字石やら藍閃石(?藍晶石だったか)やらが存在するのかなと思いながらの採集であったが、まったく分からず、面白くないので移動。

 別な場所で石をたたくと、その前とは全く違ったペグマタイトに近い岩相で、ちょいちょい鉄礬柘榴石の結晶が散見する。大きいもので10㎜は優にあるが、そんなものは大きな岩の中にあってとても割り出すことができない。直径が1m以上ある大岩から私が割り出そうと1時間ほど粘ったが結局うんともすんともいわないので諦めた。大の上をいく、超大ハンマーでないと無理な感じで。ただただ疲れただけだった。

 

 で、以下は採集できた鉄礬柘榴石の写真を。

 

写真2a 鉄礬柘榴石1(福島県古殿町叶神)

    黄色矢印の先に柘榴石がある

    背景の黒板の径は12㎝

 

写真2b 鉄礬柘榴石1の一部拡大

     (福島県古殿町叶神、結晶サイズ約1mm)

 

写真3a 鉄礬柘榴石2(福島県古殿町叶神)

    黄色矢印の先に柘榴石がある

    背景の黒板の径は12㎝

 

写真3b 鉄礬柘榴石2の一部拡大

    (福島県古殿町叶神、結晶サイズ約3mm)

 

写真4a 鉄礬柘榴石3(福島県古殿町叶神)

    黄色矢印の先に柘榴石がある

    背景の黒板の径は12㎝

 

写真4b 鉄礬柘榴石3の一部拡大

    (福島県古殿町叶神、結晶サイズ約5㎜)

    これは風化が始まっているようで周囲が褐色化している

 

3.おまけ

 ところで、「竹貫」変成岩、これって読み方は「たかぬき」変成岩って読むんですね。いやあ、通常そう読めないわね。


参考

1.古殿町役場の鉱物や岩石に関するサイト
 → こちら
2.たとえば、以下の文献など

 廣井美邦、岸智,岩鉱,84,p141-151(1989)
3.加納博、他11名,地域地質調査報告,新潟(7)70号,地質調査所(1973)

4.叶神の柘榴石については、以下のサイトにも書かれています。

 → こちら