東北鉱物採集旅行(其の参)-岩手県・田野畑鉱山 | なんだかんだの石集めと与太話

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鉱物を初めて手にしたのは、小学生の時。それからずっと中断。
2011年頃より、やっと暇になったので、また石の世界へと羽ばたき始めたけど。

0.はじめに

 東北採集旅行の最後の紹介(其の参)がすっかり忘れる気味で、もう2か月が経過していますが、一応書いておかねばと思います。

 

 東北採集旅行で最後に訪ねたのは、田野畑鉱山です。田野畑鉱山では、1抗から4抗まであったようですが、1抗と4抗は小規模で坑道は崩落し不明(参考3)で、現在は2抗と3抗のズリが残っています。2抗がコイコロベ沢3抗が松前沢に該当します。松前沢は東日本大地震の前後で訪ねたことがありますが、今回は2抗の方でした。

 

 田野畑村もそうですが、三陸では大地震後の被害がひどく、その後に復興事業で特に道路が様変わりしています。田野畑村で目立つ思惟大橋や道の駅辺りは印象が随分変わった感じでした。

 

1.田野畑鉱山の位置

 田野畑鉱山の位置は、参考1,2,3などに示されています。参考に鉱山付近の航空写真を掲示しておきます。正確な位置は全然わからないでしょうけど。

 ちなみに道の駅の辺り、思惟大橋の付近の雰囲気は10年前と変わりました。道の駅は立派になったし、駐車場も広いし、って昔の姿をよく覚えていませんが、変わったなと。島越駅方面の道への取り付けも変わったような。

 

写真1a.田野畑鉱山付近の地図1(Google Mapから引用)

 海側の島越の家々が海岸すぐのところから内陸に移動したのがわかる。

 

写真1b.鉱山付近拡大(Google Mapから引用)

 

 松前沢の3抗の方は、上の写真の松前沢と書かれた辺りから

入っていきますが、Google Mapで見てみると入り口がよくわかりません(^^;;;。コイコロベ沢(2抗)の方は、その入り口近くには道路の上に道の駅の案内板があるのですぐわかります。

 3抗の方は、東日本大地震の前後で訪ねたことがあります。2抗の方も以前に訪ねようと探しましたが、地図が不正確でよくわからずじまい、また時間もなかったので、この辺だろうと思ってましたが、今回の訪問によって確認でき、当時の推測した入り口は間違っていませんでした。

 車は下の写真2を撮っている後ろの空き地に駐めて、ここを入る。目的地は、私が思った以上に深い谷になっていて木々がよく繁っているので、なんとなく湿っぽく薄暗い感じの所でした。

 

写真2 田野畑鉱山2抗への入口(Google Mapから)

  入ってすぐ左に下る。

 

2.田野畑鉱山で採集できる石

 田野畑鉱山はマンガンを目的とした鉱山ですから、マンガン鉱物が主体です。当然ながら黒くて堅い石がたくさんある。硬い石を叩き割っての採集となる。鉱物としては、ピンク色のバラ輝石、オレンジ色のソーダ南部石、黒褐色の神津閃石、黄褐色で雲母のような吉村石、緑鮮やかな鈴木石も採集できるというが、それらは難しいだろう。他にカリフェリリーク閃石(赤褐色)、わたつみ石(小さな粒状で黄緑色)、田野畑石なども見つかっている。

 神津閃石は、最近分類が変わったようで、Mangano-ferri-ekermanniteとなりましたが、和名は維持されるようで。

 

 以下に田野畑鉱山の代表的産出鉱物を一部書いておきます。

  ブラウン鉱        MnMn3+6(SiO4)O8

  バラ輝石           CaMnMn3Si5O15

  ソーダ南部石      (Na,Li)(Mn,Ca)4Si5O14(OH)

  神津閃石           NaNa2(Mn4Fe3+)Si8O22(OH)2

  カリフェリリーキ閃石

           (K,Na)Na2Mg2Fe3+2LiSi8O22(OH)2

  わたつみ石         KNa2LiMn2V4+2Si8O24

  鈴木石               Ba2V4+2O2Si4O12

  田野畑石            LiMn2Si3O8(OH)

  セラン石    NaMn2Si3O8(OH)

  吉村石       Ba4Mn4Ti2(Si2O7)2(PO4)2O2(OH)2

 

     cf.(こちらは、田野畑石、セラン石の参考に)

   バスタム石  (Mn,Ca)3Si3O9

   ペクトライト NaCa2Si3O8(OH)

   珪灰石    Ca3Si3O9

 

 一覧を見てくると、バラ輝石と南部石神津閃石~フェリリーキ閃石田野畑石とセラン石と類似鉱物が多いので、採集、判定はかなり難しいなと感じます。殊に田野畑石とセラン石なんて、珪灰石の仲間で、繊維状でcfに書いた鉱物にあまりに類似している。当然私のような素人に区別は難しいわね。

 ちなみに田野畑石の発見の経緯が参考7に示されています。鉱物同志会の創設者、故堀秀道氏の石を見る目、洞察力が新鉱物の発見の契機となっていったようです。その違いを見分ける能力を身に着けたいものだね。

 

 で、あなたは何を採集できたかと尋ねられると、答えに困窮してしまいます。なんとか、バラ輝石、吉村石は採集できたかと思いますが、他ははっきりしません。この間から何回も見ていますが、採集途中で腹が痛くなって、車に戻ったのでたくさんの石は採集しませんでしたので、角閃石の類はあまり期待できません。褐色の石は見られるけれど、なんだろうなあというレベルでお手上げです。柘榴石なのかもしれませんが、形がはっきりしていませんから断定はできません。

 

3.田野畑鉱山の採集確認できた石

 以下、石の写真です。緑色の石が欲しかったなあと。

 

写真3 吉村石かな

  雲母っぽく板状に黄褐色見える部分がそうかと。

 

写真4 柘榴石

 粒状の部分。石を割ると時折、このようにコロっとしたものが出てくる。かなり綺麗だ。矢印の方向がずれてますが。

 

写真5 下側のピンク部がバラ輝石で、上側の橙色は南部石ではないかと。

 

写真6 黒色粒状の部分はブラウン鉱かな。中央の黄褐色は柘榴石と思う。

 

写真7 セラン石であるといいな。

  セラン石、田野畑石は珪灰石の仲間だ。

 

写真8  セラン石であると思う。

  写真5と同様な感じだ。

 

写真9 フェリリーク閃石かな

 ピンク色の中に赤っぽい針状のものがたくさん見える。濃黒緑色の部分に神津閃石があるかもしれない。

 

写真8 フェリリーク閃石かな

 写真7と同様。ピンク色の中に赤っぽい針状のものがたくさん見える。濃黒緑色の部分に神津閃石があるかもしれない。

 

写真10 フェリリーク閃石かな。カリリーク閃石も産出しているので、もしかしたらそれかもしれないが。産出状況は同じだろうと思う。

 

4.おまけ

 田野畑鉱山での採集には、東日本大地震の前後で行ったことがあります。いずれも松前沢での採集で、採集後は島越駅の方に出て、海岸沿いを走り帰ってきました。
 最初の大地震の前の採集後に、島越の駅のそばに来ても運転する車から島越の駅は見えず、もう駅だよなあと思いながら、狭い道を走って駅前に着いた覚えがあります。
 次に訪ねたのはその約1年後くらいで、島越の駅前に来ると家がすっかりなくなり、駅のそばに立つと高い位置にある家が2,3軒残っていただけで、その変わり果てた様に驚いたと同時に悲しい思いになったのを思い出します。

 今はだいぶ復興が進んだようですが、心の中までは復興が進んでいないのではないかと思います。内陸と海岸沿いでも大きな違いがあるような感じがしました。

 

 今回は、自分の車を使って鉱物情報の観察会に参加しました。が、私の車のナビは、既に2年以上前に完成した三陸沿岸道路を全然表示しないものでした。ナビはネットに繋がってデータなどのバージョンアップはしてくれるはずなんですが。そんなで道案内は助手席に乗った人がスマホを使って案内してもらいました。おかげで助かりました。ただ、私の車は自分のスマホと接続できて、車のナビにgoogleのナビが表示でき使えるが、そのことをすっかり忘れてました。が、ケーブルをそのときはなかったのでそれもできませんでしたが。これはちょっと余計なお話でした。こ

 

 話変わって、「コイコロベ」って地名変わってますね。コイ・コロ・ベは(うねり・ある・場所)という意味で、アイヌ語からきているようです(参考8)。この辺りにも昔はアイヌの人たちが住んでいたんでしょうね。

 

5.参考

1.松原聰,日本の鉱物,p248,学習研究社(2003)

2.日本鉱物倶楽部,地球の宝探し-全国鉱物採集ガイド,p28-29,海越出版(1995)

3.高橋維一郎、南部松夫,新岩手鉱山誌,p178-181 東北大学出版会(2003)

4.松原聰,日本産鉱物種 第8版,鉱物情報(2023)

5.H.Strunz、E.H.Nickel,Strunz Mineralogical Tables 9th ed.,Schweizerwart(2001)

6.M.E.Back,Fleischer's Gllosary of Mineral Species 12th ed.,The Mineralogical Record Inc.(20018)

7.長瀬敏郎,岩石鉱物科学,v43.p37-39(2014)  

  → こちらからいけます

8.田野畑の地学関連は以下を参考に

  → こちら