1.白丸ダムの放流
白丸ダムの放流がなされているという話を聞いたのはいつのことだったか。早速ネットで調べてみると以下のところにそれが書かれていました。放流は3月初めまでのようです。
→ こちら
これを見るとダムの上も、鳩ノ巣峡の遊歩道も通行禁止になっていますね。
2.白丸鉱山の赤岩へ
白丸の産地は書籍に紹介されています(参考2,3)。白丸ダムの放流がなされているということで白丸鉱山の岩場が水面上に露出。これは行ってみないといけない、少なくとも石を採取しておきたいということで早速行ってきました。
ここの岩はかなり緻密で硬くて、鏨(たがね)を使って叩いても小さい破片が飛び散り、あまり大きい岩片は採ることができません。とにかく固い。防塵メガネは必須ですね。採取した石には目で見えるようなきれいな結晶など当然見当たりません。緻密な岩からたたいたとしてもぜいぜい4㎝程度の薄い訳の分からない小さい破片を剥ぎ取ることができる程度です。
そしてまた、この岩では採取の最中は陽が当たらないのでとても寒いのです。防寒対策はきちんとしないと寒すぎます。ちなみに奥多摩では、この時期の気温(1月下旬)は最高気温で5℃程度で、最低気温は‐10℃にも達します。防寒対策は必須です。
写真1 数馬峡橋を渡って先にある遊歩道案内板
(ダムへはこの表示板の右方へ進み回り込む。)
さらに現地には行く際には、道を間違えないように。白丸ダムの上は工事のために通行禁止です。なので白丸駅から数馬(かずま)峡橋を渡っていく必要がありますが、渡ってからは右に回り込んで数馬峡橋の下の遊歩道を行くのが楽のようです(参考3)。左の道を取ると通行禁止になっており、それを無視して進むと、どこかで必ず遊歩道に行くために斜面を降りなくてはいけなくなります。左に道は危険を伴うので、行く時には案内板の右方の道を取り、回り込んで進むようにしてください。
写真2 数馬峡橋の上から見た白丸ダム湖上流
(放流されて水がない状態)
遊歩道を歩くこと20分ほどでダムを間近に見る傍の橋に来るとその下に左側に赤い岸壁が見えます。この岸壁が通称で「赤岩」と呼ばれている目的の産地です。
写真3 赤岩が見える橋の上から見る。
この橋の手前の右側から柵を乗り越えて橋の下を通り、急な崖に近い所を滑るので気をつけながら降ります。ダムの放水は寒い時期だけなので、現地の地面は凍りついていますし、急斜面なので気を付けて降りる必要がありました。
写真4 下側から見た赤岩
3.白丸鉱山の石たち
白丸鉱山の石には以下のようなものがあります。
ブラウン鉱 MnMn3+6(SiO4)O8
多摩石
(Ca,K,Ba,Na)3-4Mn24(Si,Al)40(O,OH)・21H2O
東京石 Ba2Mn3+(VO4)2(OH)
重土十字沸石
Ba2(Na,K,Ca0.5)(Al5Si11O32)・12H2O
マースチュー石 NaCaMn3Si3O14(OH)
曹長石 NaAlSi3O8
重晶石 BaSO4
キュムリ石 BaAl2Si2O8・nH2O(n=0.5-1.0)
ストロンチアン石 SrCO3
ダトー石 CaBSiO4(OH)
自然銅 Cu
ストロンチアン紅簾石
CaSr(Al,Fe3+)2Mn3+(Si2O7)(SiO4)O(OH)
ガノフィル石
(K,Na,Ca)6Mn24(Si,Al)40O96(OH)16・21H2O
方解石 CaCO3
ベニト石 BaTiSi3O9
などその他たくさんある。
白丸ダム赤岩の石の特徴としてBa,Srを含む石を多く産出する。そして東京石、多摩石の原産地であることでしょうか。
で、自分で採集できた石はというと、目視ではさっぱりわからず。友人が紫外線で蛍光する箇所を見つけた(ベニト石かな?)ということだが、私はというと見た目さっぱりわからないので、いまだ整理もしておらずです。
参考に、東大の電子顕微鏡室(参考4)には種々の鉱物写真が解説と共にあるのでそちらを見てくださいv(^^;;;。
4.おまけ
寒い中でも硬い石を一生懸命叩いたので、帰りは気分はスカッとしていました。あまり採集の成果があったとは言えなかったけれど。
帰りがけは、同行の人がダムカードがもらえるよと教えてくれ、松原先生も自慢していたとのことで、白丸ダムの60周年のラメの入ったダムカードをダムの下流にある旅館「鳩ノ巣荘」でもらってきました。ダムカードをもらったのは初めてですが、これからもらうかというと怪しい感じです。
5.参考
1.白丸ダムの放水については以下のところへ
→ こちら
2.草下英明,鉱物採集フィールド・ガイド,p87-90,草思社(1982)
3.松原聰,鉱物ウォーキングガイド,p86-91,丸善(2005)
松原聰,鉱物ウォーキングガイド関東甲信越版,p98-103,丸善(2012)
4.浜根先生の東大顕微鏡室のサイト
白丸鉱山の石については → こちら






