【作品#0263】THE BATMAN-ザ・バットマン-(2022) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

THE BATMAN-ザ・バットマン-(原題:The Batman)

 

【Podcast】

Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。


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【概要】

 

2022年のアメリカ映画

上映時間は175分

 

【あらすじ】

 

ゴッサム・シティの市長がリドラーと名乗るを男に殺害される事件が起こった。警部のゴードンは、バットマンを殺害現場に呼び寄せる。

 

【スタッフ】

 

監督はマット・リーヴス

脚本はマット・リーヴス/ピーター・クレイグ

音楽はマイケル・ジアッキーノ

撮影はグレイグ・フレイザー

 

【キャスト】

 

ロバート・パティンソン(ブルース・ウェイン/バットマン)

ゾーイ・クラヴィッツ(セリーナ・カイル/キャットウーマン)

ポール・ダノ(エドワード・ナッシュトン/リドラー)

ジェフリー・ライト(ジェームズ・ゴードン)

ジョン・タートゥーロ(ファルコーネ)

ピーター・サースガード(コルソン)

アンディ・サーキス(アルフレッド)

コリン・ファレル(オズワルド・コブルポット/ペンギン)

 

【感想】

 

「DCエクステンデッド・ユニバース」にて、バットマンの登場する作品はあったが、バットマン単独主演作品としては、「ダークナイト ライジング(2012)」以来、10年ぶりとなる作品。監督は「猿の惑星:新世紀(2014)」などでリブート作品も手掛けた経験のあるマット・リーヴス。主役のバットマン役を演じたのは、「ダークナイト・トリロジー」で監督を務めたクリストファー・ノーラン監督の「TENET テネット(2020)」にも出演したロバート・パティンソンが務め、「レゴバットマン ザ・ムービー(2017)」でキャットウーマンの声を担当したゾーイ・クラヴィッツが本作でも同役を演じることとなった。

 

リアル路線と言われたクリストファー・ノーラン版「ダークナイトトリロジー」がかなり甘っちょろく感じる程に本作の世界観はかなり突き詰めた、非常に真摯で丁寧な印象を持つ。今までのバットマン主演映画を監督した人たちはいずれもバットマンファンではなかった。原作ファンであるが故にリスペクトしすぎてうまくいかないケースもあるが、本作は原作ファンを公言するマット・リーヴスに任せて大正解だった。さらに「DCエクステンデッド・ユニバース」から独立した作品にしたことも大正解だった。「DCエクステンデッド・ユニバース」の中の作品であれば、本作のような世界観は表現できなかっただろう。演者も軒並み好印象で、マイケル・ジアッキーノの音楽も往年のホラー映画を思わせるおどろおどろしい音楽が本作の雰囲気を彩る大きな要素となっている。

 

黒以外の色を限りなく排除した映像はデヴィッド・フィンチャー監督の「セブン(1995)」を思わせ、リドラーの自宅にぎっしり記載された大量のノートが発見されるところや、リドラー登場のタイミングなどはオマージュと言えるだろう。また、影響を公言しているものも含めると、「コールガール(1971)」「フレンチ・コネクション(1971)」「チャイナタウン(1974)」「大統領の陰謀(1976)」「タクシードライバー(1976)」など特に1970年代のサスペンス映画からの影響も感じられる。それから「ゴッドファーザー(1972)」からの影響も顕著で、マイケルやフレドといったキャラクターが本作のブルース・ウェインやペンギンのキャラ造形に触発されている。また、ブルースがファルコーニのもとを訪ねる時に流れる音楽は「ゴッドファーザー」でも流れていた「I have but one heart」である。このゴッサム・シティをファルコーニがゴッドファーザーの如く牛耳っていることを示しているのだろう。ちなみにファルコーニを演じたジョン・タートゥーロはイタリア系である。

 

それから、アクションシーンはこれまでのバットマン映画と比べ物にならないレベルになっている。ティム・バートンもジョエル・シューマカーも、そしてクリストファー・ノーランも基本的にアクションを撮るのがうまいタイプではなかった。本作も、暗い場面が多いため決して見やすいアクションにはなっていないが、あの暗い中、そしてあの重量のバットスーツを着たバットマンができうる最大限のアクションになっていたと思う。また、カーチェイスも大きな見どころになっている。劇伴こそ流れるが、エンジン音、スリップ音、クラッシュ音、アクセルを踏み込む時の音など効果音が前面に押し出され、ややカットを割っているきらいはあるが、可能な限りアクションとしての理屈を明示しているように感じる。

 

そして、バットマンとリドラーは共通点も多いキャラクターである。互いに孤児であり、双眼鏡で監視するところや天窓を突き破って侵入するところ、計画を立ててそれが失敗に終わるところなど実は同じ行動を取ったり、共通点を持っていたりするのである。だが、彼らにはお金と言う大きな差があった。資産家のお坊ちゃまとして世間からも可哀そうな孤児として扱われたブルースに対し、リドラーは、再開発計画を進めようとしていたブルースの父が亡くなったことで溢れた孤児の1人だった。また、孤児院などに費やす予定だった大金が汚れた政治家らの私腹を肥やすことになってしまったことで、貧富の差が拡大する結果となった。そんな最下層で育ったリドラーだが、法廷会計士の仕事に就いている。おそらく相当な努力をして這い上がってきたのだろう。そんな彼だからこそ、孤児になった原因を追究し、「嘘はたくさんだ」と言って極端な手段で処刑を始めていく姿には共感しえる悪役像だったと言える。善だと信じていた父が悪だったかもしれないと疑い、それでも行動するブルースの姿にもドラマがあった。

 

それから、ラストのバットマンとセリーナの会話シーンでは、セリーナからバットマンの望む世界なんて実現できるわけがないと言い放たれる。悪が存在しない世界はあり得ないことは歴史が証明しているので、セリーナの言い分は間違っていない。バットマン稼業を始めて2年という世界において、バットマンは慎重に相手を選んで悪を退治し続けてきたが、小さな悪を潰していったってキリがないし、ゴッサム・シティの治安も悪化していった。それでも正義を信じて希望の光となろうとする姿にヒーローとしての証を感じるし、カタルシスもある。

 

コミック映画の映画化において長尺になるのも当たり前になった昨今とはいえ、上映時間175分を見せ切る演出は見事としか言いようがない。近年はMCUに押され気味だったDCコミックの映画化だが、少なくともコミック映画の映画化では歴史に残る映画を作ったと思う。

 

【関連作品】

 

バットマン(1989)」…シリーズ1作目

バットマン リターンズ(1992)」…シリーズ2作目

バットマン フォーエヴァー(1995)」…シリーズ3作目

バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲(1997)」…シリーズ4作目

バットマン ビギンズ(2005)」…ダークナイトシリーズ1作目

ダークナイト(2008)」…ダークナイトシリーズ2作目

ダークナイト ライジング(2012)」…ダークナイトシリーズ3作目

「THE BATMAN-ザ・バットマン-(2022)」…リブート1作目

「キャットウーマン(2004)」…キャットウーマンを主人公にしたスピンオフ

「ジョーカー(2019)」…ジョーカーを主人公にしたスピンオフ

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

<Amazon Prime Video>

言語
├オリジナル(英語/スペイン語/ラテン語/イタリア語)

 

<Amazon Prime Video>

言語
├日本語吹き替え

 

【ソフト関連】

 

<BD>

 

言語
├オリジナル(英語/スペイン語/ラテン語/イタリア語)

├日本語吹き替え

映像特典

├カーチェイスシーン解説
├ウィングスーツ新たなスタイルの追求作品を彩る衣装と小道具ペンギンという男未公開シーン
├アーカム未公開シーン
├マイナス44のキーカードゴッサムの創造

 

<4K Ultra HD+BD>

 

収録内容
├上記BDと同様