【タイトル】
ダークナイト ライジング(原題:The Dark Knight Rises)
【Podcast】
Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。
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【概要】
2012年のアメリカ/イギリス映画
上映時間は165分
【あらすじ】
前作のデントの死から8年が経過したゴッサム・シティ。彼の名を借りた「デント法」によりゴッサム・シティの秩序は守られていた。そのデントの罪を被ったバットマンは姿を隠し、ブルースも屋敷に閉じこもっていた。そんな中、宝石泥棒セリーナがメイドに化けてブルースの屋敷に潜入しており、ブルースの指紋を盗み出す。
【スタッフ】
監督はクリストファー・ノーラン
脚本はクリストファー・ノーラン/ジョナサン・ノーラン
音楽はハンス・ジマー
撮影はウォーリー・フィスター
【キャスト】
クリスチャン・ベイル(ブルース・ウェイン/バットマン)
アン・ハサウェイ(セリーナ・カイル/キャットウーマン)
トム・ハーディ(ベイン)
マリオン・コティヤール(ミランダ・テイト)
ゲイリー・オールドマン(ジェームズ・ゴードン)
マイケル・ケイン(アルフレッド)
モーガン・フリーマン(フォックス)
ジョセフ・ゴードン=レヴィット(ジョン・ブレイク)
リーアム・ニーソン(ラーズ・アル・グール)
キリアン・マーフィ(ジョナサン・クレイン)
【感想】
クリストファー・ノーラン監督による「ダークナイト・トリロジー」の最終作。大ヒットを記録した前作並みの10億ドル以上の興行収入を記録した。日本でも前作よりかは興行成績を伸ばしたが、「ダークナイト・トリロジー」として見れば日本は当たらなかったと言える。シリーズ初出演となったトム・ハーディ、マリオン・コティヤール、ジョセフ・ゴードン=レヴィットはクリストファー・ノーラン監督にとっての前作「インセプション(2010)」でも出演していたキャストである。
前2作品と大きく異なるのは、昼間のゴッサム・シティの外観を何度も映すショットがあることだろう。前2作品がシカゴで撮影され、本作はピッツバーグで撮影されており、見覚えのある光景が映ることで、この映画の世界と現実世界が地続きであることをより強調しているように思える。また、悪役となるヴィランは「バットマン ビギンズ(2005)」のデュカード同様にまさにテロリストであり、そのデュカードも本作に出演していることから、本作は前作「ダークナイト(2008)」の続きというより、「バットマン ビギンズ(2005)」の続きという印象はある。
そして本作は上映時間が165分というシリーズ最長となった割には、省略している箇所が多すぎる印象があり、それは冒頭からである。冒頭では、デントの死から8年が経過し、デントの名を冠した「デント法」により、秩序が保たれ、治安も良くなっているという設定である。犯罪が蔓延し、警察内部にも裏切り者がいた世界が、「デント法」だけですべてうまくいくと思えない。やはりデントの話は単独の映画として描くべきだったんじゃないかと感じる。ただ、こんな法律ができたとしても、ベインのような悪が現れると意味をなさなくなってしまうのは現実的であると思う。厳しく取り締まれば取り締まるほどその束縛から逃れたくなるものだし、世界から戦争や争いごとがなくならないところを考えると理解できる部分ではある。ただこれを映画的には簡単な説明で済ませているのはもったいないと感じる。
また、「バットマン ビギンズ(2005)」でも感じていたことだが、逆算的な設定があまりにも多いと感じる。まず、ウェイン・カンパニーが核融合炉を持っているという設定に大きな違和感がある。これは後でベインのもとへ行ってしまうという筋書きありきで考えられた話だろう。それから、ミランダも最初こそブルースに協力するのに、裏切って、「実はベインの娘でした」という事実が明らかになるのだが、はっきり言ってまどろっこしい。またセリーナはその逆だがまどろっこしさでは一緒だ。冒頭からブルースの屋敷に忍び込んで指紋を盗み出して大問題を起こさせ、さらにはブルースを一文無しにした張本人であるのに、終盤には味方として当たり前のように活躍しているところには全くドラマがなく、ただただ違和感しかない。
それから主人公のブルース・ウェインといえば、前作から8年経過した今も杖なしでは歩行できないほどの後遺症を抱えたまま暮らしている。それをちょっとトレーニングしたくらいで克服し、普通にアクション出来ているのも違和感がある。それから一番の問題は「奈落」に関連する場面だろう。ブルースが克服すべき場所になるのだが、あの中はベッドに寝そべりながらテレビを見られるような快適な場所で、決して鍛錬できる場所には見えない。命綱したままでは飛び越えられない場所を命綱なしで飛び越えることで成功するというところは、何かに束縛されてきたキャラクターが解き放たれることを象徴しているように見える。ところが、その象徴的に見える画が映画の展開にあまり関係していない。所詮は金持ちだったブルースが財産も会社も失い、文字通り裸一貫になったわけである。そんな彼が奈落を命綱なしでクリアしたことは文字通りただそれだけになってしまっているのは映画的にもったいない。その後にバットスーツを着て、大金注いで作ったバットモービルを使って戦うことができているのなら彼がすべてを失ったという設定は意味をなさない。そして、異国の地からアメリカに瞬間移動し、ブルースを「奈落の底」に突き落としたセリーナを当たり前に信用する展開はあまりにも飛躍的だ。
終盤の囚人と警官隊、またバットマンとベインの戦闘シーンはCGなしで撮影されている。リアル路線に拘るが故、バットマンとベインの格闘シーンには迫力が微塵も感じられない。クリストファー・ノーランにあまりアクションの才がなく、バットスーツという重装備で機敏な動きはできないのが要因だとは思うが、一番の問題はベインの弱点が丸出しというところだろう。こういうキャラクターが弱点を補うべく筋肉隆々であるという設定は頷けるが、革命のリーダーなる男が弱点を晒して戦い、案の定その弱点を突かれてやられる(実際に殺すのはセリーナだったが)のは間抜けでしかない。こういうキャラクターは異常なまでに周囲に警備をさせるくらいが良い。
すべてが終わった後、刑事ジョンの本名がバットマンの相棒として知られる「ロビン」であることが明かされるが、演出としては粋ではないね。というか刑事が本名隠して偽名でやっていて良いのかい。ここではジョンという後継者を見つけたからバットマンを死なせたことにして、ブルースはセリーナと暮らす道を選んでいる。セリーナってそこまでのキャラクターには全く見えない。セリーナは序盤からブルースの指紋を盗んで悪事に利用され、ブルースの全財産まで失わせるという超が付く悪事を働いたが、それを帳消しにするほどの活躍を見せたとは到底思えない。ブルースが愛したレイチェルを超える要素は1ミリも感じなかったので、前2作品を否定するような形に図らずもなっている。
シリーズ2作目「ダークナイト(2008)」こそ、ヒース・レジャー演じたジョーカーの強烈なキャラもあって楽しめる作品であったのは間違いないが、大人も楽しめるリアルなバットマン映画にしては突っ込みどころ、描写不足があまりにも多い。「バットマン愛」も1ミリも感じないし、この3作品でバットマンの印象的な場面は皆無と言って良い。後に作られた「THE BATMAN-ザ・バットマン(2022)」の完成度を見ると、クリストファー・ノーラン版の「ダークナイト・トリロジー」のリアル路線は甘っちょろいく、何ならちょっと子供向けだったと感じる。「THE BATMAN-ザ・バットマン(2022)」から考えて相対的に評価を落としかねない作品群と言える。
【関連作品】
「バットマン(1989)」…シリーズ1作目
「バットマン リターンズ(1992)」…シリーズ2作目
「バットマン フォーエヴァー(1995)」…シリーズ3作目
「バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲(1997)」…シリーズ4作目
「バットマン ビギンズ(2005)」…ダークナイトシリーズ1作目
「ダークナイト(2008)」…ダークナイトシリーズ2作目
「ダークナイト ライジング(2012)」…ダークナイトシリーズ3作目
「THE BATMAN-ザ・バットマン-(2022)」…リブート1作目
「キャットウーマン(2004)」…キャットウーマンを主人公にしたスピンオフ
「ジョーカー(2019)」…ジョーカーを主人公にしたスピンオフ
取り上げた作品の一覧はこちら
【配信関連】
<Amazon Prime Video>
言語
├オリジナル(英語/アラビア語)
<Amazon Prime Video>
言語
├日本語吹き替え
【ソフト関連】
<BD>
言語
├オリジナル(英語/北京語)
├日本語吹き替え
<4K Ultra HD+BD>
言語
├オリジナル(英語/北京語)
├日本語吹き替え
映像特典
├進化するバットモービル
├メイキング・オブ・“ダークナイト ライジング”