【作品#0249】バットマン(1989) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

バットマン(原題:Batman)

 

【Podcast】

Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。


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【概要】

 

1989年のアメリカ/イギリス合作映画

上映時間は127分

 

【あらすじ】

 

犯罪の絶えない都市ゴッサム・シティで、強盗犯の前に姿を現して制裁を加えた男は自らをバットマンと名乗り、姿を消した。その話を信じる新聞記者ノックスと女性カメラマンのヴィッキーは取材を始める。

 

【スタッフ】

 

監督はティム・バートン

音楽はダニー・エルフマン/プリンス

撮影はロジャー・プラット

 

【キャスト】

 

マイケル・キートン(ブルース・ウェイン/バットマン)

ジャック・ニコルソン(ジャック・ネーピア/ジョーカー)

キム・ベイシンガー(ヴィッキー・ベール)

ロバート・ウール(アレクサンダー・ノックス)

マイケル・ガフ(アルフレッド・ペニーワース)

 

【感想】

 

「ビートルジュース(1988)」のヒットでその名を世界に知らしめたティム・バートンが、「ビートルジュース」で主演したマイケル・キートンをバットマン役に起用したワーナー・ブラザーズによる「バットマン」シリーズの1作目。コミック版の容姿と似ていないことから、マイケル・キートンがバットマン役を演じることに批判の声もあったが、予算の10倍以上を稼ぐ大ヒット作となった。

 

クリストファー・ノーランが監督した「ダークナイト(2008)」にも言えることだが、ジョーカーが出てくると、バットマンの映画というよりジョーカーの映画になってしまう。なので、バットマンが主人公の1作目としてこの題材ふさわしくはないと思うのだが、本作や次回作を見ていると、ティム・バートン監督はバットマンよりも悪役側に興味がある人間なのだと分かる。また当時のバットマンコミックが人気だったこともあり、バットマンの誕生の話は基本的に描かれず、その世界に当たり前にいるという設定である。

 

当時のヒーローものと言えば1979年に始まった「スーパーマン」シリーズがあったが、特に4作目は決して評判の良いものではなかった。そのシリーズのある種の「明るさ」への反発の如く、「ロボコップ(1987)」や本作、「ダークマン(1990)」といったダークヒーローが主演のヒーローものの映画が続々と公開されていった。また、夜の場面が多く、影や暗闇が画面の多くを占めるその世界観はティム・バートン監督の好きなかつてのモノクロ映画や1940年代のフィルムノワールを思わせる。イギリスにある巨大なパインウッド・スタジオを使って作り上げた世界観は見事である。

 

そのダークヒーローと言ってもヒーローであることに違いはない。ただ、バットマンが一般市民を助ける場面は皆無と言って良い(これはシリーズ4作品に通じる)。冒頭の強盗犯が家族を襲う場面では俯瞰ショットが挿入されており、それはおそらくバットマン視点だろう。その後、バットマンはその強盗犯らをしょっ引くのだが、強盗犯が家族を襲う前に助けることもなければ、強盗に遭った家族へ持ち物を返す場面もない。その後も、一般市民ではないが警部補のエクハートをジョーカーが撃つ場面でもジョーカーが撃つのを妨害することはしていない。唯一助ける一般市民はヴィッキーであるが、それは愛する女性だからということになるだろう。バットマン=ブルース・ウェインが少年時代に両親をジョーカーに殺された過去があることが後に分かるが、だったら冒頭の家族は助けなきゃダメだろう。

 

バットマンが一般市民を助ける描写がないだけでなく、そもそも本作はゴッサム・シティに住む一般市民が描かれることはほとんどない。なので、ジョーカーが終盤に一般市民にバットマンとジョーカーのどちらを選ぶか問いかける場面があっても、一般市民にとってその二択を迫られる感じもピンとこない。キャラクターの描き分けとしてバットマンとジョーカーが対をなす存在であることは伝わってくるが、それはあくまで観客向けであって、ゴッサム・シティに住む一般市民向けではない。このゴッサム・シティの一般市民はただのモブであり、彼らの気持ちを代弁すべきデントやカメラマンにあまりに出番がないことも影響しているだろう。この辺りはおそらく描く気がなかったのだろうが、主要キャラを際立たせるためのバランスがあまり取れていないと感じる。また、ジョーカーは終始活発なキャラクターだが、せめてあの事故以降は落ち込んでしまって明るさを失いあのメイクをするという流れにしないと本作中に事故に遭った描写が生きてこない。

 

そして、本作において致命的なのはテンポの悪さだろう。本筋もそうだが、特にアクションシーンもスピード感や外連味もなく、上映時間以上の体感はある。いくらボディスーツを着ているとはいえ、顔の下半分など無防備な箇所もある。冒頭の強盗には顔を撃たれていれば一貫の終わりだったわけで、果敢に立ち向かってすぐに銃で撃たれてもボディスーツのおかげで無事であるという描写は決してスマートではない。

 

ただ、映画として面白く感じたのは、ヴィッキーの家に来たブルースがジョーカーからも撃たれる場面である。その場面ではブルースが事前に金属のトレイを胸に仕込んでいたことで助かるのだが、映画ファンなら「荒野の用心棒(1964)」のクリント・イーストウッドを思い出したことだろう。あの映画を含むマカロニウエスタンに主演したイーストウッドは基本的に名前のないキャラを演じてきた。そして本作におけるブルースも、バットマンのスーツを脱げば名もなき男であることを示しているように感じる。金属のトレイを仕込んでいて助かるという描写自体は決してスマートではないが、ティム・バートン監督らしい過去の映画への愛を感じる。

 

人気コミックの実写映画化ということで、作家性のあるティム・バートンを抜擢したことは興行成績から見ても成功と言えよう。アクションシーンがほとんど印象に残らないのは玉に瑕だが、ジャック・ニコルソンによる悪役ジョーカー、意外性のあるマイケル・キートンというキャスティング、ゴッサム・シティの世界観、そしてダニー・エルフマンの楽曲やプリンスの楽曲などの相乗効果でそれなりに見ごたえのある作品になっているとは思う。

 

【音声解説】

 

参加者

├ティム・バートン(監督)

 

監督のティム・バートン単独による音声解説。DVDの特典用に収録したものなので、本作撮影から10年以上経過してからティム・バートンが話したものであろう。決して社交的ではないティム・バートンが、30代前半で初の大作映画を任されて、プレッシャーや緊張のある中、スケジュールの都合で撮影と編集を同時並行で進めていた本作。彼が意図した世界観、幼少時の体験、俳優とともに作り上げたバットマン/ジョーカー像など本作の理解を深める上では聞く価値はある。

 

【関連作品】

 

「バットマン(1989)」…シリーズ1作目

バットマン リターンズ(1992)」…シリーズ2作目

バットマン フォーエヴァー(1995)」…シリーズ3作目

バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲(1997」…シリーズ4作目

バットマン ビギンズ(2005)」…ダークナイトシリーズ1作目

ダークナイト(2008)」…ダークナイトシリーズ2作目

ダークナイト ライジング(2012)」…ダークナイトシリーズ3作目

THE BATMAN-ザ・バットマン-(2022)」…リブート1作目

「キャットウーマン(2004)」…キャットウーマンを主人公にしたスピンオフ

「ジョーカー(2019)」…ジョーカーを主人公にしたスピンオフ

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

<Amazon Prime Video>

言語
├オリジナル(英語/フランス語/スペイン語)

 

【ソフト関連】

<BD>

言語
├オリジナル(英語/フランス語/スペイン語)

音声特典

├ティム・バートン(監督)による音声解説

映像特典

├ボブ・ケインと映画
├ダークナイトの伝説:バットマンの歴史
├コウモリの影
├バットマンの裏側
├ヒーローたち
├悪党たち
├ストーリーボード
├ミュージック・クリップ集
├オリジナル劇場予告編

 

<4K Ultra HD+BD>

収録内容
├上記BDと同様

 

<DVD(4枚組)>

 

収録内容

├「バットマン(1989)」

├「バットマン リターンズ(1992)」

├「バットマン フォーエヴァー(1995)」

├「バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲(1997)」

 

【グッズ関連】

<ポスター>

サイズ
├68.5㎝×101.5cm