【タイトル】
荒野の用心棒(伊題:Per un pugno di dollari/英題:A Fistful of Dollars)
【概要】
1964年のイタリア/西ドイツ/スペイン合作映画
上映時間は96分
※完全版は100分
【あらすじ】
流れ者のジョーは、アメリカとメキシコの国境にある小さな町サン・ミゲルに辿り着いた。その町ではロホスとバクスターの二大勢力が対立しており、ジョーはバクスターの子分を殺してミゲルの手下になるのだが…。
【スタッフ】
監督はセルジオ・レオーネ
音楽はエンニオ・モリコーネ
撮影はジャック・ダルマース
【キャスト】
クリント・イーストウッド(ジョー)
ジャン・マリア・ヴォロンテ(ラモン)
【感想】
黒澤明監督の「用心棒(1961)」に感銘を受けたセルジオ・レオーネが西部の世界に置き換えた翻案だが、後に東宝から訴訟を起こされ、アジアでの配給権や賠償金などを支払うことになった。また、1960年代初期からイタリアでも西部劇は作られていたが、本作のヒットにより本格的に世界的にマカロニウエスタンが認識されていった。また、無名だったセルジオ・レオーネ、クリント・イーストウッド、エンニオ・モリコーネを世に送り出す作品ともなった。
当時アメリカでテレビシリーズ「ローハイド」に出演していたクリント・イーストウッドは、オフシーズンにアメリカの映画に出演することを禁ずる契約にサインしていたため、本作のオファーを受けてヨーロッパでの映画に主演する形となった。そのイーストウッドにオファーがいくまでの間に、ヘンリー・フォンダ、ジェームズ・コバーン、チャールズ・ブロンソン、リチャード・ハリソンらに本作主演のオファーを断られている。ちなみにチャールズ・ブロンソンは後に「ウエスタン(1968)」、ジェームズ・コバーンは「夕陽のギャングたち(1971)」でセルジオ・レオーネ監督作品に出演している。
本作を見るくらいなら、黒澤明監督の「用心棒(1961)」も見ていることだろうが、この2作品を比べると映画としての完成度は歴然とした差があり、所詮は模倣という印象は拭えない。計算しつくされた1コマ1コマの映像にありとあらゆる要素が過不足なく注ぎ込まれた「用心棒(1961)」と比べると、本作はまだまだ映画として未熟な子供を見ているような気分にさえなる。
とはいっても本作ならではの要素もたくさんある。エンニオ・モリコーネの音楽も相まっていわゆるマカロニウエスタンっぽい雰囲気は存分に出ているし、クリント・イーストウッドにも確かな存在感もある。特に「用心棒(1961)」と同様に砂埃の舞う中主人公が現れる場面はカッコいい。ただ、この辺りが洗練されるのは次回作以降という印象ではある。
また、中盤に入ると物語はやや面白さを欠き、さらには対立するロホスとバクスターがキチっと描き分けできておらず、似たような連中という印象さえ持ってしまった。こちらもキャラクターの描き分けは次回作以降でより際立っていくことになる。
本作以前にもマカロニウエスタンが製作こそされていたが、ほとんど注目された作品はない。その意味で本作が契機となって注目されたという事情は後から知って観たとしても分かる気はする(多分エンニオ・モリコーネの音楽の影響が大きい気もするが)。
【音声解説】
参加者
├クリストファー・フレイリング(セルジオ・レオーネ監督の伝記著者)
クリストファー・フレイリングによる単独の音声解説。本作が製作されたいきさつ、東宝から訴えを起こされた話、エンニオ・モリコーネが音楽を担当することになった経緯、クリント・イーストウッドによる提案、美術や衣装の頑張りなどセルジオ・レオーネ監督の伝記を著しただけのことはある知識量で語ってくれる。
【関連作品】
「荒野の用心棒(1964)」…ドル箱三部作の一作目
「夕陽のガンマン(1965)」…ドル箱三部作の二作目
「続・夕陽のガンマン/地獄の決斗(1966)」…ドル箱三部作の三作目
「用心棒(1961)」…本作の元ネタ
「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2(1989)」…ビフがテレビで本作を見ているシーンがある。
「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3(1990)」…本作のラストでジョーが鉄板を仕込むのと同じことをマーティがするシーンがある。
取り上げた作品の一覧はこちら
【ソフト関連】
<DVD>
言語
├オリジナル(英語/イタリア語)
<DVD(3枚組/スペシャル・エディション)>
本編
├完全版
言語
├オリジナル(英語/イタリア語)
├日本語吹き替え(テレビ朝日版)
※日本語吹き替えの欠落箇所はオリジナル音声、日本語字幕で対応
音声特典
├クリストファー・フレイリング(セルジオ・レオーネ監督の伝記著者)による音声解説
映像特典(Disc2/計80分)
├ドキュメンタリー『ニュー・ヒーローの誕生』
├イーストウッドが語る『荒野の用心棒』
├セルジオ・レオーネを語る
├『荒野の用心棒』アメリカTV放送版について
├TV放送版"幻のアバンタイトル
├ベスト・マスター制作秘話
├ロケ地遍歴/アルメリア・スペイン
├ラジオスポット(10種類)
├オリジナル劇場予告篇(2種)
映像特典(Disc3/計50分)
├ドキュメンタリー『セルジオ・レオーネ - ウエスタンの世界』
<BD(製作50周年コレクターズ・エディション)>
本編
├完全版
言語
├オリジナル(英語/イタリア語)
├日本語吹き替え
├テレビ朝日版
├TBS
※上記のスペシャル・エディションに収録されたテレビ朝日版は欠落箇所があったが、追加収録されている。
映像特典
├インタビュー集
├トニーノ・バレリー
├フランコ・ジラルディ
├エンニオ・モリコーネ
├“回想録・証言・物語"
├カルロ・ガベルシェク(ウエスタン映画史研究家)によるロケ地解説
├メイキング映像
├レストアについて
├ドキュメンタリー『ニュー・ヒーローの誕生』
├イーストウッドが語る『荒野の用心棒』
├セルジオ・レオーネを語る
├『荒野の用心棒』アメリカTV放送版について
├TV放送版"幻のアバンタイトル
├ベスト・マスター制作秘話
├ロケ地遍歴/アルメリア・スペイン
├ラジオスポット(10種類)
├オリジナル劇場予告篇(2種)
├ドキュメンタリー『セルジオ・レオーネ - ウエスタンの世界』
※下線部は上記DVD(3枚組/スペシャル・エディション)に収録されていないもの