【タイトル】
夕陽のガンマン(伊題:Per qualche dollaro in più/英題:For a Few Dollars More)
【概要】
1965年のイタリア/西ドイツ/スペイン合作映画
上映時間は132分
【あらすじ】
賞金稼ぎのダグラス・モーティマーと同じく賞金稼ぎのモンコは、互いに1万ドルの賞金を懸けられたインディオ一味を狙っていた。互いの銃の腕前を認め合った2人はインディオ一味を一網打尽にして賞金を山分けにすることを決めるが…。
【スタッフ】
監督はセルジオ・レオーネ
音楽はエンニオ・モリコーネ
撮影はマッシモ・ダラマーノ
【キャスト】
クリント・イーストウッド(モンコ)
リー・ヴァン・クリーフ(ダグラス・モーティマー)
ジャン・マリア・ヴォロンテ(インディオ)
【感想】
セルジオ・レオーネ監督が「荒野の用心棒(1964)」の成功を受け、再びクリント・イーストウッドを主演に据えたマカロニウエスタン。
冒頭の20分くらいかけて、賞金稼ぎのダグラス・モーティマーとモンコの二者を丁寧に描き分けていく。これは前作「荒野の用心棒(1964)」で対立する二者を丁寧に描き分けできていなかった部分への反省ではないかと感じる部分ではある。
その後、インディオ一味の様子も描かれていく。ただ、前作同様に何の脈絡もない映像が流れ、その後しばらくしてその映像の意味が分かるという場面がそこそこある。これに関してはダグラス・モーティマーの妹夫婦が殺された話だけにして、それ以外のところは「普通」に描いても良かった気はする。
あと、セルジオ・レオーネ監督がエンニオ・モリコーネの音楽に惚れこんだ話も大変有名だが、「オルゴールが鳴り止めば銃を取れ」と言われる場面が2回あり、2回ともそのオルゴールの音をかき消す劇伴が流れる。ここはオルゴールの音だけにして、編集でうまくその場を繋ぐべきだったと感じる。そこで流れるエンニオ・モリコーネの劇伴も素晴らしいのだが、ここはセルジオ・レオーネ監督のエンニオ・モリコーネ音楽愛が過ぎたのではないかと感じる。
気の利いたセリフも増えて親しみやすくなったようにも思う。特にマッチの因縁のある男がダグラス・モーティマーを発見して絡むと、「タバコは食後だから10分後にまた来い」と言われてブチ切れるところもなかなか笑える。また、モンコとダグラス・モーティマーが挑発し合う場面もバカバカしい。それを見ている子供たちに「遊んでるのかな」と言わせるところも気が利いている。そして、2人は互いの銃の腕前を披露し、次のカットでは仲良く酒を飲み交わしている。この手の映画なら殺し合うことになりそうな2人が、なんかイチャイチャしている。この一連のシークエンスの演技、やり取り、編集は見事だと感じる。
一見すると、暴力的な男の映画だが、ただ暴力的ではなく義理立てできるところはキチっとしている。ラストで妹夫婦が殺されたダグラス・モーティマーの復讐になると、モンコはダグラス・モーティマーに手を貸すことなく、決闘なら正々堂々と戦えるように舞台を整えてくれる。ガンマンにはガンマンの流儀があり、モンコにはその事情を慮るだけの人間味も伝わってくる。前作「荒野の用心棒(1964)」同様に、クリント・イーストウッドが演じた主人公は寡黙なキャラクターだが、その静かな中に人間味も表現されていたように思う。
前作「荒野の用心棒(1964)」がヒットしたことで、スケール感も大きくなり、クリント・イーストウッドと相対するキャラクターとしてリー・ヴァン・クリーフという良い役者も連れてくることができた。エンニオ・モリコーネの音楽も「前作みたいな音楽」ではなく、ちゃんと本作ならではの音楽になっている。たった1作品重ねただけでもセルジオ・レオーネ監督の進化を見ることができる。
【音声解説】
参加者
├クリストファー・フレイリング(セルジオ・レオーネ監督の伝記著者)
クリストファー・フレイリングによる単独の音声解説。前作「荒野の用心棒(1964)」との違い、本作製作までの経緯、リー・ヴァン・クリーフという当時ほとんど映画に出演していなかった西部劇俳優のキャスティング、次回作への布石などについて豊富な知識量で語ってくれる。
【関連作品】
「荒野の用心棒(1964)」…ドル箱三部作の一作目
「夕陽のガンマン(1965)」…ドル箱三部作の二作目
「続・夕陽のガンマン/地獄の決斗(1966)」…ドル箱三部作の三作目
取り上げた作品の一覧はこちら
【ソフト関連】
日本語吹き替え版はDVDは1種、BDはDVD版に加え、クリント・イーストウッドの声を山田康雄が担当したテレビ朝日版の2種が収録されている。
映像特典はBDにもDVD2枚組アルティメット・エディションと同様のものが収録されているが、一部はBDにのみ収録されているものがある。詳細は下記を参照ください。
<DVD(2枚組アルティメット・エディション)>
言語
├オリジナル(イタリア語/英語)
├日本語吹き替え(DVD版)
音声特典
├クリストファー・フレイリング(映画歴史家)による音声解説
映像特典
├ドキュメンタリー:「レオーネ・スタイルの開花」
├イーストウッドが語る『夕陽のガンマン』
├回想:レオーネへのオマージュ
├『夕陽のガンマン』アメリカ公開版について
├復元:「甦ったイタリアン・スタイル」
├ロケ地変遷・ラジオ・スポット集 (12種)
├オリジナル劇場予告編(夕陽のガンマン+荒野の用心棒)
├フォト・ギャラリー
├MGMタイトル・プロモーション
<BD>
言語
├オリジナル(イタリア語/英語)
├日本語吹き替え
├DVD版
├テレビ朝日版
音声/映像特典
├上記2枚組アルティメット・エディションのものに加え、フレイリング・コレクション:資料で見る『夕陽のガンマン』が収録されている。
【音楽関連】
<サウンドトラック>
収録内容
├「夕陽のガンマン」「続・夕陽のガンマン」
├29曲/76分