【作品#0563】続・夕陽のガンマン/地獄の決斗(1966) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

続・夕陽のガンマン/地獄の決斗(伊題:Il buono, il brutto, il cattivo/英題:The Good, the Bad and the Ugly)


【概要】

1966年のイタリア/西ドイツ/スペイン合作映画
上映時間は162分
※完全版は178分

【あらすじ】

南北戦争の真っ只中の荒野で3人の男たちが20万ドルの金貨を巡り攻防を繰り広げる。

【スタッフ】

監督はセルジオ・レオーネ
音楽はエンニオ・モリコーネ
撮影はトニーノ・デリ・コリ

【キャスト】

クリント・イーストウッド(ブロンディ)
リー・ヴァン・クリーフ(エンジェル)
イーライ・ウォラック(テュコ)

【感想】

セルジオ・レオーネ監督、クリント・イーストウッド主演による「ドル箱三部作」の最後の作品。

市販されているDVDや動画配信サービスでは完全版の178分が主流となっており、「ドル箱三部作」の前作「夕陽のガンマン(1965)」に比べれば40分以上長い3時間近い作品となっている。確かに長いのだが、前2作品に比べてスケール感も、キャラクター描写も、テーマ性もパワーアップしているので特段退屈するわけでもない。

1匹狼を描いた「荒野の用心棒(1964)」、2人の賞金稼ぎを描いた「夕陽のガンマン(1965)」、そして原題にもあるように「良い奴、悪い奴、醜い奴」の3人を描いた本作。前作に比べるとリー・ヴァン・クリーフの印象はやや薄まったが、メインキャラクターの数が作品を追うごとに増えており、それぞれがやはり魅力的だ。「醜い奴」を演じたイーライ・ウォラックはシリーズ初登場だが、何とも魅力的なキャラクターであり、事実上のタイトルロールとも言える。相手や状況に応じて態度を翻す様はまさに人間的で前2作品のメインキャラクターにはいなかったタイプである。

そして、本作は舞台となるのは南北戦争時代である。メインキャラクターの3人は南北戦争そっちのけで金貨のありかを探しており、その途中で幾度となくこの南北戦争と関わることになる。この南北戦争での戦闘を見たブロンディは命が無駄に失われていることを嘆く。この3人は他人の金貨を盗む悪党だが、決して人をむやみやたらに殺している訳ではない。人の生き死にだけで比較すればまだマシな方である。前2作品でもクリント・イーストウッドの演じる主人公に人間味を感じる場面は少ないながらもあったが、本作ではそれが割と如実である。この南軍と北軍が橋を取り合おうと睨み合い現状を打破しようとしては犠牲者が後を絶たない状況であり、これは第一次世界大戦の塹壕戦を思わせるところもある。ここで主人公らが橋を爆破することでこの理不尽な戦いに終止符が打たれるわけではないが、状況を好転させようという意図は感じられる。

さらに、予算がどんどんアップして、この南北戦争の戦闘シーンでは実際に橋を爆破している。その橋から遠く離れたイーストウッドとイーライ・ウォラックの近くに大きな石の塊が飛んできており、あわや大事故を引き起こすところだったらしい。もちろん結果論だが、この撮影で事故に巻き込まれずに生き残ることこそ、本作の主人公らしくて良い。

ラストは墓地の中央にある広場で3人が撃ち合う決闘になる。ここではロングショットとクローズアップを交互に映しながら、エンニオ・モリコーネの激しい音楽で盛り上げていく。見せ方でこれだけドラマチックにできるのかと感動する。テュコの銃弾を抜いておき、エンジェルをあっさりやっつけるブロンディ。エンジェルはすでに掘ってあった穴に落ち、その後ブロンディの撃った銃弾により、エンジェルの銃も帽子も穴に収まるところは笑える。さらにはすべて騙されたテュコは、ブロンディによって縄で首にかけられ、足は不安定な木の上に乗った状態で放置される。すると遠く離れたブロンディが銃を構え、テュコの首にかかる縄を撃って助けてくれる。冒頭と同じく「良い奴、悪い奴、醜い奴」のクレジットが各キャラクターの静止画と共に表記され、酷い仕打ちを受けたテュコが走り去るブロンディに「お前は全然良い奴なんかじゃねえ」と叫ぶところも笑える。確かに酷い仕打ちだが、ブロンディの計画でテュコは命拾いし、金貨も半分残してくれた。

セルジオ・レオーネ監督、クリント・イーストウッド主演の3作品では集大成とも言うべき内容で、演出も音楽もキャストもすべてがパワーアップしており、たとえ3時間近くあろうとも見応え十分である。

 

【関連作品】

荒野の用心棒(1964)」…ドル箱三部作の一作目
夕陽のガンマン(1965)」…ドル箱三部作の二作目
「続・夕陽のガンマン/地獄の決斗(1966)」…ドル箱三部作の三作目

 

「サッドヒルを掘り返せ(2017)」…本作ラストの決闘を撮影したロケ地を発見したファンが世界中に声をかけて本作ラストの決闘を再現するまでを描くドキュメンタリー映画。

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

 

<U-NEXT>

 

言語

├オリジナル(イタリア語/英語)

├日本語吹き替え

 

【ソフト関連】

 

2023年3月現在、発売されているソフトで劇場公開版が収録されているのは廉価版のDVDのみであると考えられる。

 

<DVD>

 

本編

├劇場公開版

 ※完全版は収録されていません。

言語

├オリジナル(イタリア語/英語)

 ※日本語吹き替え版は収録されていません。

 

<DVD(2枚組/アルティメット・エディション)>

 

言語

├オリジナル(イタリア語/英語)

├日本語吹き替え

本編

├完全版のみ

 ※劇場公開版は収録されていません。

音声特典

├リチャード・シッケル(映画評論家)による音声解説
映像特典(Disc2)

├メイキング:レオーネの西部劇

├メイキング:レオーネの作風

├ドキュメンタリー:「南北戦争の真実」

├ドキュメンタリー:「復活した完全版」

├モリコーネの音楽と「続・夕陽のガンマン」

├映画音楽史研究家が語るモリコーネの音楽性(英語音声・別紙対訳付き)

├未公開シーン集

├フランス語版予告編

├ポスターギャラリー(7種)

├オリジナル劇場予告編

├隠しコマンド

 

<BD>

 

収録内容

├上記2枚組アルティメット・エディションと同様

 

<BD(MGM90周年記念ニュー・デジタル・リマスター版)>

 

収録内容

├上記2枚組アルティメット・エディションと同様だが、スペシャル映像集が追加されている。

 

【音楽関連】

 

<サウンドトラック(CD3枚組)>