仮面ノート
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書評「キャスターという仕事」国谷裕子著

 いまジャーナリズムの世界でここまで言葉の力にこだわっている人はいないのではないか?
著者は言葉の力を信じ、それだけを武器に20年以上、放送の第一線で戦い続けたきた。
こういう人が今のテレビ界にいたのか、と驚いてしまうところに、現在のテレビジャーナリズムの危機がある。
著者が舞台してきた番組はなくなくなった。
これは我々が考えている以上に重大なことなのかもしれない。

そう難しく考えず、テレビの番組の制作過程を知るだけでも中身の濃い一冊である。

書評「キャスターという仕事」国谷裕子著

 いまジャーナリズムの世界でここまで言葉の力にこだわっている人はいないのではないか?
著者は言葉の力を信じ、それだけを武器に20年以上、放送の第一線で戦い続けたきた。
こういう人が今のテレビ界にいたのか、と驚いてしまうところに、現在のテレビジャーナリズムの危機がある。
著者が舞台してきた番組はなくなくなった。
これは我々が考えている以上に重大なことなのかもしれない。

そう難しく考えず、テレビの番組の制作過程を知るだけでも中身の濃い一冊である。

「総理の誕生」阿比留瑠比

 

 安倍晋三を傍らで見守り続け18年。産経新聞の名物記者が送る安倍晋三の全人像。
安倍政治や政策を巡る書籍は賛成、反対の立場を問わず多数出版されている。
本書が他の本と違うのは、記者の目を通して見てきた安倍さんの人となりがよく表現されている点である。
一つ一つのエピソードが既知のものが多いが、それを語る安倍さんの表情などは生き生きと書かれている。
もちろん、安倍さんの政治信条や理念も余すことなく書かれている。

しかし、安倍さんの周囲は著者といい「総理」の山口敬之氏といい、安倍さんとの「距離」を自慢気に語る
人が多いな。著者と山口氏はどちらが安倍さんに「近い」のだろう。そんなことを考えながら読むと一層面白い本である。

書評「YKK秘録」山崎拓著

 「YKKは友情と打算の二重奏だ」と喝破したのは小泉純一郎であった。
本書はその小泉とYKKの一角を成した山崎拓が振り返った90年代から
小泉政権誕生前後までの記録である。
 たまたまなのであるがレビュー子が前回投稿したのは山口敬之著の「総理」。
図らずも時を置かず90年代から2000年代初頭の政治と、

現在の政治を比較することができた。

 二冊を通読して痛切に感じたのは、

山崎の時代の政治家は本当に「人と会っていた」ということである。
もちろん酒を飲んでいたということで、

料亭や高級料理屋での会食が本当に毎晩のように出てくる。
そういう政治に批判があるのは当然だが、

そこでは政治家同士が痛飲しながら人間関係を作り、
時に前進、時に妥協する姿がある。
与野党の駆け引きなど表に出せないようなやりとりというのも、
基本は人間関係を土台として政治が動いていたのがよくわかる。

 本書と、そして前掲の「総理」を読むと、現在の政治に足りないものがよくわかる。
それはこの「人間関係」である。

もっと言えば、政治の中枢に関与する人間の幅広さである。
今考えると、山崎の時代は政治家の幅の広さ、

議論の多様性がそのまま政治に反映されていた。
自民党政権の崩壊など当時の政治状況の影響が大きいのだが、

そこには多様な政治家の存在感があった。
現在の安倍政権はむしろこの逆で、常に結果ありきで、プレイヤーの顔ぶれも限られる。
しかも、安倍周辺はそれをいいことのようにとらえている節がある。

 時代環境が違うので単純比較は危険だが、

国民としてどちらの政治が結果的に国民に資するかは一度考えられるべきだろう。

政治はその時の社会を反映するものであろうから、
政治に幅の広さ(狭さ)を考えることは自分たちの社会を考えることになる。

 

書評「総理」山口敬之

  非常に面白い本である。登場する自民党政治家たちはとても魅力的である。普段知ることのできない人柄を垣間見ることができ、その意味では非常に面白い本である。特に安倍さんや麻生さん、菅さんの人格、表情は、彼らに批判的な人ですら一読するべきであろう。


 ただし、これが「ジャーナリスト」の著した一冊となると、素直に評価はできない。 「まえがき」や「あとがきにかえて」、そして本編中でも著者は、政治家との距離が近くなければ政治の本当の力学を知ることはできないという趣旨のことを繰り返し書いている。


 おそらく、それは正しい。それすら否定する人もいるだろうが、レビュー者はそこまでは著者は正論を言っていると思う。

 だが、あくまでもそこまでである。


 読み進めると著者は時に政治家のアドバイザーになり、時にメッセンジャーボーイとなっていることが分かる。印象として著者は、それらを喜々として書いている。ここまで来たらジャーナリスト失格であろう。


 永田町報道には昔からこの手の記者がいたのだろう。大手新聞社の会長などがいい例だ。記者の職分を超えて、永田町のプレーヤーに成り下がるのである。しかも、本人はそれにご満悦なのである。


 だが、これまでそれをここまで開けっ広げにノー天気に書かれることはなかったのではないか。報道側にはそれなりに羞恥心があっただろうし、
読者側にはそれを嫌悪する良識があったからだろう。
 本書を読むと、文化や知性の崩壊が政治報道の分野まで及んでしまったと感じざるを得ない。


 政治の世界は変化する。情報化社会は激動する。
国民だって日々の生活を送りながら少しずつ変わる。
にもかかわらず、政治取材の世界だけは未だ「55年体制」のままであることがよく分かった。


 せめてもの救いは著者が民放記者であったことである。
つまり、国民は彼の報道に金を出していないことである。
これが購読している新聞や雑誌、公共放送の記者による一冊だったら、
私は購読を止めるであろうし、受信料を拒否するであろう。
そう思わなければ、一読者、一国民としてやってられない気分になる一冊であった
(この本はちゃんとお金出して買いましたけどね)。


書評「危機を覆す情報分析」佐藤優著

 反知性主義が蔓延する現在の政治状況の中で、
いかに情報を得て、それを自分のものにしていくかを説いた一冊だ。
カルチャーセンターの講義が基になっているため、読みやすく理解もしやすい。
第3講「勉強とは何か」、第4講「教養とは何か」だけでも読む価値がある。

「戦略がすべて」瀧本哲史著

 厳しい時代に個人はどう生きていったらよいか?
AKBをはじめ「勝者の方程式」を解き明かし、
自分をコモディティ化=汎用品化させないための方法論、心構えを説く。
 説明は分かりやすく説得力もある。紹介されている事例も知っているものばかりで
大変読みやすい。著者の本を初めて読んだが、他の著作も読みたくなった。

 でも、今の時代ってただ生き延びるだけで大変なんですね。
そもそもここに書かれていることを実践に生かせる人は、
その時点ですでに「勝者予備軍」といえるかもしれません。
最悪なのはこの本を読んで「そうだそうだ」と納得し、そこで終わってしまい
気づいたらコモディティ化していることかもしれません。
うーん、疲れる世の中だ。


書評「崩壊 朝日新聞」

 読者を裏切り続け2014年に報道機関としての立場を放棄した朝日新聞。
この朝日新聞社内でいかにマルクス主義、共産主義思想が跳梁跋扈していたかを、元朝日の記者が暴いた一冊である。


 驚くのはこの新聞社の内部がここまで共産主義思想に洗脳され、
洗脳された記者たちが次々と記事を垂れ流していた事実である。
間違いなく日本の国論を歪め、日本の国際社会における地位を
回復不能にまで陥れた新聞社が描かれている。


 2014年の慰安婦、吉田調書、池上コラム犯罪(問題ではない)がいかに必然だったのかがよくわかる。
全体的に古い話が多いので著者にはぜひ現在の朝日の悪行をリポートしてもらいたい。



書評「1985」鷲田康

 よくできたスポーツドキュメントである。
1985年のタイガース日本一までを吉田監督就任の少し前から
過不足なく見事に描いている。

吉田を始め掛布、バース、岡田といった主要選手から
渋いプレーを見せた脇役選手まできっちりカバーしている。


 本書の特長は野球、阪神という一つのスポーツ、球団の活躍を追いながら、
実は優れた組織論、リーダー論になっているところである。
やはり、強い組織には理由がある。

要所要所に出てくる選手に対する吉田監督の言葉、
選手の起用法などは、実力が証明しただけに現代のビジネス書など足元に及ばない説得力がある。

 
 自分の役割をきちっと認識し、優勝するために自分は何をすべきかを真摯に追求している選手たちの姿にも打たれるものがある。


 30年前、日本はまだバブルすら迎えていなかった。

時代は「昭和」で、野球はプロスポーツ界の王座に君臨していた。

自民党政権の崩壊など誰も信じず、電電公社と専売公社がやっと民営化された年であった。日航ジャンボ機墜落もこの年である。

 まだまだ、日本は上り坂の途中であった。

だが、頂点を迎え、下り坂へと転落していくのも時間の問題だった。
昭和は数年後に終わろうとしていたし、バブルの狂乱をもたらす円高を導いたプラザ合意もこの年であった。
 国民的スポーツから転落する野球界には、最後の象徴的選手となる桑田、清原がドラフト会議を迎えていた。


 いま思えば、ある時代の「終わりの始め」がこの1985年であり、
その年の最大のエポックがタイガース優勝ではなかったか。

 著者が阪神優勝を描くことによって最も伝えたかったは

この「時代」なのかもしれない。
だからこそ、本書の主題は「1985」なのではなかろうか。
たかが野球に大袈裟と思われるかもしれないが、

されどまた野球でもあるのである。


書評「戦争前夜」牧野愛博著

 朝日新聞で著者の名前を見た人は多いだろう。

朝鮮半島、中国、東アジアウオッチャーとしては
現在の日本ジャーナリストの中では屈指の人であろう。


 本書は1994年の朝鮮半島核危機を振り返りつつ、

不安定な東アジア情勢に警鐘を鳴らす。

反中国、反韓国感情の高まりなかで忘れがちになっている
北朝鮮の金正恩体制にこそアジアの真の危機であることを指摘する。

 アメリカを含め多種多様なプレヤー達を極めて広く深く取材をしているというのがよくわかる。
ただ、もう少し絞って整理てくれると読みやすかった。
 また、新聞記者が書いているわりに文章全体が読みづらいところがあった。
普段の新聞報道ではこの人の文章はかなり読み易い部類に入ると感じているので、すみませんが星4つにしました。


 でも、現在の東アジア情勢を理解するには必読書であることは間違いありません。

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