先月の記事で、給料は減っているのに大学の学費は増えている ということを書きました。収入が少なくなっているのに大学の学費が上がっているので、以前よりも大学の学費が家計を圧迫している状況になっています。
国立大学の授業料が上がったのは、私立と国立の格差是正の旗印を掲げたことが要因でした。しかし、私立大学の授業料も値上がりし続けたことにより、1980年代よりも最近の方が私立と国立の授業料の差は広がっています。
大学の収入は、入学金や授業料など学生が支払うものの他に、国からの補助金があります。今回の記事では、国からの補助金がどのように推移しているのかを見ていきます。
下のグラフは、私立大学に対する補助金と私立大学数の推移を表しているものです。
1980年代後半から2000年代半ばまでは大学数の増加とともに補助金も上昇していましたが、それ以降は大学数が増えているにもかかわらず補助金は減少もしくは横這いとなっています。
次に、国立大学に対する補助金と大学数の推移を見てみます。国立大学の補助金は2003年以前のデータが見つからなかったので、2004年以降だけのものになっています。
2008年から大阪大学と大阪外語大学が統合して大学数が1校減っただけですが、国立大学への補助金は減少していることが分かると思います。大学授業料は2004年以降据え置かれていますので(詳しくは「給料は減っているのに大学の学費は増えている」 参照)、国立大学の経営は年々厳しくなっていることが予想されます。
私立大学では1990年代の終わりから1大学当たりの補助金が減少しています。国立大学については2003年以前のデータがなくて分かりませんが、2004年以降は減少傾向にあることが分かると思います。
私立大学の学費が上昇しているのは、設備を充実することなども影響していますが、1大学当たりの補助金が減少していることも影響していることが考えられます。
国立大学については、今後は授業料を上げていく方針が文部科学省から出されています。それは、財務省から大学への補助金の削減が提案されているからです。
国立大学の授業料が高くなれば、経済状況が苦しい家庭の子供が現在よりも大学進学をあきらめなければいけないケースが増えることになってしまいます。
このような大学への補助金削減に対しては、反対の声が多く上がっています。教育への投資というのは、将来への投資でもありますので、大学への補助金削減は将来の日本を弱体化させてしまう可能性があります。
一方で、政府の財政状況が厳しいから大学への補助金削減はやむを得ないという意見もあります。ここで問題視されているのが、Fランクと呼ばれている大学への補助金投入です。
Fランクと呼ばれている大学の中には、大学としての魅力が不足して毎年のように定員割れをしているところが数多くあります。2015年では、私立大学の43.2%が定員割れをしています。志願者が少ない大学では、外国人留学生をかき集めて何とか入学者を増やしているようなところもあります。
実際、このような大学にも補助金が投入されています。存在意義が疑問視されているような私立大学への補助金を他の大学に回せば、現在と同じ補助金であっても、1大学当たりの補助金がかなり増えることになり、そうなれば授業料を上げなくても大学経営が成り立つ状況にもなります。
文部科学省からは国立大学だけでなく私立大学にも職員として天下りをしていますので、文部科学省としては大学数が多い方がそれだけ天下り先を確保することができます。
大学の数が増えて学生側の学ぶ機会が増えるのは良いことだと思いますが、本当に大学で学びたい人が大学に行ける環境を作ることの方を優先させるべきではないでしょうか。
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