皆さんは、世界大学ランキングというのを聞いたことがあるでしょうか?

 

世界大学ランキングというのは、高等教育機関を様々な指標によって順位付けした国際的な大学ランキングのことです。

 

世界大学ランキングには、一元的な序列によるものから多元的なものまで様々なものがあり、雑誌、新聞、政府、企業、大学、第三者機関など多くの期間が作成しています。

 

総合的なランキングとしては、英国の高等教育専門週刊誌THEThe Times Higher Education)や、英国の大学評価機関QSQuacuquarelli Symonds)などが有名です。

 

これら国際的な大学ランキングについては、色々と問題があるようで度々批判されています。

 

大学ランキングでは、英語圏の大学が上位に入りやすいと言われています。論文数などを評価指標にする場合、ネイチャー誌やサイエンス誌のように英語の雑誌に載った論文数で測ることがあります。そして、英語で描かれた論文は引用も多くなるため、どうしても英語圏の大学が有利になります。

 

ランキングを作成している機関の国の大学が、上位にランクインされることも指摘されています。英国のTHEでも、英国の大学が上位にランクインしていることが何度か批判されています。

 

また、外国人教員や留学生の比率などが指標に入っていることもあり、どうしても移民が多い国に有利となったり、欧州のように狭い地域に多くの国が集まっているような国に有利になったりしています。

 

そして、理工学系の論文は英語圏以外の大学でも英語に翻訳して発表することは珍しくありませんが、人文科学系の論文は自国以外の言語に翻訳することはあまりありません。そのため、人文科学系の大学はランキングの上位になりにくいと言われています。

 

 

世界の大学ランキングでは、日本の大学はあまり上位にはランクインしていません。日本の報道機関などでよく引用されている英国のTHE大学ランキングを見てみましょう。

 

世界大学ランキング(THE2015-2016

大学ランキングTHE
資料出所:Times Higher Education

 

トップ10の大学のうち、米国が6校を占めており、次いで英国の3校となっています。ちなみに、米国の大手通信社トムソン・ロイターが発表した大学ランキングでは、上位10校のうち9校が米国の大学で、英国の大学はベスト10には入っていません。

 

THEの大学ランキングの指標は、以下のとおりとなっています。

 

世界大学ランキング指標(THE2015-2016
大学ランキング指標


「論文被引用数」のウェイトが最も高くなっており、次いで「教員による評判調査」「教育に関する教員による評判調査」のウェイトが高くなっています。

 

この2つの評判調査については、名の知られた大学に有利に働きます。また、これらの指標を高くするためには、学術関係の雑誌に広告を載せれば大学関係者の目に留まるようにすることが必要なようです。雑誌の関係者の中には、大学ランキングを上げるために雑誌広告への掲載を勧める人もいるようですので、学ランキングというのは広告料獲得のための道具として利用されているみたいです。

 

 

次に、THE大学ランキングで上位500校に入った日本の大学は、以下の表のとおりです。

 

世界大学ランキング500位以内の日本の大学(THE2015-2016
大学ランキング日本の大学

資料出所:Times Higher Education

 

日本の大学でトップ500に入ったのは7校で、東京大学の43位が最も順位が上でした。表中の日本の大学に共通しているのが、国際の分野のポイントが低いことです。このことから、政府や文部科学省は留学生を増やすことに力を入れているようです。

 

世界大学ランキングの結果を見て、アジアにおける日本の大学の相対的なポジションが低下していると指摘する声も上がっています。安倍首相も「以前世界大学ランキングのトップ100に日本の大学が10校入ることを目指す」と述べたことがありました。

 

しかし、世界大学ランキングというのは、教育の質など数値化されないものは評価されませんし、上述のように様々な問題が指摘されています。そのようなランキングで上位になるのが、本当に大学の価値を高めるのか、もう一度じっくり考えた方が良いような気がします。


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