今回は、「自民党政策集2014」に書かれている自民党の経済政策について内容を評価します。政策集の中にある”Ⅰ.経済再生・財政再建”の中身をチェックしていきます。
その前に、自民党は政策集で「経済再生」「地方創生」「女性活躍」「財政再建」を掲げています。経済再生と財政再建については、以下のことを目指しています。
経済再生
企業の収益が増え、雇用や賃金の増加を伴う経済の好循環を更に拡大し、全国各地への波及を図ります。
燃油高騰や米価下落などに十分配慮し、力強い景気対策を速やかに実施します。
復興を加速するとともに、災害対策や老朽化インフラ整備など国土強靭化に努めます。
わが国経済の競争力向上のため、中小企業・小規模事業者への影響に十分配慮しつつ、来年度から法人税改革を行います。
基礎研究、人材育成や産学官連携の強化を図り、「世界で最もイノベーションに適した国」を目指します。
「日本の魅力」の海外発信を進め、クールジャパン戦略を推進します。
観光立国を推進し、観光資源の戦略的な活用や観光産業の活性化を図ります。
国民生活・社会活動の基盤となる安定的かつ低コストのエネルギー需給構造を確立します。
財政再建
2020年(平成32年)度における、国・地方の基礎的財政収支の黒字化目標の達成に向けた具体的な計画を来年の夏までに策定します。
普段の行財政改革に取り組みます。
安定した社会保障制度を確立するために、2017年(平成29年)4月に消費税率を10%にします。
自民党の政策をみると、とにかく色んなことを盛り込んでいて、「これを本当に全部やる気があるのか?!」という感じです。長くなってしまいますので、自民党の経済政策についても二回に分けてチェックしていきます(青字が自民党の政策です)。
○経済再生と財政再建の両立を
デフレからの脱却を確実なものとするため、経済再優先で政権運営にあたっていくとの決意の下、「三本の矢」を強力に推進し、経済再生と財政再建を両立させながら、雇用や所得の増加を伴う経済好循環の更なる拡大を目指します。
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デフレを脱却して経済成長していけば税収が増えますので、金融緩和を継続して行うとともに、デフレを助長して経済成長を阻害する消費税増税は止めるべきです。相矛盾する施策を同時に行うのは、早くやめるべきです。
今後どの分野が伸びるのかは誰にも分かりませんし、ましてや政府が分かるわけがありません。三本目の矢である成長戦略については、政府は余計なことをせずに、事業展開を阻害している必要のない規制を無くすことに注力すべきです。とんでもない規制は、現在でも多くあります(「ホテル-食堂=ラブホテル?」「法律を無意味にする省令や通達」「変な規格のせいで美味しい農産物が出回らなくなる」「美味しい牛乳が流通しない仕組がある」「日本の小麦が高い理由」「消費者も国内養豚業者も損する豚肉の差額関税」)。
物価安定目標2%の早期達成に向け、大胆な金融政策を引き続き推進します。
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金融政策を行うのは物価引上げに有効な策ですが、その一方で物価を押し下げる消費税増税を同時に行うのは間違いだと思います(「消費税引き上げがアベノミクスの失敗を招く」)。消費税再引き上げをやめるだけでなく、消費税5%に戻すことが最善の策です。
国・地方の基礎的財政収支について、2015年度までに2010年度に比べ赤字の対GDP比を半減、2020年度までに黒字化、その後の債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指します。
2020年度の黒字化目標の達成に向けた具体的な計画を来年の夏までに策定します。
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どのような方法でこれを実現するのかが、これだけでは全く分かりません。税収など収入を増やすのか、支出を減らすのか、その両方をやるのか、更にどのような方法でそれを実現するのかを示すべきです。これでは単なるスローガンに過ぎません。
また、国(政府)の財政状況を測る指標は、債務残高ではなく純債務残高(政府が保有資産を債務残高から除いたもの)を見るのが普通です。借金が多くても資産を大量に持っていれば、支払い能力があるからです(「日本は本当に財政危機なのか?」)。
消費税については全額、社会保障の財源とし、国民に還元します。
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お金に色はないので、こういったことを言うのは意味がありません。それに、税収全体が減ってしまえば社会保障にまわすお金が当然減ってしまいます。
経済再生と財政健全化を両立するため、消費税率10%への引上げは2017年4月に行います。また、軽減税率制度については、関係事業者を含む国民の理解を得た上で、税率10%時に導入します。2017年度からの導入を目指して、対象品目、区分経理、安定財源等について早急に具体的な検討を進めます。
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消費税率10%への引上げは、経済再生にも財政健全化にもマイナスとなってしまいます。経済再生と財政健全化をするのであれば、消費税率を5%へ戻すことが最も有効な策です。
軽減税率の導入は、消費税の額を少なくし、新たな利権を生み出してしまうことになります。関係事業者の理解を得るために献金をしろということでしょうか。
○速やかな経済対策を
より弾力的かつ効果的な経済財政の運営を推進し、機動的な政策対応を行い、経済再生に向けて万全を期します。総選挙後、速やかに経済対策を断行し、切れ目のない対応をとります。
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これでは何をやるのかさっぱり分かりませんので、評価のしようがありません。また、景気回復を失速させたのは消費税率の引き上げですので、現状で最も有効な経済対策は引き上げた消費税率を元に戻すことではないでしょうか。
エネルギー価格の高止まり等の物価動向や米価下落、消費に関する地域の実情に十分配慮し、足元の経済状況を好転させるため、省エネルギー投資への支援やコスト増加分の適正な価格転嫁を含め、時期を逸することなく具体的な措置を講じます。
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米価下落は、農協の全国組織である全農が引き起こした人為的なものです。2012年に米が豊作だったので、通常であれば価格が下がるところを、全農が価格を維持するために供給を絞ったことが事の発端です。2013年は更に豊作となりましたが、またも供給を絞り価格を維持しました。それにより在庫が過剰になり、在庫が多くなると保管費用が上昇するため、どこかのタイミングで在庫を処分する必要があります。市場関係者はこのことが分かっていますので、全農が在庫処分することを見込んで米価が下落しています。
意図的に価格を操作するなど、社会主義のような統制経済のようなことはやめて、全農に独占禁止法を適用できる株式会社化するか、全農自体を解体するか、どちらかを早急に実施することで日本の農業を強化する方向に持っていくべきです。
○本格的な成長軌道を
日本の「稼ぐ力」を取り戻すため、進化させた成長戦略(日本再興戦略)を確実に実行し、民需主導の経済成長に向けた環境整備を進め、日本経済を本格的な成長軌道に乗せます。
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政府や役所に、今後どの分野が伸びるのかが分かるはずがありません。政府がやるべきことは、民間の邪魔をしないように、余計な規制をなくすことです。どの分野が伸びるか見抜く能力がないのに、勝手に成長すると思い込む分野にお金をつぎ込むのは税金の無駄遣いです。
わが国経済の競争力の向上のため、成長志向に重点を置いた法人税改革を行います。来年度から、より広く負担を分かち合う構造に改革することにより恒久財源を確保した上で法人実効税率の引下げに着手し、数年で20%台まで引き下げることを目指します。改革にあたっては、中小企業・小規模事業者への影響に十分配慮します。
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新たな事業を支援するのであれば、法人税率を引き下げずに消費税率を引き下げることです。ベンチャーなど新たな事業を立ち上げると、利益を出すまでに時間がかかります。利益が出ていないときは法人税を支払う必要はありませんが、消費税は利益が出ていなくても支払う必要があります。今後成長する分野を支援する税制をするのであれば、法人税率を引き下げることではなく、消費税率を引き下げることです。ベンチャー企業が多く出ているアメリカの税制が参考になります(「アメリカには消費税(付加価値税)がない」「何故アメリカは付加価値税を導入していないか」「日本の法人税率は高いのか?」)
人口減少社会の中、わが国経済の成長と国民生活の向上、そして地方創生・女性活躍に資するダイナミックなイノベーションを創造するため、終わりなき規制改革を断行し、この2年間で農業・雇用・医療・エネルギー等、あらゆる岩盤規制を打ち抜いていきます。
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女性の社会進出を促すために配偶者控除を見直すということが言われていますが、結果的に更に少子化を進めてしまいます(「配偶者控除の見直しで更に少子化になる?」)。
規制改革をするのであれば、農業分野では上記のように農協の解体か全農の株式会社化と株式会社に農業への参入を認めること、医療については医療法人の理事長に医師でなくてもなれるなど株式会社の参入を認めること、エネルギーについては発送電の分離を実施することを明記するべきです。また、上述しているような、とんでもない規制が数多くありますので、それを早急に撤廃することです。
今年スタートした国家戦略特区の更なる制度拡充を図ります。
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国家戦略特区を拡充するよりも、上記のような余計な規制を撤廃するべきです。
農協改革(中央会制度など)等については、本年6月に与党で取りまとめた「農協・農業委員会等に関する改革の推進について」に基づき、議論を進め、着実に推進します。
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農産物の販売、農家の資材調達、農家への融資など金融を分離しなければ、農家は農協の意向に逆らうことが難しくなります。これが分離していないので、他より高く資材を買わされたり、貸付金の回収をチラつかせて農協の言いなりにしたりなど、本来農家を支援する立場の農協が逆に農家の足を引っ張ることになっています。上述したように、農協は解体するべきだと思います。
健康医療分野では、新たな保険外併用療養費制度として患者申出療養(仮称)を創設する等、国民の健康回復及び増進・利便性向上に資する規制改革を一層推進します。
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患者申出療養は混合診療を拡大するための仕組みです。患者の選択肢は広がりますが、それと同時にリスクも高まります。混合診療を拡大するよりも、医薬品の審査や治験の体制整備をして保険適用を承認するまでの期間を短縮することに取り組むべきではないでしょうか。
多様な働き方を妨げる規制の改革に取り組み、女性・若者・高齢者等全ての働き手が活躍できる社会を実現するとともに、民間の雇用仲介サービスを最大限に活用して雇用の創出と拡大を図るため、有料職業紹介事業等の規制改革を進めます。
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年代別に失業率をみると、55歳以上の失業率よりも15~24歳と25~34歳の失業率の方が高くなっています。女性や高齢者への雇用支援もいいですが、若者の雇用を確保することを優先するべきです。有料職業紹介事業の規制改革をするより、職業安定所を国ではなく自治体に運営を任せ、地域に即した職業紹介をしてサービスの質を上げるべきです。
同じ地域にある様々な病院・社会福祉施設を一つのグループとして経営することで、住民に対して医療及び介護サービス等を総合的かつ効率的に提供できるような、新たな医療・福祉法人制度を創設します。
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別に新たな制度を創設しなくても、情報共有の仕組みができれば、総合的かつ効率的に医療や介護サービスは提供することができます。そして、社会福祉法人でなければ特別養護老人ホームを運営できないという規制を撤廃するべきです。
○科学技術立国を
基礎研究から生まれた革新的な技術シーズを事業化に導くため、基礎研究、「橋渡し」や産学官マッチング、人材育成、研究開発法人制度の創設・機能強化等、わが国の科学技術基盤を強化します。
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これだけでは具体的に何をやるのかさっぱり分かりません。東大に偏っている研究開発予算の配分は見直した方がいいでしょう。
「はやぶさ2」や新型ロケット等の宇宙開発、未知の深海域を含めた海洋研究開発、核融合研究、再生医療の推進、脳科学研究の推進、「次世代スーパーコンピュータ」や「サイバー・フィジカル・システム・の実現、国力の基盤となる技術の維持・発展等、未来を切り開くフロンティアへ挑戦します。
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民主党政権時に減らされた科学技術予算は増やすべきだと思いますが、それと同時に中国や韓国などが日本の技術を盗むのを防ぐことに、もっと力を入れるべきです。
「総合科学技術・イノベーション会議」の更なる機能強化に努めるとともに、世界に伍するための「第5期科学技術基本計画」を策定し、研究開発の抜本的な充実を図ります。
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各省庁所管の研究開発機関が、省庁を超えて連携できていないことを解消する必要があります。また、社会主義国家ではないのですから、政府が主導しても本当に雇用の創出に繋がるかどうか疑問があります。政府がやるとすれば、イノベーションが進むのを阻む規制をできるだけ無くすことだと思います。
若手・女性研究者等の活躍を促進する取組の強化、高校生段階も含む人材育成を推進します。
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若手研究者の活躍を促進するのはいいのですが、敢えて女性研究者もそこに入れる必要性があるのでしょうか。何でも「女性が活躍する」というのを強調すれば良いというものではないと思います。
ノーベル賞を受賞した青色LEDのような基礎研究、人材育成や産学官連携の強化を図るとともに、研究成果を社会に直結させるための産学官マッチング・協働機能の強化を図り、「世界で最もイノベーションに適した国」を実現します。
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エロクトロニクス分野では、韓国や台湾に比べて圧倒的な数の特許を保有していますが、製品を大量生産する段階になると、韓国や台湾の企業に追い上げられ生産コストで差をつけられ、結果として撤退に追い込まれることが少なくありません。
生産コストの差は、人件費ではなく減価償却費が主な要因となっています。韓国や台湾では大規模な設備投資に対して手厚い税控除などの優遇措置があり、それにより生産コストに日本と大きな差になって現れます。研究開発や設備投資についての優遇措置を講じることが研究成果を社会に直結させ、しかもそれを事業として活かせることができるようになります。
IPS細胞を活用した再生医療・創薬や疾患の克服等に向けた研究を強力に推進し、画期的な基礎研究成果を医療現場に届けます。
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これだけでは、どのように推進するのかが全く分かりません。但し、こういうことの足を引っ張るのは、無駄な規制、省庁の縄張り意識、既得権者の抵抗ですので、そういったものを排除することが先決だと思います。(関連の記事)
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