ヨーロッパでは、移民受入を図る施策はかなりの反発を引き起こすため、移民と一般国民との別を問わない包括的な政策措置をとる傾向があります。移民を一般国民より優遇するような施策は通常は実施しません。また、ヨーロッパの多くの国は移民の永住を容認していないので、移民に寛容なわけではなく、あくまでの労働力不足の解消として移民を受け入れています。

 

同じヨーロッパでも、移民に対する施策には国によって違いがあります。フランスは、国内で生活している人に対しては移民であるかどうかには関係なく、全ての人に等しく適用するという考えを持っています。移民に対しては、フランスの価値観と伝統に同化していくような支援をしています。英国は、流入してきた移民により新たな形の文化の多様性を認めるという考え方をしています。移民は異質な存在だと認識した上で、移民の民族や文化などを認め、移民の言語による教育を推進することを重視しています。フランスは同化主義、英国は多元化主義であり、他の国はフランスに近い国もあれば英国に近い国もあります。

 

移民の政治的な権利に対しては、ヨーロッパではほとんど認められていません。移民に対して選挙権と被選挙権を与えたのは北欧諸国とオランダの極一部の国だけで、それも地方選挙に限定されています。今後についても、移民に対して政治的権利を広げるという動きはありません。移民が帰化すれば、参政権は当然付与されます。その帰化についても、国によって政策が大きく異なっており、二重国籍を認めている国と認めていない国に分かれています。

 

現在のヨーロッパでは、移民流入によって様々な問題が発生したことから、選択的移民という概念が移民政策の主な潮流となっています。この移民政策の基本方針は「高度人材の受入促進」「非熟練労働者の制限と不法労働者の管理強化」です。

 

ヨーロッパでは、高度な技術や技能を持った労働者の不足が深刻化しています。高度な技術や技能を所有している移民や入国者に対しては、受入や定住権の条件を緩くして、そうではない移民や入国者に対しては条件を厳しくしています。

 

ドイツでは、高度人材の不足の解決のために、失業者に職業訓練をすることによって労働力不足を補うという意見もあります。新たに移民を受け入れるよりも、国内の失業者を活用するということです。つまり、労働力不足は移民の受入ではなく、国内の失業者によって補うという考え方をとっています。

 

 

ヨーロッパで発生した移民に関する問題と最近の各国の移民政策をみると、日本が単純労働者として移民を受け入れると、多くの問題が発生し、コスト負担も大きくなることが予想されます。もし移民を受け入れるとしても、高度な技術や技能を保有している移民と、単純労働しかできない移民とでは、受入については異なる条件を設定する必要があります。安易な移民受入の政策を実施してしまうと、ヨーロッパのような移民問題が生じるでしょう。また、移民受入について予算を付けるのであれば、少子高齢化対策として、生まれてくる子供を多くするような施策に予算を投入すべきではないでしょうか。



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