政府が少子高齢化に伴って減少する労働力人口の穴埋め策として、移民の大量受入の本格的な検討に入ったと報じられました。しかし、これまで多くの移民を受け入れていたヨーロッパでは、移民の流入によって様々な社会問題が発生しており、移民を制限する方向に向かっています。

 

そこで朝日新聞は、上記のようなヨーロッパの姿勢を社説で批判しています。

・移民の排斥などを訴える右翼思想の政党がヨーロッパで勢力を広げている。

・排外的な主張が若い世代の支持を集めていることに憂慮している。

・ヨーロッパの寛容はどこへいってしまったのか。

・社会が非寛容に傾くことに対して早急に手を打つべき。

・偏狭な主張にはしっかり反論し、難題について丁寧な説明をするべき。

 

 

大手マスメディアの多くは、移民受入に賛成の立場をとっています。賛成と反対のどちらの立場をとるのかについては、それぞれの考えがあるので単純にどちらが良いとか悪いとかはここでは問いません。しかし、移民受入に賛成の立場をとっているマスメディアは、その主張にマイナスになるようなことを意図的に報じないようにしています。そうなると、一般の人が移民受入の是非を判断することができなくなりますので、そのような報道姿勢は絶対に改めるべきです。

 

日本での移民大量受入について考えるには、これまで大量に移民を受け入れてきたヨーロッパの状況を知ることが参考になります。ヨーロッパが何故移民を受け入れ、どのようなことが起こり、その結果として現在は移民に対してどのような政策をとろうとしているのかを見ていきましょう。

 

ヨーロッパの移民受入は、1960年代の景気拡大による労働需要の高まりと出生率の低下によって、特に低熟練労働者が不足したことが背景にあります。西欧や北欧の国が、旧植民地の国や南欧、トルコなどからの移民によって、労働力不足を補っていました。ヨーロッパが移民を受け入れた目的は、このような低熟練労働者を中心とする労働者確保にありました。

 

南欧諸国からの移民労働者は、その後に自国に戻りましたが、他の地域からの移民労働者の大半は帰国しませんでした。彼らはそのまま滞在するだけでなく、数年後には家族を呼び寄せたことにより、移民人口が急速に増えました。

 

ヨーロッパの大多数の移民は、各国の国民全体に比べて社会的・経済的環境が大幅に低い水準にあります。低熟練労働者の職は、次第に低賃金の国への移転や機械化によって失われていき、結果として多くの移民が職を失いました。自国とは異なる文化環境にあることも重なり、移民の子供たちの中には十分な教育を受けることができなかった人も少なくありませんでした。そうなると、移民の子供が大人になっても、低賃金の職に就くことになったり無職になったりすることが多くなり、貧困から抜け出せなくなるという悪循環に陥ります。また、ヨーロッパでは人種差別が歴然と残っており、低熟練労働者だけでなく社会的に成功した移民に対しても公然とした差別は少なくありませんでした。

 

移民先の言語ができないことや十分な教育を受けていないことで、移民やその家族が就職できずに生活保護を受けていることが多いという問題があります。移民の犯罪率が高いことも統計的に示されています。

 

宗教的な摩擦も起こっています。ヨーロッパではキリスト教徒が多数を占めていますが、イスラム教徒の移民が押し寄せたことにより、宗教が原因となって様々な問題が発生しています。例えば、学校給食における宗教的禁忌です。イスラム教では、豚は不浄なものであり食べることを禁じています。英国では、学校給食の配膳をしていた女性が、イスラム教の生徒に豚肉のハムを提供して解雇されました。ドイツでは、イスラム系団体が学校給食で豚肉の使用中止を要求しています。

 

フランスでスカーフを着用しての登校が法律で禁止されたことも問題になりました。イスラム教徒では、女性の外出時の服装制限があり、女性はヒジャブといわれるスカーフを着用して外出する習慣があります。スカーフ着用禁止は、イスラム教徒の権利を侵害していると主張して反対しています。フランスでは、宗教と社会の分離という原則があるので、公共の場所である学校に宗教を持ち込むべきではないことから、この法律が制定されました。

 

移民の急激な増加によって、公共サービスを拡大させる必要があり、それが地方自治体に対する負担増になっています。移民やその家族は一般の国民に比べて失業率が高くなるため、税収や雇用保険・健康保険・年金などの保険料と生活保護費や保険給付などを比較すると、負担の方が多くなってしまうのです。また、失業した移民を帰国させるための費用も大きな負担となっています。

 

英国では、中国系移民グループの政治活動が活発になってきており、英国の国益ではなく中国系住民の利益擁護を目的としています。現地に馴染まない移民が帰化したり、移民に参政権を付与したりすると、こうした問題が発生することになります。こうしたことが拡大すると、移民による国家侵略という自体が起こる可能性もあります。


このように、ヨーロッパでは移民受入によって、様々な問題が生じています。次回のブログでは、移民受入についてヨーロッパの国がどのような政策をとっているのかを紹介します。



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