「消費税率を10%に引き上げられない状況になるとアベノミクスが成功しなかったと見られる可能性がある」と、谷垣法務大臣が軽井沢で行った講演で言ったようです。

 

この発言の内容は非常におかしいと思います。どこがおかしいのか、アベノミクスとはどんなものなのかを確認しながら見てきます。

 

アベノミクスは、デフレからの脱却と富の拡大を目指すための経済政策で、それを実現するための3本の矢が以下のものです。

アベノミクス
資料出所:首相官邸ホームページ

 

金融政策で物価を上昇させ、財政支出と規制緩和により需要を増やして経済成長をさせるのが、アベノミクスです。まず、金融政策によってデフレから脱却することが第1歩となっています。

 

それではデフレとはどのようなものなのでしょうか。経済学者のケインズは「物価下落が続くという予想が広がっている」「物価の下落により所得が縮小し実質賃金が下落して貧困化する」ことを、デフレだと言っています。つまり、物価が下落して所得が減っていくことが、デフレなのです。

 

 

一方、消費税率をアップさせると、どのような影響が出るのでしょうか。以前の記事で書いたように 、消費税率を引き上げると、企業の利益を減らし、人件費も抑制されるようになります。企業の利益が減り、人件費が抑えられて個人消費が少なくなれば、物価は下落してしまいます。

 

消費税率を引き上げると、デフレを促進させてしまいます。従って、アベノミクスと消費税率の引き上げは、相反するものだということです。

 

アベノミクスでデフレを脱却しようとしているのに、デフレを推進するような消費税率アップを同時に行っているのが現状です。こんなことでは、アベノミクスが成功するとは思えません。実際には、消費税率を引き上げることは、アベノミクスを失敗させるための施策だからです。

 

谷垣氏は「消費税率を10%に引き上げられない状況になるとアベノミクスが成功しなかったと見られる可能性がある」と発言したようですが、本当は「アベノミクスを成功させないために消費税率を引き上げる」と言わなければなりません。

 

 

谷垣氏は財務大臣を務めていたこともあり、財務省の主張どおりのことを発言する政治家として知られています。財務省に洗脳され財務省の主張を信じ込んでいるのか、財務省に取り入るために財務省の主張どおりのことを言っているのか、どちらなのかは分かりません。しかし、間違いなく言えることは、財務省の主張に沿うことを推し進めようとするのは、日本の国益に反しているということです。

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