ドストフスキー『未成年』第二部
未成年(上) (新潮文庫)Amazon(アマゾン)449〜3,438円未成年(下) (新潮文庫)Amazon(アマゾン)226〜3,438円『未成年』全三部のうちの二部まで読んだ。第一部では謎の男である実の父ヴェルシーロフの悪い噂と、美しいしかし悲劇的な真実が明らかになった。打って変わって第二部では、ヴェルシーロフはほとんど登場せずに、ある若公爵の恋物語が中心になる。あまりにややこしいので整理してみよう。ソコールスキー老公爵の娘はカテリーナ。カテリーナはアフマーコワ男爵に嫁いだのだが(だからアフマーコワとも呼ばれる)、そこには先妻との娘リディアがいた。そのリディアを妊娠させ子供が生まれる前に去ったのがソコールスキー若公爵(老公爵とは全く関係がない)。未婚の母となるリディアの窮状を救おうとヴェルシーロフが結婚を申し出た(それが少女を誘惑した中年男のスキャンダルとなる)。ヴェルシーロフの娘は二人いて、一人目は死別した妻との間に生まれた姉アンナ、二人目が主人公と同じ後妻(結婚していないけど)の子リーザ。前者は貴族だけど、後者は家僕の子(戸籍上は)。 第二部で問題となるのは、彼らが誰と結婚するのか。そして、その情報に全くついていけない主人公の賭博熱。まずはカテリーナの再婚問題(アフマーコワ男爵はドイツで娘ともども亡くなっている)。そもそものスキャンダルで、ヴェルシーロフはリディアという小娘ではなく、瀕死の男爵の若い妻カテリーナを狙っていて、振られたから意趣返しでリディアを誘惑した、という噂があった。それはおそらく一部は本当で、ドイツの温泉地でカテリーナとヴェルシーロフは恋仲にあったようだ。 ところで、主人公はソコールスキー老公爵家で働いているのだけれども、そこで出会ったカテリーナの「何よこの汚らしい下僕!」という目つきに一瞬で参ってしまったらしい。二部になって急に、彼がカテリーナにゾッコンであることが明かされる。 ところが、カテリーナは結局、ぽっとでのどっかのビオリングとかいう男爵と結婚するという話に。 「待ってよ〜カテリーナ!」と馬車を追いかける主人公が、ビオリングの足を踏ん付ける。なんだこの虫けら!えい!っと従僕にほっぽり出される私。辱められた!決闘だ! なんて思う暇もなく、決闘を準備していたのは父ヴェルシーロフだった。カテリーナが息子の童貞を奪おうとする淫乱な女であるという手紙をカテリーナとビオリングに送りつける!(何したいんだこのおっさん) 次にソコールスキー若公爵の結婚。主人公にとって衝撃的な事実が第二部の中盤で明かされる。主人公はなぜかこの若公爵と友達となり、多額のお金まで借りて、一緒にルーレット賭博で散財するような仲になっていた。それは彼が思っていたような友情によるものではなかったのだ。実は若公爵は主人公の妹リーザとできていて、なんと妊娠までさせていたのだ(こいつ結婚前の少女を妊娠させてばっかりだな)。リーザはヴェルシーロフの不義の子だから、常識的に考えて結婚はできない。ところが、リーザが言うには、「彼が私に惚れているのよ。彼の結婚のお願いを私が今まで断ってきたの」だそうだ(ドストエフスキーでの妹っていっつも主人公の何倍も賢いし冷静だよな)。ソコールスキーにはアンナ(リーザの姉)との結婚の噂もあったけど、正式に断りを入れて、妹と結婚するらしい、良かったね! とはならない。若公爵は主人公に次々と悪事を告白する。そもそもドイツでリーザと付き合い始めた時(それってアフマーコワの娘さんを妊娠させた直後か?)すでにカテリーナも好きになっていた。そして、リーザが結婚を承諾した後、アンナの家に行ったけど、それは断りに行ったのではなくて「結婚を申し込みに行ったのだ」と。でも彼が妹と付き合っていることを百も承知のアンナは、その話が出る前にやんわりと断ったのだと。で、さらに借金で破滅し、株券偽造事件に関わっていたと強請られた若公爵は、主人公と共に一発逆転を狙ってルーレットに行く!ふーーー、どーなってんだこの世界。最後にアンナだ。アンナは若公爵の求婚を断って、別の男と結婚することに。それはなんと、ソコールスキー老公爵(カテリーナの父だ)! その爵位が狙いらしい、社交界での野心があったんだね!老公爵とヴェルシーロフは親友。お互いの娘と恋仲であったり、結婚するということになる。えぐいな。主人公は主人公で、カテリーナを親父と奪い合い、姉は雇い主と結婚し、妹は親友(と思っていた男)に妊娠させられ、ただれているにもほどがあるだろ!え〜っと、カテリーナというファム・ファタルに翻弄される男たちの物語と裏表紙には書いてあるんですが、それどころじゃなくないですか?