あけましておめでとうございます。
見事にまたゼーゼーいいながら年越しの長男。
喘息なのかなんなのか、再び小児科に借りたネブライザーで吸入しています。
年明けすぐ、また入院なので、なんとか良くなって欲しいなぁ。
9月に始めたこのブログは、
半分は情報を求めている同じ病気の経験者やそのご家族のために、
半分は、病気自体の啓発と私の備忘録として書いています。
他の上手な方のブログを拝見していて、
もう少し1つの記事を短く、読み物風に書いた方が読みやすいとは思うのですが、
知りたいと思っている人になるべく情報をたくさん伝えたいというのが目的なので、
このまま、今年もぼちぼち更新出来ればと思っています。
今回も長いです(笑)
●局所治療の(患者からみた)基本情報
ブログの最初のほうに、治療などの基本情報をわかる範囲で記載しましたが、長男の局所治療の話に入る前に、局所治療についての基本情報について簡単にまとめてみようと思います。
私が治療を受けた時と比べ、局所治療の方法はかなり増えていて、私も長男出産前にかなりガイドラインを読みましたが、具体的にはわからないことが多かったので。
あくまで経験者の素人が得た知識を元に記述しています。雑談程度の情報とお考え下さい。症状は千差万別で、治療法は異なりますので、専門医の助言を受けてください。
●網膜芽細胞腫の局所治療とは
簡単に言えば局所治療とは、全身麻酔下での手術による外科処置のことを指します。
例えば、片眼性で即摘出手術を行った場合などは、局所療法を経ずに治療が終わる場合もあります。
①片眼性でも眼球温存を選んだ場合。
②両眼性で、両眼あるいは視力の良い片眼の温存を選んだ場合。
は、全身化学療法で腫瘍のサイズや勢いを抑えた後、いくつかの局所療法を組み合わせて、治療を進めるという患者さんが多いように思います。
さらにいえば、この局所治療でも腫瘍の勢いを抑えられない場合などは、他部位への転移可能性があれば摘出、視力温存などを重要視する場合は放射線治療が次の選択肢になります。
●局所治療の種類と受けられる場所
現在、一部の大学病院などを除いて、網膜芽細胞腫の局所治療の多くは東京の国立がん研究センターで行われている、といっていいと思います。
日本では国がんでしかできないという治療もあり、私も、本当に北海道から沖縄まで、全国の患児やその親と知り合いになりました。
実際の局所治療の種類は前掲した
こちらに記載のあるガイドラインやリンクを参考にしてください。
ごく簡単に記載すると、
①光凝固(レーザー) …その名の通り、レーザーを腫瘍に当てる
②選択的眼動脈注入(眼動注) …目の動脈のみに抗がん剤を注入する。
③冷凍凝固 …腫瘍を凍らせて破壊する
④硝子体注入 …直接注射で目に抗がん剤を注入する
⑤アイソトープ …放射線を発する金属を数日間腫瘍部分に張り付ける
といったところでしょうか。
上記①~④は同時施術が可能で、⑤は長男は経験したことがないので、同時に他の治療ができるかわかりません。
①レーザー
一番頻繁に行われるもので、回数に制限がある、という説明を聞いたことはありません。ただ、腫瘍が大きかったり厚みがあると効果は薄く、長男は他の治療と組み合わせてやることがほとんどです。
②眼動注
日本で開発された治療法、とよく文献で目にします。
そけい部(太ももの付け根)の動脈を数ミリ切開し、そこから目の動脈の入り口までカテーテルを挿入。そこでバルーンと呼ばれるものを膨らませて他の臓器への通り道を塞ぎ、目の動脈だけに抗がん剤(メルファラン)を注入する方法。両眼の場合も切開は1カ所で治療ができます。
そけいの傷は本当に数ミリで、きちんと傷が閉じれば次の日から簡単な防水処置で動きに制限はありません。縫合も基本はしないと思います。
ただし、抗がん剤により眼動脈がダメージを受けるため、出来る回数には限界があります、と説明を受けます。造影剤を流して血管の状態を確認しながら手術を行います。
長男は左右とも10回に近い回数行っていますが、数回で「限界」と言われた患者さんも知っています。
副作用として、手術後の食欲不振や嘔吐、目の腫れや麻痺などがあります。
長男はありがたいことに一度も吐いたことはありませんが、吐く子は結構見てきました。酷い子でも翌日日中くらいまでには回復しているように思います。
目の腫れはあまり頻繁には見ませんが、長男も9回目で腫れと麻痺が出たのと、やはり晴れた、麻痺が出たという子を何人か知っています。
③冷凍凝固
腫瘍は高温や低温に弱いそうです。冷凍凝固は目を切開して低温の器具を腫瘍に当て、腫瘍を凍結、破壊する治療法です。
副作用としては、切開するので白目に小さな傷が残り(縫う場合もある)、目は結構腫れます。長男は0歳のころ、右目に2回ほど行いましたが、5日ほどは腫れが目立って痛々しかったです。
また、リスクとして説明されたのは、視力へ影響する黄斑などへの施術はできない(可能でも、視力が犠牲になる)こと。腫瘍だけピンポイントで凍らせても、正常な細胞にも当然ある程度伝わるため、黄斑部近くなど、危うい場所には本来選択しない治療法だそうです。腫瘍が目の奥にある場合もできない、と言われたことがあります。
腫瘍への効果はそれなりに期待できる治療でも、出来る場所などが制限される、と私は認識しています。
④硝子体注入
直接注射で硝子体に抗がん剤を注入する方法です。これも日本で開発された、と聞いています。
腫瘍は脆く、大きくなっていく途中ではがれたり崩れたりするそうです。そういった形で目の中に細かく散らばってしまったがん細胞は、またそれぞれが活性化して成長することがあり「播種(はしゅ)」と呼ばれます。硝子体注入はそういった播種や硝子体内に漂っている腫瘍に効果がある、と説明を受けました。
反対に、網膜に居座る大きかったり厚みのある腫瘍などへの効果は期待できない、とも言われたことがあります。
播種は完全に死滅したか判断が難しく、硝子体注入は何度か繰り返して確度を上げる場合が多いそうです。長男も数回行っていますが、目が晴れたりすることはなく、白目にほんの少し出血した針の跡?がある程度でした。
⑤アイソトープ
これだけ、長男は行ったことがありません。周りの患者さんから聞いた範囲でしか記載できません。ご了承ください。
手術でルテニウムと呼ばれる放射線を発する金属片を、目の外から腫瘍部分に縫い付け、腫瘍にのみ放射線を当てる治療法です。数日後、手術で取り除くそうです。
通常、網膜芽細胞腫の放射線治療は、X腺をこめかみから照射する方法なので、それに比べ、放射線の影響を受ける正常な細胞部分を最小限に抑えられるそうです。
網膜芽細胞腫の腫瘍は放射線への感度が高い(治療効果が出やすい)とされています。治療効果もあるそうですが、やはりできる場所は腫瘍の位置によって限られるようです。
そして外科治療とはいえ放射線が発生する処置のため、アイソトープのみ、治療中は隔離された個室で過ごすことになります。親は付き添いできるそうですが、被ばくの可能性も0ではなく、例えば、次子を考えるお母さんなどには、「別の方が付き添った方が」と勧められることもあったと聞いています。
短期間で手術が2回必要なこと。縫い付けている間は子供が痛がることもあり、隔離された部屋でひたすらDVDやおもちゃで気を紛らわせなければならず、それが大変、という声をよく聞きました。
以上が、経験と伝聞による患者から見た局所治療の概要です。
レーザーは他の大学病院で受けた、という話を聞いたことがありますが、そのほかの治療を、国立がんセンター以外で行った、という話は私は知りません。
思いついたことを羅列しています。適宜修正するかもしれません。
●治療の頻度と入院生活
これについても、私は国立がんセンたーの場合しか知りません。ご了承ください。
局所治療は、効果を見るために一定の期間が必要なこと、また、乳幼児への全身麻酔を頻繁にかけるというリスクのために、「約1カ月に1度が目安」と説明されます。
そして、局所治療が1度で終わった、という話はほとんど聞いたことがありません。
そのため、局所治療を受けに全国からくる患者さんたちは、毎月1回、上京して入院→手術→退院→来月の予定、というサイクルで治療を続けるケースが多いです。
数カ月で終わることもあれば、一定の期間後に再発して再度局所治療にカムバック、という例もたくさん知っています。
入院期間は治療内容によって異なります。
レーザーや冷凍凝固、硝子体注入は、意外と短く、手術日を含む2泊3日です。(前日午前入院→手術当日→翌日退院の流れ)
眼動注の場合は、手術前後に1日ずつ追加され、3~5泊になることが多い(手術の曜日によって土日に外泊できたりやや変動がある)です。
やはり、動脈を切開して抗がん剤を血管に流すということで、手術前後の管理が他の治療より厳しい、と認識しています。
アイソトープは手術~数日間隔離して治療→手術と、他の治療と異なりますが、知人の治療の話を聞く限りでは、1週間程度になるようです。
アイソトープは前述のとおり私は経験がなく、隔離された環境で過ごすため、ここでは記載しません。
他の治療の際の入院生活について少し記載します。
手術前(2日前~前日)にすることは、
①眼科診察(眼底検査)と手術説明
②採血・身長体重測定
③麻酔科の問診
くらいです。
大抵、入院手続き後、目薬をして散瞳して眼科で眼底を診てもらい、治療(VECや局所治療の効果)状況を確認してもらいます。手術方針の説明や、手術の順番(後述)の説明もあります。
国がんの先生の眼底検査は驚くほど短いです。通常、子供の眼底検査は、暴れるのでタオルなどで体を固定し、場合によっては開眼器で目を開かせて行いますが、やはり子供は泣くし、時間もかかります。
主治医のS先生は、親が抱っこしたり、座らせたまま、オモチャやぬいぐるみで視線を誘い、ちらっと見るだけです。「え?見えた?」と思ってしまうくらい短いです(笑)そのため、長男はこの眼底検査で泣いたことがほとんどありません。
もちろん、初診の時などは違うと思います。しかし、手術の前で、大元の病変の位置や程度がわかっている場合、「手術時に全身麻酔でしっかり隅々まで見るので、押さえつけて無理やり診る必要はない」ということだと思います。
いつも国がんの眼科外来は、経過観察や紹介を受けてやってきた網膜芽細胞腫の子供で大混雑しています。それを限られた人数の専門医が診ていることで否応なく診察技術が向上している、ということでもあると思います。
親としては、診察が短時間で済んで本当にありがたい、という反面、「この人がいなくなったら誰が全国の患者を診るんだろう」という俯瞰的な不安もあります。
病棟で知り合ったお母さんたちとは、「本当に、S先生が倒れたら私たちどうなるんだろうね」という話題がいつも出るくらいです。
採血や身長体重測定は、病棟内で看護師さんや小児科の先生の手が空いた時に。特に小さい子は押さえてしなければならないので泣きますが、こればかりはどうしようもありません。
VEC治療後などで、ポート(体内に埋め込んだカテーテル)が残っている場合は、そこから採血している子もいます。
また、服薬がないかなどは、同じく手が空いた時に薬剤師さんが来て聞いてくれます。
麻酔科の診察は手術前日の午後、採血結果などをもとに手術時の全身麻酔の説明を受けます。
長男はすでに10回を超える局所治療をしているので、(そして小児喘息疑いで麻酔には神経を使うため)、もはや健康相談のような問診になっています。
手術前は当然絶飲食になりますが、手術時間が早くても、手術前日の夕食までは食べられるので、眼科診察、採血、麻酔科問診が終われば、病棟ではプレイルームで他の子と遊んだり、隙間にお風呂に入ったり、特に制限なく過ごせます。
国立がんセンターでは、週2回、手術日が決まっているため、月1度のペースで局所治療をしていると、同じ子と数カ月入院日が重なり、顔なじみになったりします。
手術は1日3~4件入っていることが多く、場合にもよりますが、年齢、月齢の低い子が早くなることが多いです。
長男が0歳のころはぶっちぎりで朝1番でしたが、最近は2番、3番ということも増えてきました。
当然、朝から食事は禁止。飲み物は手術数時間前まで飲めますが、「お腹すいたー」と騒ぐのをごまかしながら遊んで時間を過ごすので、手術の順番が後ろのほうだとそこで苦労します。
手術前は、前開き(カバーオール)の服を着て、散瞳の目薬をするくらいで、手術室への移動も抱っこや普通に歩いていきます。
手術中は、PHSを渡され、病院内で待機。大体の親は食事をとったり洗濯をしたりベッド回りを片づけたり、手術の日は子供は入浴できないので、親だけシャワーを浴びたり。
手術、と聞いて想像する、「ベンチに座って祈って待ってる」という感じではありません。
病気と戦ってきた親は強いです。
人によっては1年以上かかる局所治療。必ず両親が手術に来られるとも限らず、付き添いは片親だけで頑張る、という場合も多いです。お母さんが多いですが、下の子の出産などでお父さんだけ、という場合もよく見ます。
食べられる時に食べて、やれるときにやっておく。でないと手術を頑張ってきた子供を元気に迎えてあげられないし、術後は副作用で吐いたり、点滴や導尿カテーテルが取れるまで付きっ切りになるから、トイレすらなかなか行けなくなる。
そうやって黙々と雑用をこなしながら、たぶんみんな、「無事に終わって、早く帰っておいで」「どうか結果が良くなっていますように」と考え続けていると思います。
手術が終わると、PHSに連絡があり、手術室隣の回復室に迎えに行きます。執刀医から状況や説明を聞き、次回の治療について相談し、麻酔から回復して戻ってくる子供を待ちます。
回復室では点滴の他、導尿カテーテル、血圧計、心電図がつけられていて、抱っこはなかなか大変ですが、月齢が低いと麻酔後は泣いている場合も多く、看護師さん達がラインをさばいて抱っこさせてくれたり、寒くないかタオルを持ってきてくれたり、細かく様子をチェックしてくれます。
1時間ほど回復室で様子を見て、容体に異常がなければ、心電図と血圧計を外し、病棟に移動します。
手術から2時間ほどで、飲水ができて、吐いたりしなければしばらくして食事ができ、食事がしっかりとれて元気なようなら、導尿カテーテルと点滴が外れます。
副作用で嘔吐がひどい場合や、麻酔がよく聞いて食べずに眠ってしまっている場合などは、翌朝くらいまで点滴をつけていることもあるようです。
手術の順番にもよりますが、たいていはその日の夜までには点滴などが取れることが多いかなあ、という気がしています。
レーザーなどの場合は翌日朝、診察を受けて異常がなければ退院。
眼動注の場合は、翌日そけい部の傷の様子などを診て、一日空いて翌々日に眼科診察を受けて退院、という場合が多いです。土日にぶつかるとさらに一泊延びてしまいますが、体調に問題なければ外出もできるため、近郊に住んでいる場合は自宅に一度帰ったり、遠方から来ている場合は近くのアフラックハウス(小児がん患者支援のための宿泊施設)などに外泊する方もいらっしゃいます。
ざーーーーっと羅列してしまいました。
私も、文献でいろいろ読んでいたくせに、局所治療のサイクルが分からず、最初の頃はハラハラおろおろしていました。
残念なことに、これだけ局所治療を続けていると、顔見知りの患者さんも増えて、手術のサイクルにも慣れます。
ただ、やはり、PHSを握りしめて半分上の空で待つ手術の時間、手術時間が短くても長くても不安になり、回復室まで急ぎ足で行くあの瞬間だけは、慣れないなぁと思います。
次回からは、長男の局所治療について書いていこうと思います。