以前、ご紹介した
松本直美『名曲のたくらみ』では
女性作曲家を代表して
ヒルデガルト・フォン・ビンゲンが
取り上げられています。
フィーチャーされているのは
「ヒルデガルトが残した楽曲で、
現代もっとも頻繁に演奏される」という
《聖ウルスラの祭日のための典礼聖歌》から
〈おお、あなたの教会〉O Ecclesia
自分の場合
ヒルデガルト・フォン・ビンゲンのCDは
中世音楽アンサンブル
セクエンツィアの演奏で
何枚か持ってますけど
あいにくと
〈おお、あなたの教会〉が
収録されたものはなく。
セクエンツィアも
録音してるんですが
そのディスクをまだ
入手できていないのでした。
そしたら今月の5日
国会図書館からの帰りに
新宿のディスクユニオンで
アノニマス4の演奏盤を
見つけたという。

(Harmonia Mundi France:
HMU 907200、2001.12.31)
録音は1996年11月13〜18日。
タワーレコード・オンラインだと
上に記した通り
2001年リリースとなってますけど
ライナー小冊子では
マルPとマルが
1997年となっています。
アノニマス4は
アメリカの
女性アカペラ・カルテットで
1986年に結成されましたが
30年後の2016年に
解散しているようです。
いっとき
古楽ファン界隈で話題となり
名前だけは知ってましたので
直輸入盤ではありましたが
文句なく購入しました。
パソコンの音楽プレーヤーで
CD情報を取得すると
英語と日本語の両方が
出ましたから
もしかしたら邦盤も
あるのかもしれません。
曲名は邦訳されているのに
アーティスト名は
Anonymous4と
英語のままなのが
解せませんけど。
取得したCD情報では
11,000 Virgin - Chants for the
Feast of St. Ursula
という原盤タイトルが
「11,000の処女殉教者
(聖ウルスラの祝日の聖歌)」
というふうに訳されています。
O Ecclesia は
「おお、エクレジアよ」
と訳されていましたので
ブログのタイトルとして
そちらを採用しました。
エクレジア ecclesia
というのは
AIによる概要によれば
古代ギリシャ語で
「呼び出されたものの集まり」
を意味する言葉だそうです。
手元の辞書によれば
古代ギリシャ語では
「((特にアテナイの))人民会議」
キリスト教だと
「((教徒の集合体としての))教会」
という意味だと書かれています。
松本の『名曲のたくらみ』で
「あなたの教会」
と訳されているのは
〈あなた=神〉を意味し
地上の教会とは別の
霊的な見えない教会を
意味しているものでしょうか。
聖ウルスラと
1万1千人の処女殉教者については
説明すると長くなるので
Wikipedia の
「聖ウルスラ」の項目を
ご参照ください。
ちなみに
松本の『名曲のたくらみ』でも
聖ウルスラ伝説について
説明されています。
解説書(ライナー小冊子)は
表紙・裏表紙を入れて
96ページもありますので
CDを収めた
プラスチック・ケースと
別になっており
筒形の紙製スリーブに
封入されています。

(上右がプラケース、下がライナー小冊子)
ライナー小冊子の表紙
プラケースのジャケット
紙製スリーブの表紙は
全て同じデザインなので
ライナー小冊子の裏表紙の写真も
アップしておきましょう。

表紙・裏表紙ともに
ヒルデガルドの著書から
採ったもののようで
表紙は
「聖ヒルデガルドと季節の移り変わり」
St. Hildegard and the Seasons
裏表紙が
「あなたの教会が修道士と乙女を守る」
Ecclesia holding monks and virgins
というタイトルだと
ライナー小冊子の最後に
英語で記されていました。
さて
前おきが長くなりました。
先日ようやく
聴いてみたんですが
アンサンブルの美しさに
瞠目いたしました。
YouTube に
〈おお、エクレジアよ〉が
アップされていましたので
下に貼り付けておきます。
念のため
アドレスの方も
貼り付けておきます。
タイトルが
SEQUENCE: O Ecclesia
と出ますけど
Sequence は
「続唱」という意味で
正確にはラテン語の
Sequentia でしょう。
最初にふれた
声楽アンサンブルの
セクエンツィアという
グループ名は
そこから採られています。
ヒルデガルトの曲は
彼女が修道院長を務める尼僧院で
歌われることを前提としてます。
ですから
女性の斉唱による演奏は
極めて妥当なものといえましょう。
松本は『音楽のたくらみ』の中で
次のように書いています。
彼女の聖歌はオリジナルでは女声斉唱による単旋律なのだが、現代の演奏では、演奏効果を高めるために、ドローン(単音を長く引き伸ばすベースラインのこと)が付け加えられることが多い。また場合によっては、聖歌の歌詞のふさわしい箇所で、(イエスの御声や悪魔が登場する箇所など)男声が加わることもある。(p.174)
演奏のスタイルとしては他に
独唱が先唱となって
斉唱に続いたり
独唱と斉唱で交互に歌う
というスタイルも
あったりします。
必ずしも
女性斉唱のみではなかったのか
中世ではなく
ルネサンスから
バロックにかけての
教会の演奏作法に則って
演奏法が解釈されているためかは
よく分かりません。
まあ、中世の奏法にしても
研究者によって解釈が異なるのが
実情なんでしょう。
ドローンが付け加えられるのは
現代風アレンジだ断言するのも
ためらわれるところで
悩ましいところです。
本盤のトラックは18ありますが
トラック1〜7が Vigil
(夜の勤行[ごんぎょう]
すなわち祝祭日の前夜の祈り)
トラック8〜11が Lauds(朝課)
トラック12〜18が Vespers(晩課)
というふうに
全体が3部に分かれています。
全てのトラックが
ヒルデガルドの曲ではなく
典礼の進行に合わせ
交唱、応唱、讃美歌や
詩篇や聖書の一節の
詠唱などが挿入され
それらの一部として
ヒルデガルトの曲も歌われる
という構成になっています。
こういう時こそ
ライナーの解説の邦訳が
ほしいところでして
翻訳付きの邦盤があれば
買っちゃうかもなあ。
ないかもしれないけど(笑)