2019年のアメリカ映画。クリント・イーストウッド監督、ポール・ウォルター・ハウザー主演。

舞台は1986年のアトランタで、実際に起きた爆破テロ。その爆弾が入ったリュックを見つけて通報した警備員・リチャードの実話をもとにした伝記映画。

この爆破テロ、死傷者は出たものの、被害の拡大は防ぐことができたことで、一時は「英雄」とメディアに持ち上げられるが、すぐにリチャード自身がFBIによって捜査対象にされていることが報道され急転直下、一気に極悪人扱い。どうなってんの?

これ、売れる記事が書ければあとはどうでもいいメディアと、自分の管轄地区で起きてしまった事件でとにかく早く犯人を捕まえたことにしたい警察の、自分の利益や保身のためなら真犯人なんかどうでもいいという輩が起こしたたいへん胸くそ悪い事件、なんだけど。なんだけど、ねぇ…。

っていうのは、このリチャード・ジュエルが、なんつーか、基本的に親切で実直な男なんだと思うし、最初は、なんじゃこのえん罪事件ゆるせねーふざけんなーってなるんだけど、その気持ちを一瞬で帳消しにするほどリチャードがアホすぎて(笑)、「えん罪か何か知らんけど、お前なんか捕まっとけ!」っていつの間にか思っちゃうんですよ、こっちが!なにこれめっちゃ怖い!!

だってこのリチャードっていう男、警察とか軍とかの権威に憧れすぎて、自分を大きく見せようとしたり、警備員になったらそのパワーを管轄外まで濫用してクビになったり(笑)、あと若干虚言症もあるし…。それで、お母さんとか、唯一の知り合いの弁護士が、リチャードを助けるためにがんばってんのに、当の本人がFBIという権威にひれ伏して、明らかな証拠のねつ造にすすんで協力…。だから「もう知らん!お前なんか捕まっとけ!」なんですよ。

結局、リチャードのえん罪は晴らされるんだけど、濫用される権力への怒りよりも、目の前になんらかの被害者がいて、でもその被害者が、まさにその加害者であるところの権力に喜んで追従しているとんでもないアホだった場合、それでもその人のためにあなたは怒れますか?行動できますか?どうなんですか?できないでしょ?あなたの義憤なんてしょせんインチキなんですよ、って言われてるような映画でした。だってその通りなんだもの。

うぐぐ…クリント・イーストウッド、なんていう映画を作るんだこの人は…。これ観たら、もう何も言えん。自分が信じられなくなる。



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