世界で絶賛っちゅう濱口竜介監督の映画(2021年)。村上春樹の短編小説を原作に…というか、一部だけ借りた、オリジナル映画らしい。


演出家&俳優の家福(西島秀俊)と、その妻で脚本家の音(霧島れいか)。ヘンな名前~。こんなオシャレで文化的な夫婦いるかぁ?しかもなんでセックスの最中に物語を?などなど、ところどころ村上春樹さんの本を読んでるときのようなツッコミたくなるかゆみを覚えつつ、序盤で衝撃的現場を目撃してしまう家福。で、彼がどうしたかというと…見なかったことにするんですね。えー!!そのわだかまりは、妻が亡くなることで永遠に解きほぐされないまま。


二年後、演劇祭の仕事で瀬戸内の島?へ、レジデンスアーティストとして招かれる家福。事故があってはいけないので、愛車のターボを専属のドライバー(三浦透子)に運転させなければいけないことに。家福は激しく抵抗します。そういえば、緑内障の診断をされて、妻の音が車を運転することになったときも、激しく抵抗していた。で、この専属のドライバーが、「私が若い女だからですか?」というときに、ピリッと緊張感が走る。あ、そうなの?車って、そんなに男らしさの象徴なんだろうか。


多言語演劇の人たち、三浦透子のそっけなさ、岡田将生の薄っぺらい感じ、役者がみんな最高だった…。雪山のシーンもよかったし、演劇のラストの韓国手話二人羽織みたいなシーンは、あまりの迫力に泣いた。しゃべらない人がいちばん雄弁に語り、勇気づけるとは。なんか、頭が追いついてないけど涙を搾り取られたような鮮烈な体験だった。


最後もよかった。家福はあんなに所有・支配にこだわっていたものを手放し、ドライバーは自罰の意識から残しておいたものを手放す。赦しと解放までの長い苦しい時間が、光を当てられてきらきらと輝きだすような。奇跡を目撃させられてるのかと思った。濱口監督すごい。あと三浦透子さんに惚れた。


じつは同監督の『寝ても醒めても』のときに、演出なのか、独特の演技っぽい演技が苦手で早々に中断してしまったので、今回も身構えながら観たのでした。今回も演技っぽい演技ではあるんだけど、そもそも主人公の役柄が俳優・演出家だし、全編に劇中劇が入ってくるので気にならなかった。濱口映画への耐性ができたような気がするので、『寝ても醒めても』近々リベンジしなくては。あと原作も読み比べなくては。



 

 




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