やしまたろう・みつ 文・絵、マコ岩松 訳の絵本。


やしまさんが、小学生のころ、故郷の鹿児島で、学校~家までの帰り道にまいにち寄り道しまくった懐かしい思い出。やしまさんの観察による人間がとってもイキイキしているのです。


たとえば染め物屋さんが「紺さん」と呼ばれていたこと。なぜかといえば、染料のせいでいつも腕が紺色だったから。


畳屋さんの親方のひじがぶあつく、まるで足の裏のようだったこと。なぜかといえば、作業するときに、ひじでずーっと畳を押さえているから。この親方の絵の、ふくらはぎなんかパーンと張ってて、くるぶしなんかキュッとしてて、なんて肉感的なのでしょう。


その他にもいろんな人間を観察していく。村のはずれには、聾唖のおじさんが、下駄の修理をしていたり、片足をなくしたおじさんが、米をついていたり。みんなに仕事や居場所がある…。


人間だけではありません。鍛冶屋さんでは、馬の蹄鉄を作っていて、「蹄鉄をつけられたあと、どの馬も、歩きだすとみょうな顔をしていました」だって(笑)。カワイイ!


でも、ここに出てくる人たちはイキイキしながらも、顔や体に暗い影がさし、どこかぼんやりしている。


で、やしまさんのプロフィールを見たら、この人、戦前に反戦活動で弾圧され、アメリカに亡命してたんですね!ああ、帰れなかったのだな、と。この絵本に横溢する郷愁の正体を知ったような気がしたのでした。




 
●面白かった絵本(隠居の本棚より)
 
 
『ちいさなねこ』(石井桃子、横内じょう・著)
 
『Professor Crocodile』(Giovanna Zoboli・著, Mariachiara Di Giorgio・イラスト)
 
『ぶす』(内田麟太郎、長谷川義史・著)
 
『よあけまで』(曹 文軒・著, 和歌山 静子・イラスト)
 
『ちいさいおうち』(バージニア・リー・バートン・著)
 
 
『ぼくがラーメンたべてるとき』(長谷川義史・著)
 
 
『どこいったん』(ジョン・クラッセン・著、長谷川義史・訳)



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