永井みみさんの小説。第45回すばる文学賞受賞作。


主人公はカケイさんという、認知症が始まりかけのおばあちゃん。いちおう一人暮らしっぽいけど、ケアマネさんやデイサービスを利用しながらなんとか生きている。


カケイさんにとっては、ケアラーは全員、みっちゃん。制服の色や背格好が違うのはかろうじて認識してるけど、あのみっちゃん、このみっちゃんと呼び分けてるのがおかしい(笑)。


それでも、カケイさんとみっちゃんと、思いがけず意思が通じ合う瞬間がある。花も嵐も踏み越えてきた2人の女同士、愛と励ましが呼応する場面には圧倒されました。そしてみっちゃんの、本当の正体も。


やがて義理の姉や息子の嫁とのやりとりのなかで、カケイさんの人生が明らかになっていく。悔恨と喪失にまみれたように見えた人生が、いつも誰かの愛によって人知れず支えられていたことを知ったとき、訪れる許し合い。ものすごい迫力があった。


そしてカケイさんの最期もよかった。ひとりぼっちで、端から見たらかわいそうな人だったのかもしれないけど、他人にそんなのわかってたまるか、だってカケイさんは人生の最期に、あんなところで、あんな時を超えたお疲れ様みたいな瞬間を経験してたんですから!…ってほぼ何も言ってないけど(笑)、作者の永井みみさんの、カケイさんに対する真摯なやさしさに胸を打たれました。

 

 

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