『毒の恋 7500万円を奪われた「実録・国際ロマンス詐欺」』

レディコミの女王・井出智香恵さんによる、国際ロマンス詐欺の実録被害ルポ。

国際ロマンス詐欺は、報道などで見るたびに、「なんでそんなもんに引っかかるの！？」と、騙されるほうの心理がとても気になって、関連記事があると必ず読んでいました。そしたら被害体験を綴った本が出ているではないですか！買わいでか！！

きっかけは、フェイスブックに届いた、大好きなハリウッドスターからのメッセージ…からの、７５００万円という被害額の大きさが、距離がありすぎてぜんぜん想像できないんだが（笑）。

オンラインで二人きりの結婚式をあげるところなどは、中高生のときによく彼氏ができた女の子が周りとの付き合いを断絶して二人だけの世界に入っていくような軽めのイラつきを覚えつつも、まだかわいいものでした。

送金の申し込みがはじまったあたりから、だんだん笑えなくなってくる…のかと思ったらさにあらず。騙されてない冷静な傍観者の目で読んでると、詐欺師がでっちあげるストーリーのあまりのずさんさに爆笑の連続だった。いや本人からしたら笑い事じゃないんだけど。そんでまた、井出さんがいとも簡単に送金してしまうんですよ！いちど洗脳されれば、人はあんなハリボテみたいなストーリーでも信じてしまうのか…。

しかしなんというか…詐欺にひっかかるきっかけも、洗脳から目覚めるきっかけも、そこから得た教訓と読者へのメッセージも…被害額以外のすべてが、良くも悪くもすんごいフツーで、想像を超えてこないのに逆にびっくりした。で、同時に、これがこの詐欺事件の恐いところなのであるな、と思う。たまたま被害者が、被害をマンガに描ける才能の持ち主だったから特別なケースに見えるけど、ぜんぜん特別な誰かの話じゃないですよ。

なんとなれば、私のインナー中２の女子だって…と思う。しかしインナー中２女子には、インナー中２女子の戦い方があるだろう。私が考えたのは戦略的恋バナ。よく、結婚するまで誰にも言わない系女子がいますけど、あれはよくないですね。誰に恋してるのか、どんな小さなことでも常時ガールズトークで情報共有し、なんなら男から来たメッセージも逐一スクショしてグループＬＩＮＥに投下（笑）。そしてえげつなくも忌憚のない意見の千本ノックを、常時してもらうのです。このように、井出さんにも恋愛事情が筒抜けの友達がたくさんいたら、詐欺なんてすぐ発覚したのでは！？

しかしこの作戦の欠点は、それが国際ロマンス詐欺師ではなくただフツーに自分に好意を持ってくれていた相手だった場合、グループＬＩＮＥがバレた時点で彼の信頼を失うということである。永遠の夢見る中２にはロマンスの才能ないんだよ。

国際ロマンス詐欺にひっかからない最良の対策は、ふだんから現実世界できちんとロマンスをしておくことなのかもしれない。