若いころ、大人と話すのってなんて楽しいんだ!と思ってました。
 
知識と教養と感性と、その人が築いてきた世界観に圧倒される感じがして。この人たちの話についていけるようになりたい、世界はこんなにも私の知らないことだらけ、という憧れをいだかせてくれる、私にとって大人というのはそういう存在でした。
 
で、最近ユーミンの出したこの本を読んで、その感覚を久しぶりに味わえた。
歴史・アート・ファッション・文学・映画・人物など縦横無尽かつ膨大な情報量とともに語られる、ユーミンとフランスの関係。
 
たとえば、モネと日本画との関係では、「日本の絵の具は質感によって焦点深度が変わるのですが、それを油絵で試みている」なんじゃそりゃー、ぜんぜんわっかんねー。でも無知な私をつきはなすという感じでも、独りよがりに熱弁している感じでもなく、知りたいという好奇心を絶妙に刺激してくれる語り方。
 
こういう大人になるには、ただ年をとってるだけじゃダメで、自分がどいういうふうに生きていきたいかということに、再三向き合ってきた人でないとたどり着けない境地だと思う。久しぶりに大人にあこがれることができて、すごーくよかった。
 
そしてユーミンの本を読むときは、ファッションも楽しみのひとつ。
訪れる場所や、対談する人に合わせて千変万化するユーミン。ファッションが好きという人はたくさんいるけれど、「ファッションに好かれてない」人もたくさんいる。でもユーミンの場合は相思相愛、ファッションからの愛や信頼も厚い気がするんですよね。
だって私が服だったら、「きっとこの人は、袖をとおした瞬間に服がどうすればきれいに見えるのかを察知して表現できる人だ」と思うから、ユーミンに着られたい。ファッションだけじゃなくて、私が日本語だったらユーミンに語られたいし、私が音楽だったらユーミンに作られたい。
 
現代の日本にこういう人がいて、その人の表現するものに同時代に触れられるというありがたさ。これからも長ーく活躍し続けてほしい!ということを思った1冊でした。