アリ・アスター監督のホラー映画。これが長編デビュー作って奇才にもほどがある。この人は、何らかの怨念を持ってこの世に出てきたんじゃないかと思わざるを得ない。
祖母が亡くなってから、家の中で不可思議なことが起こり始める…という、ジャンルとしてはまあ使い古されたというか、珍しくもないやつなんだけど、不穏な音と不穏なカメラワークからのトラウマシーン、もう一度はじめから観たときにわかる、こんなに細かいところまで伏線が張られていたのかという驚き(たとえばこういうセリフ「避けられないなら絶望的な仕組みの中の駒でしかない」@高校の授業)、何これ救いがなさすぎる…。
この映画、もう二度と観たくないのになぜか繰り返し観てしまう。そして観るたびに具合が悪くなって、感想を書こうとするけど書けずに終わる。でも、その具合の悪さのなかに、不思議な懐かしさというか安心感というか、そういうものを感じてしまう自分がいる。何の因果か自分ではどうしようもない暴力のなかに置かれてしまい、この世を呪うしかなかった絶望というか。
でも、まだ解決していない、っていうかこの先もずっと解決しないトラウマを抱えていた場合に、救いのある結末を見せられてしまったら?「こういう結末になる人もいるのに自分はなぜ…」という、激しい置いていかれ感とともに絶望の二番底にたたき落とされてしまう可能性が…無理。だから何らかのトラウマを抱えた人にとっては、これが絶望のいちばんやさしいラッピングの形なのかもしれない。
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