佐藤多佳子さんの長編小説。山本周五郎賞受賞作。


「ラジオの話」とは聞いていたけれど、詳しくは知らないまま読み始めた。どうやら訳ありで、大学を休学し、実家から離れた街でコンビニバイト暮らしの富山。この富山が深夜ラジオのヘビーリスナーで、私の大好きなTBSラジオ「JUNK」の話が出てきてうおおおおっと興奮。したのだが、話のメインはだんだん、ニッポン放送の「アルコ&ピースのオールナイトニッポン」へ。


ああ~…。私が東京に住んでいた頃、アパートに入るAMラジオはTBSとNHKだけで、ニッポン放送は聴けなかったのだよ~。ラジオのいいところは共時性、ここに乗れるか乗れないかがついていけるかどうかを分けると思う。よってオールナイトニッポンを聴けなかった私は、ちょっと疎外感。これがもし、実在しない架空のラジオだったらもっと入り込めたのかな~と思う。


しかし!小説というのは人間関係を描くもの、だとしたら、「ラジオリスナー」という人間関係ってそうそう、こうだよな~という感じはよく出ていた。友達っていうほど濃くない、他人っていうほど薄くもない、お互い、遠慮がちに絶妙な距離感を保ちつつ、大切なものを共有しているような。深夜ラジオを、何かの祈りのように切実に聴く夜があるってことを、知ってる人たちのやさしさっていうか。ラジオがなかったら、存在しなかった感情と、人間関係のお話。よき。



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