直木賞作家・今村翔吾さんの時代小説。


「火喰鳥」と呼ばれた伝説の江戸火消・松永源吾は、火事とケガが原因で、5年前に引退。そこへ出羽新庄藩から、壊滅した火消しの再建を求められる。


っちゅう話なんですけどね、まずはじめの登場シーンからして超絶かっこよくてワクワクする。登場人物も個性豊かで、まず再建のためにメンバーを集めなくちゃならんということで、殉死した火消しの倅・新之助とともに、相撲取りの寅次郎を壊し手に、軽業師の彦弥を纏持ちに、天文学者の星十郎を風読みに、一人ずつスカウトしていく。勘定に強い妻の深雪は、さしずめ財政係ですかね~。訳ありの火消し藩には、こういう訳ありの面々が一人ずつ、でもそれぞれの魅力を爆発させながら登場するんです。で、同時進行で不穏な狐火(放火)事件が発生しはじめる、と。


火消しのことを何も知らない新之助に説明する、というていで、江戸時代の火消しの基本情報がさらさらっと盛り込まれ、私のような時代小説に馴染みがない読者も置き去りにしない。


しかも、これは火消しという存在のパラドックスとの戦いでもあって、火事なんてないほうがいいに決まってんのに、火消しがいるということは火事がたくさんあるからで、でも火事がなくなったら、自分が誇りを持っているこの仕事もなくなるわけで…。しかも消して当たり前、消さなかったらボロクソに言われるんですよ。


ふだん時代小説を読まない私は、この作品を人にすすめてもらって手に取ったんだけど、まさか時代小説で感動して泣くとは思わなかったのでびっくりした。しかも3回は泣いた…。これが手練れのベテランじゃなくて、新人のデビュー作だっていうので二度びっくり。『羽州ぼろ鳶組』はシリーズなので、追いかけて読もうと思う。今村翔吾先生はいまのところ、私が唯一読む時代小説作家です。

 

 




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