たらちねジョン先生のマンガ。

主人公は65歳のうみ子。夫と死別し、久しぶりに映画館に行く。そこでうみ子は美大生の海くんと出会い、だんだん気づいていくんです、自分が本当は「映画が撮りたい側」の人間だったんだ、と。

その、うみ子が「気づく」ときの、波の表現がすんばらしい。ゾクゾクする。心に寄せ来る波を、うみ子はきっと、「もう歳だから」とかいう理由で、何度も押し返してきたんでしょう。でも、こんなつまんない理由で、心に湧き立つ波を押し返してしまうこと、べつに65歳じゃなくてもありますよね。トラップはたくさんある、一人で映画なんて、「チケットは自動発券機だし」「トイレが心配だし」「不整脈になったら怖いし」「若い子ばかりだし」でもえいやっと飛び込むうみ子さん。

それからのうみ子さんの行動力がすごい。海が忘れていった筆箱を届けに大学を訪れ、ついでにオープンキャンパスも見学し、さらには入学届を…。おばさんの押しの強さを発揮するところと、押しつけがましくならないように自分にブレーキをかけるところをちゃんと使い分けるうみ子さん。やる気のなさそうな学生にモヤモヤするうみ子さん。それなのに自分が映画を撮りたいことは「趣味だから」と遠慮してしまい、それが本気でやってる誰かを傷つけることに気づいて自分をアップデートしていくうみ子さん。

この、一見よくわかんないタイトルが、1巻の最後のページを読んだときに「ああ、そういうことか!」となる。うみ子さん、きっとこの人の心に湧き起こる波は周りに波及していくだろうし、周りはそれを待っているだろうし、ていうか何より読者(私)がそれを待っている、誰かの何かを作りたいという心の波にさらわれることを。

めっちゃ応援したくなる。行け行けうみ子さん!

 

 



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