スパイク・リー監督のアメリカ映画。

舞台はNY・ブルックリンの黒人コミュニティ。レンガ色のアパートの前の階段にすわってたむろしているブラザー&シスター(←いつ働いてんの?)が、道行く知り合いに向かって「Yo, Man!」とか声かけて、指をピロピロ~っとする独特のかわいいあいさつをして、そんな風景が毎日繰り広げられている。おもしろいんだよ~、こいつらのやりとりが!

でもなんか、「Yo, 何で白人とつるんでんだ?」とか、「Stay Black!」とか、主語がいちいちでかい(笑)。ブラザー&シスターだけじゃなくて、イタリア系、ヒスパニック系、アジア系、いろんな人が住んでるこのエリア。たとえばリトルイタリーのピザ激戦区を避けて、黒人コミュニティにピザ店を出して25年、地元にも愛されているイタリア系移民のサル(白人)。このサルのピザ屋で、主人公のムーキー(黒人)は配達の仕事をしている。黒人コミュニティなもんだから、とうぜん客は黒人。するとその客の1人が、サルにいちゃもんつけるんです。「Yo, この店にはイタリア系アメリカ人(←白人)の写真しか飾らねーのか!黒人の写真を飾らないなら、このピザ店をボイコットしてやる!」と。相変わらず主語がでけー…。でも客のシスターがこう言うんです。「あんた何言ってんの?アタシたちは、サルのピザを食べて育ったんだよ!」おお、個人的な体験が、でかい主語に勝った瞬間!

でも、そんな「アタシ」や「俺」も、簡単に主語のでかい話に飲み込まれていってしまう。途中までは笑って観てたのに、最後のほうはぜんぜん笑えない。最近あった人種差別反対デモを思い出すような事件が…。オイオイ、ちょっと待ってくれよブラザーたち、みんなあの店が好きだったじゃないか!!

タイトル『Do The Right Thing』というのは、この黒人コミュニティの主のようなおじいちゃんが、主人公に向かって言うセリフ。「正しいことをしろ」。結局、あの場面で正しいことをしてたのはおじいちゃんだけ、のように見える。あんなにたくさん人がいて、おじいちゃん1人だけ…。

私がNYで働いていた時、そこには色んな事情のある色んな人たちがいて、でも何があっても底抜けの明るさですべてを楽しみ倒すその姿が、私を確実に支えていたことを思い出す。ほんとはできるやん、と私は思っている。

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