1984年のイギリス映画。

いわゆる耽美映画というやつで、1930年代のイギリスの名門男子校での同性愛が主題になっている。これ、20歳くらいのときに一回みて、主役のルパート・エヴァレットより、親友役のコリン・ファースの美しさに圧倒された思い出が。その頃、すでに『ブリジット・ジョーンズの日記』のマーク・ダーシー役の、中年のおっさん姿で覚えていたので、若き日のコリン・ファースには目を奪われたものでした。

で、20歳のころはキレイな男たちがイチャコラしてハァ耽美耽美~で終わってたんだけど、今になって調べたら、このルパート演じるガイ、ケンブリッジ卒のエリートイギリス人でありながらソ連のスパイとして暗躍した「ケンブリッジ・ファイブ」の一員(実在)をモデルにしてるそうで。それつながりでドキュメンタリーなども観たりしておもしろかった。

1930年代のイギリスはものすごい不景気で、人々は貧困と失業に苦しんでいた。ところが同時に厳しい格差社会でもあり、家柄も経済状況も恵まれたエリートは何の問題もなくいい学校に通えて楽しい学生生活。この階級主義に疑問を持った一部の生徒が共産主義に傾倒していき、ちょうど外国人スパイを探していたソ連のスターリンにスカウトされ…という背景があったらしい。コリン・ファース演じる親友役のトミーが、辛辣な皮肉家で共産主義の思想に染まっているのはそういうことだったのか。

だけどこのケンブリッジファイブのスパイたち、エリートたちだけでよろしくやって、貧困なんて視界に入ってこないものはないのと同じ、自分たちだけ良ければいいんだぜ、という生き方もできたはずなのに、社会の不平等に疑問を持ち、貧困層の人々に共感するだけの人間性があったからこそ共産主義に傾いてスパイになった…というわけでもないのが一筋縄ではいかないところ。

ガイなんてむしろ真逆で、もともとは誰よりも階級主義者だった、革新派というより保守派の人物。だけど同性愛が違法であった昔のイギリスで同性愛者だったのがバレたことから、やけっぱちのようにソ連のスパイに加入(他のメンバーは知らんけど、2人はゲイ、1人はバイだったらしいので似たような理由なのかも)。

人がスパイになる理由っていろいろだと思うけど、でももしですよ、はじめから「違う」人を排除しない、多様性のある社会だったなら、ガイたちがみすみす祖国を捨てるようなことをしなくて済んだのかもしれないと思うと…。なんかいろいろ考えてしまった。

 

 




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