少女小説家として名高い、故・氷室冴子さんが30年前に書いたエッセイ。今また話題になっているということで読んでみたら、もんのすごい面白かった。


1992年発行、ということは男女雇用機会均等法から7年。とはいえ男女差別は現代とは比べものにならない時代だったろうに、一読して風穴を開けるようなこの爽やかさはいったい何だろう。いや、冒頭からして、ゲッ…てなるんですよ。男性のインタビュアーに言われた忘れられない一言。「やっぱり、ああいう小説は処女でなきゃ書けないんでしょ」気持ち悪!


なのになのに、なんというか、この氷室さんが徹底的に個人として、男女とか、女でも未婚・既婚とかで分けずにはじめからこだわりなく均等に見ている視点がすっきりしていてたいへん好感。それは氷室さんが会社員ではなく小説家という一国一城の主としてやってきたから、というのもあるかもしれないが、そんな氷室さんでも、「女だから」という社会からのラベル貼りから逃れられないときがある。


「それは決して『ミザリー』ではない」というエッセイ。ある男性から送りつけられた一通の手紙の話で、そのえげつない内容は本を読んでほしいんですけど、「私が私であるために受ける不利益は甘受できる。けれど、宿命的に与えられた性に限定して向けられる無記名の悪意は、その無記名性ゆえに、私を激しく傷つける。恐怖におとしいれる。もし、私が男性作家であったら、これが送られてくるだろうかという怒りが、恐怖と苛立ちの底で、静かにめざめてゆく。」


女性が女性であるだけで立ち向かわなければならない敵意や悪意が存在するってことを、こんなにわかりやすく、しかも30年前から書いていた氷室さん。どんな方なのかがぜん興味が出てきたので、小説も読んでみよう。ジブリで映画化された『海がきこえる』と、『なんて素敵にジャパネスク』シリーズが代表作。メモ。

 

 


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