私がたぶんアメリカ文学でいちばん好きちゃうかという名作『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の作者・サリンジャーの、もう一つの代表作ってことで楽しみに読んだら、めっちゃムカついた(笑)。


時代は1955年。グラスさんちのフラニーとズーイっていう、7人兄弟のいちばん下の2人の話なんですけどね。前半は末っ子で大学生のフラニーが、まあなんというか聡明な女の子でして、世界のいろんなおかしいことに気づいてしまうんですよね。男が男らしさを果たさなければいけないときに女に向けられる敵意とか、女が女らしさを果たさなければいけないときの嘘くささとか。それを「そういうもんだ」で済ますことができなくて、いろんなことがわかんなくなっちゃうんですよ。で、ニューヨークの実家に帰って引きこもりになってしまいます。ああ、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』のホールデンを思い出す、この愛すべき生真面目な不器用さ。


しかし、そこへ後半、フラニーの兄・ズーイがご高説をぶつわけなんですが、それが「うっさいんじゃボケ」と言いたくなるような、私の嫌いなアメリカのインテリの、何が言いたいのかよくわからん長くてまわりくどい方法で、もう読んでてイライラしかしない。ちゃうちゃう、フラニーは全部わかってんの、そんなこと!で、そんなうさんくさい世界を諦めずに歩いていく方法を、いま必死で、自分の力で見つけようとしてんの!!と、私は完全にフラニーの肩を持っていた。


そしたら最後、ズーイの「キリストは太ったおばさんである」説(詳しくは本を読んでね!)によって、フラニーの憑きものが落ちたようになるんだけど…。え~、そこで!?そんなんでいいの!?いやあれはたしかに名言だと思うけど、フラニー、あなたはああいう、シンプルな本当のことを、エゴとかいろんなものでくるまなきゃいけないアホみたいな何かを憎んでたんじゃないの。うーん、私はまだそこまで大人の対応できない。自分のクソガキ度を判定するリトマス試験紙のような小説なので、10年ごとぐらいに読み返したい。あ、だから名作なのか。

 

 

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