松田青子さんの初小説集。


前から気になってた松田さん、やっと読みました。そしたらすごかったんですよこれが。何がすごいっていうのがちょっと説明しづらいんだけど、まずは内容の紹介をば。


まず各段落のはじめにエレベーターのボタンのようなものが出てくる。これが5階だったり11階だったりするわけだけど、どうやらとある会社内、交わされる会話や業務が延々続き、登場人物がA田とかC山とか、特定の名前を奪われている。誰が誰だかわからない、つまり『わたし』がない人たち。『わたし』がない場合、誰がしゃべるのかというと、それはその社会で優勢な規範、たとえば「男社会」。誰もが規範に正しく則った、お仕着せのセリフみたいのしか話さない、つまり誰が誰でも代替可能なわたしたち。かと思ったら、個人の回想や、心理描写になるとちゃんと「わたし」になってて、ホッとする…。かと思えば、急にシャーロックホームズみたいなミステリ調になったり、何これ? って思いながらも読み進めていくと、ついについに、裏も表も『わたし』なる人が華麗に登場するのです!! 他人や社会がわたしをスタッキングすることは許さない、わたしがわたしをスタッキングするのだ、と。


いや実験的すぎて意味はわかんないんだけど(笑)、この人の目に映る世界をもっと見たい、と思わせる作家さんに出会えてうれしい。


 

 




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